第6回 傭兵
異世界で傭兵をやってる、とある傭兵さんに聞きました。傭兵ってどんな職業?
危険だが実入りのいい職業、それが傭兵ってやつだ。
なるために必要な事?
そいつはアレだ、周囲で人がくたばっても、血塗れの死体が落ちてても吐き気を我慢できる根性さ。
俺か?俺ぁ傭兵歴30年のベテランだったよ。
ああ、戦場で、どこかの阿呆な騎士様に、無謀な突撃を指示されて従った結果がこの様さ。
まったく。突撃の結果、騎士様は落馬して即死しやがったし、俺は右足を切り落とさなきゃならなくなった。片足じゃ傭兵は続けられねえよ。傭兵をやりたきゃ五体満足じゃなきゃな。
で、なんだったか?ああ、傭兵ってのはよ、要は、雇われた兵士の事だ。
ほとんどの場合報酬は金、とそれと自分の命だな。
ああ、勝てる方へつけよ。じゃねえと報酬は無しで、代償に命を差し出さなきゃなくなる。
くたばりたくねえなら、最初は後方勤務がベストだ。治療や医術に携わる連中なら楽できるだろ。
問題は前線勤務に回された挙句に激戦区に送り込まれるパターンと、無能な指揮官の元で働けと言われた時だ。
前者は、キリのいいとこで逃げ出せ。そうすりゃ少なくとも命は報酬になるし、生き延びたっていう経験も残る。初心者傭兵ならそれがオススメだ。
後者は、上官をぶっ殺して別の有能な奴をトップに就けるか、それともマトモな判断をする幸運を願いつつ一緒に行くかのどちらかだな。俺ぁ不運な方だったが、命は助かったし、まぁなんとかなったさ。
傭兵をやめた奴の行き先は何種類かある。
まずは、冒険者組合なんかで対人戦の教官をやるルートだ。俺ぁこのルートを選んだがな。
冒険者組合ってのはよ、魔物退治が専門だが、上位ランクになると傭兵の真似事をやったりする。商人共の護衛とか、盗賊退治とかだな。
でよ、ほとんどの奴は対人戦なんかやったことねえからよ、俺らみてぇな元傭兵が指導すんのよ。
まぁたまに粋がってる舐めた根性したガキがいるけどよ、そうゆー奴はコテンパンにのしてやってからこう言ってやんのさ、「テメエ、今死んだぞ」てよ。それでひん曲がった根性が直りゃいいが、直らねえ奴は上位ランクに上がっても一月と持たずにおっちぬだけさ。
次は貴族様に雇われて、領地を守る衛兵共の指導教官になる場合だな。
この場合は、両手剣や片手剣+盾を扱える傭兵・魔法を使える傭兵なんかだと重宝されっぞ。
何しろ衛兵共は、なにも盗賊だけを相手にするわけじゃねえ。ゴブリンの様な魔法を使える奴らから襲われた領民を助けるために戦うことだってある。そんな時に教官の教えを守ってりゃ生存率が上がるのさ。死なねえわけじゃねえが、生き残る奴が増えるのさ。それが信頼関係って奴になってくる。
最後は、あまり勧めたくねえが、冒険者に転業することだ。
だがこのルートはあまりオススメしねえ。
もしやるとしたら、先に冒険者の方を経験しとくこった。じゃねえと死ぬぞ。
人間相手なら傭兵の方が強え。だが魔物・魔獣との戦いは、人間とは違う。
人間は自分と同じような動きしかできねえから、突発的な出来事には弱いし予想外の行動をとることもねえ。だが魔物や魔獣は、元が獣だからよ、予想外の行動をとる事も多い。
だから冒険者はオススメしねえぜ。
実際、それでくたばった知り合いを何人か知ってる。どいつもこいつも楽観視してやがった。
「対人戦よりは楽だろ」てよ。
俺ぁ対人戦の方が楽でいいぜ。そっちの方がはるかにマシだぁ。