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第二十三話:襲撃(前編)

 パーティ会場を抜け出してネコ先生の元へ向かった。


「こんなところで何をしてるんですか!?」


「いや〜すまんのう。こいつらがリンに会いたがってのう」


「ガゥ!」


「ピィ!」


「キィ!」


「ニャ!」


 それぞれが私にアピールをしてきた。

 私は順番に彼らを撫でてあげる。


「……もう、みんな寂しがり屋ね!」


 ネコ先生の家を出て三日と経っていないのだけれど、ケモノの感覚ではかなり長い時間なのだと思う。

 庭に腰掛けて、少しゆっくりとする。


「バッグも持ってきたんですか」


 ハヤテが私がいつも使っていたバックパックを担いで持ってきていた。


「うむ、食べ物も入れてきた」


「へぇ〜」


 言いながら、中に入っていた燻製肉を取り出して、皆にあげる。

 皆思い思いに喜びの声を出しながら、美味しそうに食べてくれて、ほっこりとする。


「……」


 少し落ち着くと、先ほどのレナードからの話を思い出した。

 一つ目の話も、二つ目の話も、私たちの生活に関わってくることだ。


「……ネコ先生、この国がケモノについての研究機関を設立しようとしている、と言ったらどう思いますか?」


「……ほぉ、そんな話があるのか…うむ、まぁ悪くはないと思うぞ」


 ネコ先生は、目を見開いて意外だという顔をした後に、頷きながらそう言った。


「私も関係するかも知れなくて……」


 これについては、実際どういう形になるのかは分からない。

 あの家を出なければならないのか、留まれるのか。

 いずれにしろ、今まで通りの生活ということは無いだろう。


「うむ……。吾輩から言えることは、それがケモノ達に貢献することなのであれば、お主にとってやる価値はあるのではないか、ということだけじゃな」


「というと?」


「ケモノへの理解が進めば、人間の社会におけるケモノの地位も高くなるということじゃ」


「はい。なんとなくは理解しています」


「……例えばだが、ケモノを使役する事で人間の役に立つと広く知られれば、当然、ケモノが人間からも認められるようになる。これは使役に限らず、理解が進むということは立場が認知されるということなのじゃよ」


「……なるほど……極端な話、可愛いってことが理解されるだけでも地位が高くなると……」


「ま、まぁ、そうだな。吾輩の故郷にはそういったケモノの理解を深めるために一般に公開されている施設もあったぞ」


「前に聞いた、動物園って奴ですか?」


「うむ」


 以前に聞いたときは意義が良く分からなかったが、今ならわかる気がする。

 いきなりは難しいだろうが、いずれはそういった事も視野に入るのかも知れない。


「う〜ん、なるほど……」


 人間のためだけじゃなくてケモノのためにもなると考えれば、前向きに考えたいと思った。

 そうして庭で少しゆっくりとした時間を過ごしていた所、周囲に爆音が響いた。



 ◇ ◆ ◇



 ドガァン! と、花火のものとは比較にならないほど大きな音。

 それに合わせて、地面が大きく揺れた。

 ケモノの仲間たちは一斉に茂みの中に隠れた。


「! いったい!?」


 見ると、王宮の一部――パーティ会場になっていた場所の一角が崩れ落ちている。


「……誰かが、爆発させた?」


 明らかに人為的な攻撃だ……とすればターゲットはレナードの可能性が高い。


「弓を!」


 私はハヤテが持ってきたバッグパックについている弓と矢を手にする。


「ハヤテ! ホーク!」


「ガゥ!」


「ピィ!」


 二匹が茂みから出て、私の足元と背中の定位置で準備した。


「リン!」


「ネコ先生はコネコちゃんとレッサちゃんを頼みます!」


 二人の事を先生に任せ、私は崩れかかっているパーティ会場に向けて駆け出した。

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