第二十一話:パーティ(前編)
短めです。
結局、実家では父と母と微妙な距離感を保ちつつ、一日を過ごした。
以前のように厳しいことは言われないのだが、妙に気を使われている感じがして、なんだか居心地が悪かった。
我ながら、親と子というものは不思議だ……。
そんな訳でパーティの日、私は王宮内の広々としたパーティ会場に来ていた。
それでも、かなりの人が呼ばれているので会場はごった返している。
一応、父と母も一緒に来ているが、やはり微妙な距離感がある。
なんとなく手持ち無沙汰でもあるし、普段食べないようなご馳走を一人で味わうなど、両親から離れて食欲優先で過ごしていた所、
「あら、こんな所で何をしているんですの?」
出た。
「……久しぶりね。アリス」
懐かしい顔だ。そしてこれまた懐かしい不遜な態度。
アリスは侯爵家の娘、呼ばれていても不思議ではないと思っていたが、
実際に会うとなるとやはり気持ちが落ち着かない。
「家を出て学院もやめたと伺っていましたが」
「……そうね。まぁ色々あってね……」
「そんな方がここに来るとはねぇ……」
「どうしたんだい? アリス」
と、そこにこれまた懐かしい顔だ。
「……アル……久しぶりね」
「……リン……」
元婚約者のアルフレド。
アリスの連れとして来ていたようだ。
アリスはアルに腕を絡ませて――
「婚約破棄までしたのに、のこのこと戻って来るなんて、みっともないですわねぇ……」
厭味ったらしく喋る。
「――! そんなんじゃない!」
平静を保つように心がけていたが、少し声を荒らげてしまった。
周りからの視線が少し痛い。
「相変わらず粗野ですこと。令嬢なのに癒やしの魔術も使えないリン様らしいですわ。ねぇ、アルフレド様?」
「……あ、あぁ……女であれば回復魔術、男であれば攻撃魔術……。それが常識だものな……。すまないな、リン……」
アルは魔術の素養を言い訳にしながらアリスに同意した。
私には自分の後ろめたさを隠しているようにしか見えなかった。
「……そうね」
別に彼に今更こだわりがあるわけじゃない、適当に返事をしてこの場を去ろう。
と――
「いやいや、私も攻撃魔術は使えんのでな。なかなか心苦しいな」
パーティの主役であるレナード第三王子が私の後ろから現れた。
「レナード様!」
「い、いえ、そんなつもりは――」
アリスとアルは動揺して声を上げた。
「久しいな、リン……」
「……はい。お久しぶりです、レナード様」
私を見つめる彼に対して、軽く微笑み返す。
「このリンは私が直接招待したものだ。そなた達、彼女の古い知り合いなのかもしれんが、彼女に不快な思いをさせるのであれば、出ていってもらおう」
レナードは私と彼らの間に立ちふさがった。
「そ、そんな事は……」
「……失礼しました……アルフレド様、行きましょう」
アリスがアルを引っ張って下がっていく。
最後に小さく、
「……何で!?」
疑問と、そして不満に思う気持ちのこもった呟きが聞こえた。
アリスが去ると、私は彼に頭を下げた。
「申し訳ありません……ありがとうございます」
「いや、当然の事をしたまでだ。本来であればそなたが今回の主役であってもおかしくないのだからな」
「……そんな恐れ多いです」
実際、私は森で護衛しただけなのだ。
彼の評価は、多分にお世辞が入っていると思う。
「……少し外に出て話そうか。ここは騒がしいからな」
「……はい……」
私たちは王族関係者以外立ち入り禁止となっているテラスに移動した。