好きなところ
タイトル未定、本編構成が作者の頭に存在しているだけの作品のSS。
主人公→アーニャ(本名テムアメデ)ちゃん
年上彼氏→ルゥオくん
「アーニャの髪ってふわふわだよね」
部屋で並んでソファに座っていたら、ルゥオが突然私の髪に触れた。
「そう?」
「そうだよ。ねこっ毛というわけではないけど、触り心地が柔らかくて好き」
語りながら私の髪を弄ぶ。声のトーンも髪を見つめる目も、感情があまり乗っていない。でも、ルゥオが放つ雰囲気は温かくて隙だらけ。おそらく"素の表情"なのだと思う。"素の表情"で漏れた言葉は飾らない本心、と都合よく捉えて、お返しに本心を伝えることを決めた。
「ありがとう。私もルゥオの髪好きよ。黒くてツヤツヤで、黒曜石みたい」
ルゥオの髪に触れて、指でさらりと梳いて、同じようにしばらく弄ぶ。触れていると、愛しい人の愛しい一部ということが後押しして、想いが溢れて止まらなくなった。ルゥオもこんな気持ちで触れてくれているのかもしれない。
しばらく無言だったルゥオが動く気配がした。手を止めて顔を向けると、すぐ顔が近づいてきて唇が触れ合う。
時間を止めたかのような、静かで少し長い、とっても優しいキス。最初と同じようにふわりとルゥオは離れたが、私の時間はまだ止まったままのような気がする。
そんな私の前で、今度は毛先に口付けが落ちた。ルゥオの表情は先程とは違って愛おしさが前面に出ているように見え、途端に私の時が再始動する。胸がざわざわして落ち着かない。
「お互い、相手の同じパーツが好きって、なんかイイね」
私の髪に唇が触れたままで、わずかに首を傾げて、とろけるような微笑みで見つめられて。胸のざわめきがギュンと高まった。
「そうね」
答えるのが先か、身を乗り出したのが先か。私はルゥオの毛先に手を伸ばし、顔を近づけた。