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第8回 精霊術師、または精霊使い

エルフに多いと言う精霊術師。

本日は、ハイエルフの精霊術師さんをお招きして、お話を伺いました。

お初にお目にかかる。我はハイエルフと呼ばれる種族の精霊術師じゃ。

名前は・・・・・・ここではやめて貰えるかのう?ちょっとした事で有名になり過ぎての。困っておるのじゃ。


さて、精霊術師になりたいと言うなら、まず【称号】を獲得せねばならぬ。

精霊術師の大半は、【精霊の友】という称号を得ることが基本となっておる。他所(よそ)の世界も似たり寄ったりのはずじゃから、取れるなら取っておいて損はないぞい。



精霊というのはそもそも、この世界に住む極小の魔法生物の総称じゃ。

肉体を魔力で構成された純粋な魔法生物、それを精霊と呼称するわけじゃ。

精霊にはいくつか種類がある。


まずは精霊の格じゃ。

第一に、精霊王。精霊たちを(まと)める筆頭といったとこじゃ。主に、火属性・水属性・風属性・土属性の四元素に属した精霊王が居る。世界によっては、光属性や闇属性の精霊王が居る場合がある。彼らの魔法は、並みの魔法師では対抗できぬゆえ、ヤバいと思ったら撤退(てったい)すべきじゃ。

その次に、上級精霊が居る。精霊王は一般的には世界の安定を(つかさど)っておる故、細かいことには対応しにくい。その精霊王を補佐(ほさ)するのが上級精霊たちじゃ。彼らは名を持ち、人には『湖の精霊』とか『薬の精霊』などと呼ばれておる。よいか、名を持つのは上級精霊と精霊王だけじゃ。


名を持つのはそれだけ『力の強い存在であるという現れ』じゃから、不謹慎な発言はせぬようにせよ。

下手な発言をした挙句、人目に付くところに素っ裸で出現する羽目にはなりたくないじゃろ?

ああ、そうなったのは、ワシの弟子の一人での。

精霊王に対して無能呼ばわりしてしまってな。ハッハッハッハ(笑)


さて、その上級精霊の下に居るのが、中級精霊や下級精霊じゃ。

上級精霊や精霊王は人の姿を模した形をとる事が多いが、中級以下の精霊は基本的に無形(むけい)じゃから注意せよ。また、名を持たぬものが多い。


魔法使いなら解ると思うが、名というのは、個人を特定する有力なものである。という事はつまり、精霊の名を知るという事は、その精霊を自らに仕えさせることができるという事を意味するわけじゃ。

しかし精霊使いは、精霊を自らに仕えさせ手戦うのではない。精霊使いは、精霊と対等な立場で、対等な契約を結んで初めて戦えるのじゃ。

対等な契約とは、主に中級精霊以下へのアプローチから始まる。精霊と言葉を交わし、会話を交わし、徐々に人に慣れて行ってもらう。精霊は、その本人の魔力波長と合う者としか契約せぬゆえ、注意せよ。

精霊が十分に慣れると、精霊のうちの数名が契約を申し出て来るはずじゃ。この時、契約を了承すると、自動的に『対等な契約』となる。精霊はお主の名を――――真名を知り、お主は精霊に名をつけ姿のイメージを渡す権利を得る。上手くイメージと名と精霊の力が合致すれば、上級精霊並みの力を得るじゃろう。


上級精霊以上と契約を交わす場合は少々勝手が違う。

まず、その精霊が好む物を用意する必要がある。言わば、契約の為の代償を支払う必要があるわけじゃ。

上級精霊の種類にもよるが、基本的には本人の魔力じゃの。稀に、とある大陸にしか生息せぬ動物や植物を無傷で捕って来いとか無茶振りされることもあるが、基本は魔力で事足りる。

契約の代償を支払うと、上級精霊や精霊王の力の一部を譲り受けることができる。ただし、真名を知るためには、よほど契約精霊と仲良くならねばならん。


ちなみにワシは、風属性の精霊王と契約して居る。真名も知っておるが、ここでは明かさぬ。

魔法使いなら、真名がどれだけヤバい物か理解できるじゃろうから、説明は省くぞぃ。



さて、契約をしたらそこで終わりになるのが魔法使いじゃが、精霊術師は『契約をしたからハイ終わり』とはいかぬ。

精霊術師が精霊と交わす契約は、術師が生き続ける限り永続する契約じゃ。まして、上級精霊や精霊王はともかく中級精霊以下と契約を交わした場合、精霊の寿命や能力は契約者である術師に引っ張られる。

つまり、術師が死んだ場合、契約精霊も死ぬ。例外は『契約前の段階』で既に上級精霊か精霊王であった場合のみじゃ。

故に、術師になり契約をするという事は、一生涯続くパートナー契約をするに等しい。心せよ。


(水を飲む音がする)


さてと、精霊の種類じゃったな。

精霊には大きく分けて、2つの種類がある。有形精霊と無形精霊じゃ。

有形精霊は一般的に、武具精霊・防具精霊と呼ばれる、使い込んだ武器や防具に宿る意志の様な物で、精霊として昇華するには最低でも100年必要じゃが、精霊武具として昇華した物と契約することでそれに見合った力を得る。

ちなみにワシは、神代の武具精霊を持っておる。武器の質としてはオリハルコンじゃが、武具精霊として昇華した為、並みの魔獣や魔物では到底歯が立たぬ。ほとんどの世界では最強と称されるドラゴンとでさえ対等に戦えるのじゃから、凄さが解るじゃろうて。

有形精霊には他に、上級精霊や精霊王も含まれるぞい。

上級精霊で有名なのは、サラマンダーじゃろうか?炎を司る『火の精霊王』の配下の1つで、燃える火でできたトカゲのような姿をしておる。

あとは、ウンディーネじゃろうな。水を司る『水の精霊王』の配下じゃ。乙女の姿を水で模して現れる。

両者とも特定の姿形をとる故、有形精霊となるわけじゃの。


無形精霊は、武具精霊以外の一般的な中級精霊・下級精霊の事じゃ。

姿形を持たぬゆえ基本は無形じゃが、契約によって有形となる。しかし基本的な分類は無形精霊じゃから注意せよ。

世界によっては、中級精霊以下も人の姿を模して居る場合がある。



それから精霊には善悪の観念が無く、特に中級精霊以下は楽しいか楽しくないかで物事を決める節がある。善悪の観念があるのは上級精霊の中でも精霊王に近い配下の者らや、精霊王だけじゃ。

それゆえ、精霊に何かを頼むときはその言葉のニュアンスやイメージに注視せよ。下手に『敵』と言って、自分以外の全員が燃え上がるのは嫌じゃろ?

上級精霊や精霊王ならなんとなく解るが、中級精霊以下には通じぬ。


事実としてワシの世界でも、中級精霊と契約した若造が『国家の敵を滅ぼしてくれ』と精霊に願った挙句、国の中で暴利(ぼうり)(むさぼ)っておった官僚(かんりょう)と王侯貴族を全員抹殺(まっさつ)する羽目になって、国家として立ち行かなくなってしまった例がある。

ちなみにその若造は、国家が何とか力を取り戻し復興したその日に、民衆の前で(しば)り首にされたわぃ。自身の不手際が招いた結果とはいえ、不憫じゃろ?

しかも、自身が縛り首になる前に、家族の縛り首になるシーンを見せつけられておった。まぁ、その若造の妹はまだ幼きこともあった故、我が引き取って後進の為に教育して居る。莫迦な兄と違って、研究意欲も読みも深い。いずれワシの跡を継ぐやもしれぬの。


それと、精霊の寿命が契約者に引っ張られるのは中級精霊以下の場合だけじゃ。上級精霊や精霊王と契約した場合、契約者の寿命が精霊側に引っ張られる。

その証拠に、ワシの種族『ハイエルフ』の一般的な寿命は千年前後じゃが、ワシはもう一万年近く生きておる。人間であれば数千年は生きられるじゃろう。それが契約というもんじゃ。

精霊術師を職業として考えるならば、その点も覚悟が要るぞ。


最後になるが、精霊と友になれたからと言って慢心し精進せぬ者は、精霊術師には向かぬ。

一生涯続く精進の道、それこそ精霊術師の道なのじゃから。

無形:形の無いモノ。⇔有形(『形の有るモノ』の意)

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