とある女神の憂鬱
主人公がまだ死ぬ前の神々の世界での出来事です
どう言った経緯であの能力が書かれたのかと言う部分です
「はぁ…」
と1人の女神はため息をついた
また異世界へ送った者が死んでしまったのだ…
もう何度目になるか…死んでしまった理由なんて簡単だ
亡くなった者はこれから行く世界についてなんの情報も無く送られているのだ…
長くいた者でも3ヶ月程度で無理をしたりして死んでいる
またこの事を上司となる女神に報告しなければならない
「フィルミヤ様…また転移者の方が亡くなられました」
と簡潔に報告した
それを聞いた上司の女神は
「ほんと使えないわね…強い力を与えてもなんで死んでしまうのかしら」とまったくと言っていいほど興味がなさそうだ
「では失礼します…」
(なにも教えずに能力だけ与えて送ってたらそりゃすぐに死んでしまいますよ…)
と内心思う…しかしこの上司はすぐにヒステリックを起こすから最低限のやり取りで終わらせて帰ろうと入ってきた扉へ引き返そうとするが…
「あぁ…そういえば与える能力が書いてある本が破けて読めなくなったからあんたすぐ直しておきなさい」
と明らかに神為的に破られた本を投げつけられる
「出来たらちゃんと上に見せてから私のとこに持ってきなさい」
こういった物はミスがあったらいけないから必ず新しく発行した物や直した物は、それを確認する神に見せなければならない為とても面倒臭いのだ…
「はい…急がせてもらいます…」
いくらこれが明らかな嫌がらせでも上司からの命令なのでやらなければならないのだ…と部屋から出て自分の私室へと向かった
「ここしばらく休めてないなぁ…」
そう呟きながら、本の修正をしていく…
もうこれで何冊目だ?転移者が亡くなるたびにやらされてる気がする…睡眠時間も削られて正直もう嫌になってきている
「転移者がどんな状況でも大丈夫な能力とか無いかなぁ…そうすれば何にも情報がなくても頑張ってくれると……思うんだ…けど…………なぁ……」
「ここにある能力……とか…ぜん…ぶ………あげられれば……なぁ…………」
と彼女は意識を手放した
そのページにはわかりづらい場所に無意識に書いたのか…
『全部』
と書かれていた
はっ…と少しの間意識を飛ばしていた彼女は、自分が急いで本の修正をしていたことを思い出し、無意識のうちに書いたことを気づかず完成した本を確認する部署に持っていくのであった。
「悪いね〜今結構タスク重なっちゃってるんだよね〜」
とその部署の神に確認を申請したが返ってきた言葉はしばらく処理出来ないということだった…
「何回も来てる君が修正したなら大丈夫だとは思うから素通りで良いと思うんだけど仕事だからね〜」
そう言いながら彼はゆっくりと仕事をしていた
(何がタスク重なっちゃてるよ…何回も持ってきてるから嫌がらせでしょ…)
「はぁわかりました…出来る限りはや…く…」
と催促をしようとしたら、持っていた本を誰かに取られた
「ク…クロノスさま‼︎」
と対応していた彼が慌てて言った
クロノス様…私達神々の中で創造神たる頂点なぜそんな方がこんなところに…と考えていたら、クロノス様は私が持っていた本をパラパラと確認し、とあるページで手が止まり私の顔を見て
「問題無し」
と一言告げて、私に本を返してきた
そして去り際に耳元で
「君に良き出会いあれ」
と小声でおっしゃってきた
私には何がなんだか分からなかったが、かの神は様々な未来を見通しているらしく…たまによく分からない事を言う時があるらしい
「あの…これ…」
と受付にいた彼に聞いたら
「クロノス様が問題無しと言ったんだ、とっとと持ってけ」
と無愛想に言った
そうして私はこの修正された本を持ち次の転移者候補を待つために上司の所へ戻ったのだった。
とある神
それは気まぐれだった
何度も能力選択の書を直している事は知っていた
その理由も…
そして今回はミスがあった事も
そして彼女がこれからとある転移者に出会うことも
それを知ってなお何故あんな事をしたのか
「これは楽しい事になりそうだねぇ」
と頂点たる神は微笑んだ