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確かに俺は最強だった。  作者: 空野 如雨露
第一章 始まりの出会い
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第一章 23 初めての魔法



「…ふぅ、とてもおいしいわ。クロエの淹れてくれるお茶はすごく気持ちが落ち着くわね。淹れ方にコツがあるのかしら?」


「いえ、特別変わった淹れ方はしておりません。当家のお茶は庭にありますハーブ園のハーブを使用しておりますのでそのおかげではないかと。姫様にお褒め頂けたとあれば我々使用人一同、最高の誉でございます。」


「まぁ、クロエったら。うふふ…」


「あ、あのー…ですね?お二人で百合、げふん、お茶のお話で盛り上がっている所大変恐縮なのですが…。先ほどの件で少々お時間を頂きたく…」


「えぇ、わかっているわナユタ。クロエのお茶のお蔭で私もだいぶ落ち着きを取り戻せました。もう大丈夫。」


「ノエルぅ…。」


「うん、ナユタ。人の好みは千差万別だからあなたの趣味について私がとやかく言うことはしません。ただ、ごめんなさい。私にはあなたの願望を叶えてあげられるだけの度量はないみたい。せめてナユタと同じ感性も持った人を紹介できれば良かったのだけれど、残念ながら私の知り合いにそういう趣向を持っている人はいなくて…。本当にごめんなさい、極力ナユタの力なってあげたいのだけれど…」


おもっくそ勘違いされてるぅ!?

そして変な方向に優しさと気遣いを発揮してしまっている!

まずい!

ノエルの中の俺は既に変態ドM童貞野郎になってしまっているんだ。

まさかこうもすんなり受け入れられるなんて、やだ、俺の日頃の行い悪すぎ!?

くそ、何でこんなことに!

いや、考えるまでもねぇ。全部ジークの悪ノリのせいだ。

後ろの方でニヤニヤしやがって、余裕ぶっこいていられるのも今の内だかんな…


「聞いてくれノエル!確かにノエルになら罵られることも吝かではないんだが、俺は特別罵詈雑言で気持ち良くなるような種類の人間じゃないんだ。誤解させてごめん。きっとジークが自分の好みに合わせてそんな助言をしてくれたんだろうけど…。ごめんなジーク、俺もその趣味は理解できないんだ。」


「あ、てめっ。こっちに振ってきやがったな?ふざけんな、俺にもそんな趣味はねぇ!」


「おいおい、こんな所でつまらない嘘を吐くなよ?俺はちゃんとわかってるから…。だって俺にもお前にもそんな趣味がないんなら、お前はただのくだらない嫌がらせの為だけにノエルに嘘ついたって事になっちまうだろ?わざわざ悪役になろうとするなよ、誰もそんな事望んじゃいないぜ?…思えばここに来てから何度もお前に助けられたよな?ありがとうな、ジーク。今回の事だって俺を元気づけようと…」


「あーあー、やめろって!なけなしの良心がチクチクするっつの!冗談だって悪かったよ!」


「はい、という訳で全面的にジークの悪いおふざけでしたー。最低だねー困るよねー。ノエルもジークに怒っていいぜー、絞めていいぜー。」


「くそ、意外と強かだなお前。もうちっと遊べるかと思ったのによ。」


残念だったな!

やるときはやる男なのだよ、俺様は。

ふふんっと渾身のドヤ顔をお見舞いしてやるぜ。


「本当にしょうがないんだから、二人とも。」


え!?ちょっと待って俺もかい、ノエルさん?

勝手に絡まれて被害こうむったのは俺ですよ?


「そんな不服そうな顔するなって、喧嘩両成敗っていうだろ?」


お前が言うなよ!

全部お前の自爆じゃねーか。

こっちは爆風に巻き込まれただけの貰い事故だっ!


「もーいいでーす。俺は静かに読書に勤しみますので!ぷんぷん!」


「もー、拗ねないで。…あら、膝抱えて端っこで小さくなっちゃった。」


「おいおい、男がそんな事しても可愛くねぇぞ?だいたい何読んで…。はぁ?【騎士としての心得~入門編】だぁ?おーいおいおいおい、こりゃどういう事だよ。立派な騎士様が目の前に居るっていうのに、こんな本なんか読んでやがるたぁーよぉ?全く照れ屋か、お前は!こんなもん俺に直接聞きゃ100倍早くて100倍わかりやすいだろぉがっ!」


照れてねーし。

ジークに聞くより本で読んだ方が有意義な事ってあると思うんですよ。

例えば規律だとか礼儀だとかね?

別にジークが規律を乱してそうとか、あんなナメた態度でよく出世できたもんだなとかそういうことを言ってるんじゃなくてね?

適材適所ってあるじゃん?

何となくジークだとまともな答えが返ってきそうにないから、こうして座学で知識を深めておこうと思ってるわけよ。

別にジークを信用してないとかそういう事じゃないんだよ、本当だよ?


「…おい、なんだその呆れ顔は?まるでわかっちゃいねぇなコイツ感をひしひしと感じるが、俺の勘違いか?」


「いや、違うんっすよパイセン。俺はただ時間を有効活用しようかなーってね?ほら、パイセンもお忙しいだろうし?あんま時間を無駄にするのも申し訳ないっていうかぁ?」


「その腹立つ言い方やめろ、ぶつぞ?だがわかった、お前は俺に遠慮してたわけだ。まったく水臭い奴だ、俺とお前の仲じゃねーか。こういう時は細けぇ事グチグチ考えてねぇで、さっさと俺んとこに来りゃいいんだ。まったく変な所で気ぃ遣うよなお前…。ほら、行くぞ!」


「は?行くってどこにだよ。」


「んなもん決まってんだろーが。」


ジークに無理やり立たされたかと思えば、ふいに強い浮遊感に襲われる。

あれよあれよという間に担がれると、急展開についていけず放心状態のまま中庭まで連れ去られたのである。

なんでやねん。

クロエが淹れてくれたお茶だってまだ飲んでないのに、有無を言わさず強制連行ですかこの野郎。

まったくクロエがせっかく淹れてくれたのに無駄にするなんて、悪いことしたなー。ジークが。

と思っていたら、さっきの茶器セットを持って既にクロエが中庭にスタンバイしていた。

イスやテーブルまで用意して…。

マジで何者なのこの子。

俺たちが中庭に着くまでに準備を終えてるって、もはや時を止める以外にどんな方法があるんだか教えてくれよ…。


「よーし、んじゃ始めるか。」


「いや、何も良くねーよ。人を荷物みたいに運び出しやがって、俵か俺は。んで、何をおっぱじめようってんだ?」


「おいおい、話の流れも読めないのか?坊主は何聞いてたんだよ。俺がお前を鍛えてやるって話だったじゃねぇか。」


「初耳ですけどぉ!?」


何よ鍛えるって!?

コイツ俺に何する気だ!?

まさか、さっきの根に持ってて俺に制裁を加える気じゃないだろうな?

大人気ねぇぞ、恥も外聞もねーのか!

助けてノエル様ー!


「ナユタだけ、か。いいなぁ…。」


あ、だめだこれ逃れられないやつ。

味方なしの絶体絶命大ピンチ!

ノエルたやなら助けてくれると思ってたけど、この子生粋の武道派少女なんだった!

忘れてたよ、テヘ☆

はー、マジどーしよー。俺ボコボコ街道まっしぐら?


「なぁにビビってんだよ。そんな痛い事にはたぶんきっとおそらくならねぇから安心しろって。」


「お前はもう少し安心させる努力をしろよ!」


不確定要素多すぎるだろ。

お前、騎士団長っていうからには指導慣れてるはずだろ?

うっかり死なせましたなんてそんなドジ属性、微塵も求めてねーからな!?絶対だぞ!?


「んじゃ、まずは魔法からやってみるか?んで、次に俺と模擬戦な?安心しな、ちゃんと手加減してやるから本気で掛かってきて良いぜ?」


「え、魔法?俺って魔法使えるの!?マジで!?やったー!これぞ異世界の醍醐味だよな!っしゃー、俄然やる気出てきたぞー!」


「お、いいねぇ。っしゃ、かかってこい!」


「怪我すんなよー!」


「……………。」


「…………………。」


「…ん?どうした?打ってこいよ?」


「え?いや、魔法ってどうやって使うの?」


「………………………………は?」


いやいや、は?じゃないですよ!

それを教える為に連れ出したんじゃないの?

生まれてこのかた魔法なんぞ使ったことがないんだから、やれと言われたって勝手がわからねーよ。

よく聞くイメージで使えみたいな話なのか?


「どうって…、体内の魔力を練って大気中の魔力を刺激して指示を出せばいいんだ。お前の世界とはやり方が違うのか?」


「違うも何も、俺の居た世界には魔法なんてもんはなかったからやり方がわからねーの!」


「は?魔法が…ない…!?」


「え、魔法がないならどうやって生活しているの?灯りや調理にも魔法は使うし、魔物が襲ってきた時は…?」


「あー、それはだな…。化学っていう違う文明がだなー…。」


無理、改めて説明とかできねーよ!

こんな質問される日が来るとはまったく想定してなかったもん。

そんな急に「あなたたちの文明について詳しく説明なさい」的なこと言われたって無理っすわ!

俺の頭はそんなよくできてないからな!!


「…うん、その話はまた今度にしよう。次までに少しまとめておくからちょっと待って。」


アドリブが効かなくてすみませんね。

とりあえず時間さえもらえれば何とかざっくり説明するくらいはできるだろうから、その話は次の機会にしてもらおう。


「うーん、滅茶苦茶気になる話なんだが…。ま、今回は見逃してやる。んじゃ、しょうがねぇから一から教えてやっか。」


「うっす、お願いします!」


こうして、俺は初めての魔法を習得するためジークの厳しい指導の下激しい訓練が行われた。

…わけでもなかった。


「ふーぬぬぬぬぬ!」


「ほれ、頑張れ。気合だ気合、自分の中の魔力を爆発させろぉ!」


「ぬぅー…、はっ!」


一瞬にして手元が明るくなる。

が、また一瞬にして元に戻る。

ジークに指導してもらって2,3時間が経って、俺ができるようになったのは指先からライター位の火を出すことだけだった。

おかしい、この体は最強の勇者じゃなかったのか…。


「おい、ジーク。声に出さなくても笑い転げてるのはわかるんだからな…!」


「ふ、…すまねぇくくく。いや、まさかお前がここまで魔法の才能がないとはな!くくく、びっくりしたぜ!」


才能ないとか簡単に言うなよ!

最近の若者は傷つきやすいんだぞ?

それに、まだ目覚めてないだけかもしれないだろうがっ!

遅咲きの天才だっているはずだぞ!

ね、ノエルたや!

きっとノエルなら優しい言葉で俺を慰めてくれるに違いない!

そう思って縋るようにノエルを見たが、俺の期待は見事に裏切られることになった。

この世界の人間の平均はわかんねぇけど、俺のレベルがノエルを絶句させる程度なのはよくわかった。

いっそ泣かせてくれ。


「不思議な事もあるのね…。確かにナユタのレトワルは他と比べて明らかに色がないけど、大きさはそんなに変わらないのに…。」


何とか戻ってきたノエルは、精一杯フォローするようにそう言った。

どうやら俺のレトワルってやつに異常はないようだ。

色とか大きさがどんな風に魔法に関わってくるのかは知らないが、とにかく問題は別にあるらしい。


「なー、この体って最強なんじゃないのぉ?レトワルってやつに異常はないし、体はむしろ最適なはずなのになんでぇ?」


「あぁ、落ち込まないでナユタ?きっとまだレトワルと体が馴染んでないとかそういうのよだぶん。見ていたけど魔力の生成自体に問題はなさそうだったし、慣れればきっと大丈夫よ。」


優しく励ましてくれるノエルたや、しゅき。

ノエルの期待に応える為にも要練習、だな!


「…もしくは特殊な属性持ちなのかもしれませんね。私にも身に覚えがありますが、そういった方は一般的な四大元素の魔法とは相性が悪かったりするようです。」


「え、そうなの?でも特殊な属性って何したらわかるんだ?」


「それは………、物心ついたころには分かっているものです、ね…。」


ずーん。

物心ついたころにはロボットとか戦隊ものに夢中でしたけど、これってどんな特殊な魔法の兆候ですかー?

生まれてこのかた特色なく平々凡々と生きてきた私に特殊能力とか言われましてもー。


「ま、できねぇもんは仕方ねぇからほっとけほっとけ。魔法がダメとなると…木刀でも振ってみるか?」


そう言うとジークはクロエから木刀をもらう。

ちょっと待て、今どこから出した!?

クロエが後ろ手にゴソゴソしてるかと思ったらニョキッと木刀が出てきましたけども…。

誰もツッコまないところをみるとこれが普通…なのか?


つか、切り替え早いっすねジーク教官。

出来ないものは出来ないってのは分かるけどね、俺としてはもう少し余韻を味わいたかったっていうか何ていうか。


「ほら、不貞腐れてねぇでこれを思いっきり振ってみろ。ただ振るんじゃなくて魔力込めろよ?これで何とか魔力の細かい使い方を身に着けろ。」


「…うっす。」


俺はしっかりと木刀を握って魔力を込め始めた。




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