第二章 14 無理難題
夕方、そろそろ城に戻ろうかと思っていると、中央広場の噴水の所に何やら人だかりが出来ているのに気が付いた。
なんだ?喧嘩…って感じでもないけど、何かあるのか?
俺は狐面にそっと触れて着けていることを確認すると、その人だかりに近づいていった。
「何かあったんですか?」
「ん?あぁ。なんでも3日後にお城でパーティーがあるんだってさ。三国だけでなく、エルフや獣人族の国からもお客が来るみたいだから、これは賑やかになるぞー。そんで、その催しの一環として勝ち抜き方式の模擬選をやるんだってさ。これに優勝したら騎士団に入る権利が与えられるみたいだから、兄ちゃんも出てみたらどうだい?がっはっはっは!」
「おー、それは楽しそうですね。」
模擬戦かぁ…
うーん、ノエルも出るなんて言い出さないだろうな?
こういうの小さい頃から好きだったみたいだし、戦闘狂とまではいかないにしても戦うの好きっぽいしなぁ…。
さすがに無いとは思うけど、一応帰ったらノエルに釘を刺しておこう…。
んー、でも優勝者は騎士団に入れるのか。
それはちょっとおいしいよな。騎士団に入っちゃえばニート脱出できるし国立だから給料も安定してそうだし。
そしてなにより団長があのジークだっていうのがポイントだよな。
知ってる奴が職場に居るのは気持ち的にも楽なんだよなぁ、ほら、俺って人見知りするからさ?
「ま、俺みたいなのが勝ち抜けるわけないから、関係ない話なんだけどね。」
身体強化だけで勝ち抜けるほど甘かったら、今頃騎士団は壊滅してるってね。
きっと剣や弓はもちろん、魔法もある程度は使えないとやっていけないだろう。
そうなってくると俺はもう絶望的だ。剣や弓ならまだしも、魔法のばかりは才能だからなぁ。
「はぁ、自分で言うと虚しくなるな…。」
「圧政者め…」
「ん?」
後ろに居た男が俺の呟き並みに小さな声で何かを言った気がしたんだけど…。
確か、”圧政者”っていってたか?王様に何か不満を持ってる人だったのかな?
一応振り向いて確認してみたけど、残念ながら誰が言ったのかは特定することはできなかった。
んー、まぁいろんな考えの人は居るよね。文句の一つも言われない王様なんて、気味が悪くて逆に嫌だしな。
さて、今日の所はここらで帰るとしますかね。
俺はすっかり傾いてきた日を眺めながら城への坂道を登って行った。
やっぱきっつー…
部屋に着いてシャワーを浴びてから何故か備え付けられていた聖書のようなものを読んでいると、不意にドアをノックする音が響いた。
んん、ノエルかな?夜に来るって言ってたけど、思っていたよりも早かったみたいだな。
結構早めに王様から解放されたのか、精神疲労を回復する手段があったのか…なんにしても元気になったのなら何よりだぜ。
俺は短く返事をしてドアを開けたのだが、何故かそこには誰も居なかった。
あれ、聞き間違いだったのかな?いやでも、確実に俺の部屋のドアをたたく音だったよな?
そう思いつつなんとなく視線を下に落とすと、そこには不機嫌そうに顔をしかめた訪問者が立っていた。
「…不愉快なのです。」
「悪い悪い。てっきりノエルが来たのかと思ってさ、目線の先に誰も居ないんでちょっと焦ったぜ。まさに”下からくるぞ、気をつけろ!”って感じだったな。」
「相も変わらず意味不明なのですが、リアをバカにしているのはわかりましたのです!まったく腹立たしい男なのですよ、あなたは。」
「まぁ、そう怒るなって。こう見えてもリアが部屋を訪れてくれたのには喜んでるんだぜ?部屋に幼女が訪ねてくるなんてなかなか経験できないシチュエーションだからな。」
「どこまでも果てしなく意味不明なのです。とりあえずムカつくので殴るです、えい。」
「ぐふっ!お、おま、今の一発そんな可愛い掛け声で済ませられるもんじゃなかったからね!?結構いい右ストレートが俺の鳩尾にクリーンヒットしたよ!?これ俺じゃなかったら気絶しててもおかしくなかったからね!?」
「ふーん!リアには何を言っているのかさーっぱりなのでーす。それにこんな失礼な事、他の人にするわけないので心配無用なのですよー。」
こ、このロリっ子め。
人を選んでこんなことしてるなんてますます質が悪いじゃねーか。
てか何なの?わざわざ俺を殴るために訪問して下さったの?暇なの?アホなの?
てか、結局ノエルはどうしたんだよ。ノエルの腰巾着がノエルから離れちゃったらそれってもうただの巾着だよ。何でも入れられる便利な袋でしかないよ?
「また何か失礼な事を考えていますですね?はぁ、本当に…なぜ姫様はこんな人を助けに呼んだのでしょう。」
「え…ちょっと待て。ノエルが、助けを!?おいおいおい!なんだよどうしたんだよ!ノエルがお前を寄越すほど危機的状況ってどんなだよ!おいリア、呆けてないでさっさと行くぞ。ノエルはどこだ!?」
「その前にこれに着替えるのですよ、せっかちさん。話はそれからなのです。」
「はぁ!?」
ノエルがピンチだっていうのに何を悠長に構えてるんだこの幼女は!
着替える?馬鹿野郎、そんな暇があったら一秒でも早くノエルの元へ駆けつけるべきだろうがっ!ノエルの腰巾着の癖に、なにをらしくない事言ってんだ。
そう言って暴れる俺を物理的に黙らせたリアは、問答無用で俺の服をひっぺ返し持って来た服に着替えさせた。
きゃー、乱暴しないでぇ!
…殴られた。
「まっっっったく気持ち悪いのです!なんなのですか、きゃーって。そんな事を言うのは女性だけで良いのですよ!例え男性で言っている人が居たとしても、少なくともあなたは言わないでください。周りの人が気分を害しますので。」
「辛辣にも程があるだろ…。だいたい、いきなり服を脱がされたら誰だってびっくりするって。…で?何なんだ、この服。ずいぶんと高級そうな仕立てに見えますけども。」
「ふん、あなたはこれから陛下とお食事なのです。ですのであの庶民的な服を脱いで、このあなたに不相応なお高い服を着てもらったのです。さすがにあのまま陛下と食事をするのは、不敬に不敬を重ねた不敬の塔になりかねないので。」
何だその塔は。積み上がる前に全力で止めろや。
だいたい上手い事言ったつもりか知らんが、そのドヤ顔やめろ。叩きたくなるから。
で?着替えて陛下とお食事する事がノエルの助けになるっていうのはつまりどういう事なのよ?
正直な話、あの王様と楽しくトーク出来る自信はこれっぽっちも無いからそれを期待されると辛いんだけど。
くっ、このままではノエルを助けられないのか!?俺が陽キャだったらこんな事にはならなかったのに…!!
「勘違いされても困りますので、先に言っておくのですが。期待されてると期待しないでくださいなのです。姫様はあなたに何も期待してません、あなたはただその場に居るだけでいいのです。ただその場で空気も読まず黙々と食事をしていれば良いのです。」
「え、なにそれ。それって何の意味があるの?」
「いいから言われた通りにするのです。くれぐれも、粗相のないようにするのですよ?あなたが何かしたら、それは姫様の責任になってしまうのですからね?」
「なんだよ…よく分かんないなぁ。つーか、そんなに言うならリアが俺の事見張ってればいいだろ?俺が変な事したり言ったりしないように、側で見てればいいじゃんか。」
「…リアは、陛下のお食事に同席できるような身分ではないのです。本来なら、姫様と一緒であっても陛下の御前に出ることは許されない…そういうものなのです。だからリアは、どうしても姫様を助けてあげる事ができないのです。」
リアはそう言うと口をつぐみ何も言わなくなる。
身分…か。
確かにこの世界には明確な格差があって、それがあることによって平和が保たれているような所もあるんだろうけど…。
その身分のせいでリアはこんなにもノエルの事大切に思ってるのに、助けてあげられない時があるんだ。
側に居たいだけなのに、それすらままならない事もある。
こんな小さな子供にすら、それは容赦なく壁を作る。
この世界ではそれが当たり前なんだろうけど、俺からしたらただの理不尽なエゴにしか思えないんだよなぁ。
「リア…」
「…ま、リアはリアが出来ることで姫様を助けるだけなので別に気にしてないのですけど。」
「は?」
「なんなのです、その反応は?適材適所という言葉を知らないのですか?確かにリアは大抵の事はこなせる優秀な姫様の側近ですけれど、それでも全知全能というわけではないのです。今回はたまたまリアのできない事で、そして本当にたまたま偶然奇跡的にあなたが役に立てることだっただけなのです。だからせいぜいしっかりやれなのですよ。」
唖然とした。
こいつ、全然落ち込んでいない!?
むしろなんだこの「普段役に立たない人でも、たまには日の目を見るようなことがないと可哀想よね?」みたいな流れはっ!
おっかしいなぁ!ここは俺がリアを慰める場面だとおもったんですけどねぇ!?
「…っとに、逞しくていらっしゃる。」
「ふふん、なのです!姫様のお側に居る為には強くあるべし!なのですよ!」
「はは、確かにそうだな。勉強になります、リア先生。」
「ふふふふん、なのです!!」
腰に手を当てて威張るように胸を張ったリアは得意げに鼻を鳴らす。
ノエルの側に居る為には強くあるべし…か、まったく含蓄のある言葉だぜ。
リアはきっと、ずっとそうやって頑張ってきたから今もノエルの側に居るんだろうな。
かっこいい奴だぜ、本当に。
「あ、こんな無駄な時間を過ごしている場合じゃなかったのです!さ、仕度が出来たのですからさっさと行くのですよ。」
「あ、ちょっと待って。」
っと、これこれ。
俺は狐面を腰に差してリアと共にノエルの下へ向かった。
城内で誰と会うかわからないから一応、ね。
さて、今の状況を説明させてもらうとしよう。
まずテーブルの上にはオシャレなろうそく立てとお花、そして豪華な料理の数々。周りにはメイドと執事が居て奥では王様がお食事中。
そしてここが一番重要な事なんだけど、俺の目の前には煌びやかなドレスを纏ったノエルが厳かに神々しく優雅に座っているのだ。
全体的にふわふわとした白っぽいドレスを着て、髪は高い位置で結われている。
あぁ、なんとお美しい!これがこの国の姫君なのですね…!
ノエル殿下バンザーイ!
「…ふむ、してナユタ。そなたはなぜここに居る?」
心の中でノエルに万雷の拍手を送っていると、不意に王様が話しかけてくる。
「え?なぜってノエ…」
「陛下はまだ彼の事をよく御存じないと思いまして、私が声を掛けました。陛下直々にパーティーへ招待したのですから、彼の事はもっと知っておいた方がよろしいのではないのかと僭越ながら同席をお願いした次第です。」
「ほう、ではナユタには余を楽しませるだけの何かがあるという事か?」
「…………………はい。」
「はっはっは、であるか!我が娘にここまで言わせるとはなかなかに興味深い。…では、ナユタ!」
「え、はっ、はい!」
「余が許す、何か話してみよ。」
…ええええええええ!?
ちょ、何それ。無茶ぶりにも程があるでしょ!
何が悲しくて王様相手に滑らない話をしなくちゃいけないのぉ!?
ここで持ってもいないトーク術を披露するなんて聞いてませんけど、ノエルさん!?
ここはどう切り抜ければいいの?助けてノエルさん!!
いや、ごめんじゃなくて!
なになに?何でも、いいから、何か、話して、ごめんなさい…?
必死にジェスチャーで謝られてもどうしようもないから!ただノエルが可愛いだけだからっ!!
くっ、ダメだ。こうなったらノエルに頼らず何か話題をひねり出すっきゃねぇ!
「ええっと…あー、そうだ。実は午後は街に出ていたんですけど、パーティーに関する御触れが出されているのを見まして。いや、俺が直接見たわけじゃないですが、なんでも勝ち抜き方式の模擬戦をするとか。陛下はこういった催しものがお好きでいらっしゃるんですか?」
「いや、余は特に好いてはおらん。」
「えぇ、やはりそうでしたか。きっとそうだと…」
あるぇ?思惑が外れてしまったぞぉ?
ノエルが戦闘好きだからてっきり王様もそうなんだと思ったのに…。
やばいな、出端を挫かれた。
「えっとぉ、ではなぜそのよう催し物を…?」
「この手の催しは獣人族向けだ。彼の者らは戦いをこよなく愛する血の気の多い種族だからな。このパーティーには近隣の国だけでなく各種族の代表とその連れが参加する故、各々の嗜好に合わせた催しを用意しているのだ。」
「あぁ、そういえば人族は他種族に対して友好的に接しているんでしたね。なるほど、これはおもてなしの一環でしたか。」
となると、なけなしの戦闘知識でこの場を盛り上げよう作戦は使えないか…。
うーん、まさか模擬戦が獣人向けのイベントだったなんてなぁ。
ん?という事は他にも何か種族に合った催し物を用意してるって事なのか?
「その”各々の嗜好”というはどういった物なんですか?」
「…戦闘好きの獣人族には模擬戦、華やかさと優雅さを好むエルフ族にはダンス、鬼神族に関してはパーティー自体が該当する。話好きだからな。それで?余にここまで喋らせたからには、さぞ面白い話をするのであろうな?」
「えっと…、ではこういうのは如何でしょう?」
俺は腰に差しておいた狐面をとって顔に装着してみせる。
さっきの話を聞いて少し引っかかっていた事がある。
話好きの鬼神族にパーティーという場を与えるというのには納得するが、どうもそれだけでは弱いのではないかと思うんだ。
他種族と人族を隔てているのは邪竜の存在だと依然ノエルから聞いていたが、その邪竜の体だけとはいえ討伐に成功している。
そんな言ってしまえば友好関係を築く第一歩のパーティーなのだから、もう少し相手に好意的に見てもらえた方がいいのじゃないだろうか?
例えばそう、この仮面を使ってみるとか。
「それは、魔道具か何かか?それを使って何をするつもりだ?」
「これは今日、街に行ったときに見つけた鬼神族が作ったという仮面です。見た目の美しさはもちろん、着け心地も良い素晴らしい一品だと思います。いかがでしょう?次のパーティーはいっその事、これを使った仮面舞踏会にしてみては?」
「仮面…舞踏会?なんだそれは。」
「ご存じありませんでしたか。俺の居た世界では、このように仮面で顔を覆う事で素性を隠してパーティーを楽しんで貰う方法があるんです。もちろん徹底して身分を隠す必要はありません。ただ一見して誰か分からないような刺激を感じてもらえるようにするだけでも十分楽しんでもらえると思います。それにこの面は…」
「鬼神族が手掛けた物ゆえ印象もよくなる、か。確かにエルフ族と鬼神族に対しては押しが甘いと考えていたが…。ふむ、存外まともな提案をするではないか。鬼神族の仮面を着け、いまだかつてないダンスパーティーを開く…。」
「ど、どうでしょう?もしよろしければ、この仮面を買った店に在庫と仕入具合を聞いて来ますが。」
「…、大臣!」
うお!い、いきなり大きな声を出さないでくれよ、王様。
こっちは小心者なりに頑張ってプレゼンしてるんだからさ。
いやー、でもさすがにこれは無理かなぁ?なんせパーティーまで実質あと二日、だからな。
準備やら通達やらの時間を考えると、なかなか厳しいというか…ギリアウトって感じか?
それに身分を隠すっていうのも、やっぱりリスク高すぎるかな?
敵国ではないにしても同盟を結んでいるわけでもない、国際的に強者ってわけでもないこの国で何か起こった時に仮面で誰だかわかりませんでしたじゃお話にならないもんな。
王様は大臣さんと少し話をすると用意された紙に何やら書き始めた。
なんだろう…、俺のプレゼン聞いて王様も何か思いついたのかな?
それならそれで、この場を凌げるしいいんだけど。
「ナユタ。」
「は、はい!」
「これを持って、明日の朝一番にその店へと赴き仮面の手配をせよ。数が足りぬ場合は早急に取り寄せるように。期日は分かっておるな?言い出したのはそなたなのだから、責任を持って必ず揃えさせるがいい。各国には明日一番に知らせを送る。今回のパーティーは今までとは趣向を変えてあるので楽しみにするように…とな。」
「へ…?」
大臣を経由して渡された紙を持って俺は今言われたことを反芻した。
んーと、つまり俺のプレゼンは成功したけど、仮面の手配は丸投げって事?しかも失敗したら王様に恥をかかせるって?
わぁ、責任重大だぁ…
「陛下!いくらなんでもナユタには荷が重いのでは…!」
「ふん、それを決めるのはお前ではない、我が娘よ。余はこの男にやれと命じた。それに応えるかどうかは、この男次第であろう?」
王様はそう言うと目を細めて俺に鋭い視線を向ける。
いやいや、絶対無理でしょ!
俺、今日この街に来たんだぜ?
確かに言いだしっぺは俺だけど、そんな国の重大行事に引っ張り上げる事ないでしょーよ。
もしかして王様怒ってるの?俺がでしゃばったから気分を害されてこのような事を申されておいでなのでしょうか!?
「こ、こんなの、無理に決まって…」
「余はそうは思わん。そなたがやろうと思い尽力したのなら、必ず成功させると確信している。ナユタ、これは命令である。そなたのすべてを以てこれを遂行せよ。」
な、なんて無茶苦茶言いやがるんだこの王様は。
今までの何を見て、俺をそこまで過大評価しちまったんだ?
そもそも頑張るのは俺じゃなくって店主のおっさんでしょう!?俺が出来るのはせいぜいおっさんにこの紙を渡すくらいだよ。
…でも、命令か。
これって断ったらどうなるの?やっぱり城からは追い出されるよな?下手したら処刑…って事もあるのかな?
いや…待て待て、それってかなりまずいんじゃないか?
俺が王様の直命を断ったり完遂できなかった場合、このお咎めは果たして俺だけで済むんだろうか?
もし、俺が処刑にでもなったとしたら…その時、俺を迎え入れてくれたユエルの家はどうなるんだ?
領地はく奪?一家離散?何にしてもユエル家の名に泥を塗る事には変わりない…か。
あぁ、今日ユエルの名前を使っておっさんに無理言ったから罰が当たったのかなぁ?
神様は何でもお見通しってやつなのかねぇ?
はぁ、こんな事になるなら変な提案しなきゃよかった。
まったく俺は昔からそうだよな。後先考えずに突っ走って、後悔ばっかりしてさ。
でも、こうなっちまったもんはどうしようもないよな。
ここで断ったらバッドエンド待ったなしなんだから、せめて少しでも可能性がある方を選んで頑張るしかないじゃん。
やれやれ、結局自分のケツは自分で拭くしかないんだよな。
なぁに簡単な事だ、ようは失敗しなければ良いんだから。
俺を助けてくれたユエル家の為にも、俺は文字通り死ぬ気で奮闘するしかない。
「…やります。俺に、やらせてください!絶対に成功させてみせますから!」
「ふ…、それでこそ余が見込んだ男よ。良い報告を待っておるぞ?」
「はい!」
俺は勢いよく立ち上がり気合を入れて返事をした。
やってやろうじゃないの!覚悟を決めたナユタさんが華麗に成功するところを見せてやるぜ!
「ふむ、それはそうと。そなた、いつまでその面を着けているつもりだ?」
「あ、また忘れてた!!」
くっ、一度ならず二度までも…
どうも俺はこの面の高性能さに弄ばれているような気がする。




