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確かに俺は最強だった。  作者: 空野 如雨露
第一章 始まりの出会い
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第一章 3 朝食

読んで下さる方がいるようで。ありがとうございます。



用意された服に着替え身支度を整え終えると、再びあのメイドが部屋を訪れてきた。

本当にどこからか見てるんじゃないのかと思うほどタイミングがいいんだが…監視カメラとかついてたらどうしよう。

別に見られて困ることをしていたわけではないけど、無防備に寝てる姿や尻を掻きながらあくびをしている様を見られていたとしたら恥ずかしいじゃん?

その相手がうら若き少女だったとしたら尚更…ねぇ?

しかしそれとなく部屋の中を注視してみたが、それらしいものは見当たらなかった。

そもそも監視カメラじゃなくて、監視魔法みたいなものだったら確かめようもないんだけどね。


…考えても仕方ない、ここは超絶空気の読めるメイドなんだという事で納得しておこう。

今だって俺が怪しい動きを隠しもせず部屋の中を調べまくっていても、黙ってそれを見守っているんだから。

ほら、この子めちゃくちゃ空気読んでるでしょ?

つまりそういう事よ。


なんて事を一通り脳内で済ませて、改めてメイドちゃんと向き合う。

メイドちゃんはドアの前に立ったままじっとしていたが、俺が落ち着いた事を確認すると『差支えなければ当主と一緒に朝食を取って頂けないでしょうか?』と口にした。

あれだけ目の前で挙動不審な動きをしていたのにも関わらず表情一つ変えないとは、このメイド…やはり只者ではないな。

しかしそんな態度をおくびにも出さずに喜んでご相伴に預かる旨を伝え、メイドと共に部屋を後にした。


もしここで断ってたらどうなってたんだろう…、不敬とか言われて切り捨てられてたりするんだろうか?

はっはっは……こわ。


しかし部屋を出てみて思うが、やはりと言うか何と言うかデカい屋敷であるのは間違いなさそうだ。

俺の居た部屋は二階の角部屋だったようで、そこから中央にある階段で一階まで下りていく。

そうしてこれまたドデカい正面玄関であろう扉を華麗にスルーして歩いていくと、美しい装飾の施された扉の前へと到着した。

俺の居た部屋からここまで戴冠にして5分ほど…どんだけ広いの、この屋敷。


メイドは軽くノックしたのちにその扉を開けると、俺に中へ入るよう促した。

俺は言われるがままおっかなびっくり足を踏み入れると、そこにはレースのクロスが掛けられた大きなテーブルと洒落たデザインのイスがあり、そこに腰かける何人かの人影があったのだった。


幸いな事に、知ってる顔は二つあった。

このテーブルの一番奥、いわゆるお誕生日席に座っているのが当主だとしたら、その両サイドにそれぞれ座っている人物とは面識がある。

向かって左に座っているのが俺を最初にシャルルと呼んだ美少女で、その少女の向かい側に座っているのがあの立派な髭を蓄えた老人だ。

二人もここに滞在していたのか、それともこの食事に合わせてやってきたのか…たまたま居合わせたって感じではないと思う。

この空間にいるすべての人間が神妙な面持ちで席に着いていて、俺の動向を固唾をのんで見守っているといった感じだ。

とても空気が重い…。


「おはようございます、どうぞそちらへお座りになってください。あぁ、御挨拶が遅くなりましたな。お初にお目にかかります、私はこの領地を治めておりますシュヴァリエと申します。」


「初めまして、俺は…」


「えぇ、存じ上げておりますとも。ささ、まずは食事に致しましょう。お話は…それからでも。」


そう言って促してくるのであまり他の人をお待たせするべきじゃないかと思い、挨拶もそこそこに俺は指定された席に着いた。

その席はあの美少女の隣だったので、俺は少しほっとする。

人見知りというわけではないが、やはり少しでも知った顔が近くに居るというのは落ち着くものだ。

他人より老人、老人より美少女…ってね。


俺が席に着き彼女と老人、そして顔の知らない数名に会釈をすると食事が始まった。

しかしその間会話は一切ない、ただ食事を口に運ぶという行為が繰り返されるだけだった。

当主と老人は何やら目配せをして意思の疎通を図っているようだったが、俺には到底理解できるものでもないので気づかない振りをさせて頂いている。

こういうのって気づかれると気まずいもんだからね。

いやー、空気を読める男はつらいぜー。


ただせっかくの料理をもくもくと食べるっていうのも味気ないので、俺なりに食レポに挑戦してみようと思う。

もちろん脳内で、だが。

コメンテーター俺、視聴者も俺…ではいこう。


まずはスープだ。

一見真っ赤なので途轍もなく辛いのかと身構えたりもしたが、なんてことはないこれは具の溶けきったブイヤベースだ。

本当にそうなのかは知らないが、口当たりが少し濃いめのコーンスープのような感じで、魚介の出汁とトマトの酸味が合わさったかなり濃厚なスープだった。

一口含むと広がる複雑な味のハーモニー。

今、俺の口の中で蟹や海老たちがトマトを背負って踊り狂っている…!

まさに海のトマト祭りや~!

そしてそこにシンプルだが香りのいいパンを付けると、これまた最高にマッチした。

そうだ、このスープに足りなかったのは固形物だったんだ!そう思わせる見事な連係プレーだ。


次に出て来たのがオムレツとサラダ。

ふわふわの玉子には刻んだハーブが入っているようで、口に入れた瞬間から食欲を刺激する良い香りが鼻に抜けていった。

口どけもやわらかで、まるで綿菓子かのように口の中で溶けていく。

噛んでいるのか分からないほど柔らかい玉子とシャキシャキと歯ごたえのあるサラダがお互いを引き立てあって食感の楽しい良い一皿だ。

サラダにかかっていたドレッシングもハーブを使っていたのだろうか?濃厚なスープの後の口をリセットしてくれるような清涼感を与えてくれた。


最後に出てきたデザートは柚子のようなライムのような風味のジェラートで、さっぱりとした甘酸っぱさが癖になる一品だ。

スープから始まり数々の味を堪能した舌を優しく労ってくれるような安らぎのジェラート。

普段の俺なら大抵うまい!で済ませてしまうのだが、この料理にはそれをさせない一種の凄味のようなものを感じたぜ。

皆さんもいかがでしょうか?

一生に一回は行っておきたいシュヴァリエ邸の朝ごはん、来週をお楽しみに!


「ご馳走様でした。」


「いや、とても気持ちの良い食べっぷりでございましたな。お口に合ったようで何よりでございます。」


「本当にうまかったですよ。こんなにしっかりと朝食をとったのも久しぶりだったし。」


おっと涙が。

何せ仕事中は朝なのか昼なのか、腹が空いてるのか空いてないのかすらあやふやだったからなぁ。

やっぱり食事って大事なんだなってしみじみ思ったよ。

1日3食、1汁3菜、1日3善ってね。


そうこうしている内に食後のお茶がすっと目の前に置かれる。

やばい、幸せだ。


「さて、落ち着いたところでそろそろ本題に入りましょうか。」


俺が安らぎのひと時を堪能していると、当主は口を付けていたカップをソーサーに置き真っ直ぐ俺を見つめた。

その目が余りに淀みなく真っ直ぐと俺を射抜くので、俺もたまらず背筋を伸ばす。

そうして投げかけられた疑問に、俺は大きく目を開くことになる。


「単刀直入にお尋ねいたします。あなたはどちら様でしょうか?」




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