第4回 盗賊
地味な職業。でもパーティにいないと困るよ。
さて、勇者・魔法使い・治療師と来たら、最後に出るのは盗賊であろう。
盗賊は素早さに特化し、罠の回避や解除を専門とする職種である。
盗賊には勇者パーティにいるような義賊の類と、街道で人を襲って金品を強奪する正しい意味での山賊と、街中で金品を民家などから他者に見られぬように強奪する正しい意味での盗賊の3種類がある。
まず義賊の類だが、義賊は一般的には報酬が欲しくてそれをやっているのではない。民衆の為にならない行為や、特定の誰かのみが利益を得るような行為に対する警告としてそれを行うのだ。その行為自体は賊と呼ばれる以上、法に照らせばアウトではあるが、民衆や一部の王族からは【悪者への戒め】として見られることもある。
次は山賊の類だが、こいつらは傭兵崩れや兵士崩れなど、一般的には武力がある程度あり、尚且つ、ルールや規定に縛られたくない無法者がなる場合が多い。
多くは街道筋などで民間人や商人の馬車を襲って金品を強奪し、逆らう奴は殺して、女は犯して、子供は奴隷として売り飛ばすという極悪非道な行為を働く連中が多い。
異世界でこんなのになった者は必ず悲惨な最期を迎えるだろう。おもに騎士団という軍隊による討伐によって・・・・・・。
最後は盗賊の類だが、異世界の多くは闇ギルドや盗賊ギルドなどの下々の職業をギルドという一定の法で治める手法を好んでいる。この方法の利点は、どんな職種であっても法に従って裁くことにより、悪いものを悪として断罪することが可能だという点に尽きる。
依頼されて働く盗みは合法だが、勝手に盗みを働くのは違法と規定できれば、盗賊も一般市民として町の中に住むことができるだろう。
さて、盗賊になりたいなら、自分の身軽さを磨くべきだ。
優秀な盗賊は、小柄で身長が低く、身軽で機敏である。逆に大柄な者や身長が高い者は、盗賊には向かない。何故なら、小柄な者であれば狭い通路を通り抜けもできようが、大柄であれば通り抜ける事さえできないし、身長が低ければそれだけ敵の攻撃を躱し易いが、高ければ狙い撃ちの的である。何より小柄なら隠れる場所は町中にたくさんあるが、大柄だと隠れる場所は数えるほどしかなく簡単に特定されてしまう。それはつまり逃げ切れる確率が大幅に減る事を意味しているし、生きて再び誰かに会う事もないという意味である。
それから、武器の扱いも必要だ。
盗賊にオススメの武器は短剣であるが、特異な武器が欲しいなら小太刀をオススメしよう。
前者は超接近戦でしか戦えず、攻撃と回避が常にセットになった戦い方しかないが、後者は攻撃と回避に加えて防御まで効く優れものだ。
ただこの小太刀(別名:長脇差)は東の方角にあるジパングという国でしか製造されておらぬゆえ、入手は困難を極めるであろう。どうしても入手したいなら話は別だが、基本は短剣を使った方が良いと思うぞ。
そして極め付け、これができなきゃ盗賊になるのは不可能と言ってもいい、鍵開けである。
ダンジョンなどにある宝箱には、鍵がかかっていたり、開け方によっては罠と連動していたりする。
その危険を常に素早く察知し、いざというときは自分が囮になってパーティ全体へのダメージを軽減するのも盗賊のお仕事である。そのため盗賊になるには危険察知の能力も必要になる。
危険を察知出来て鍵開けもできる、小柄で身長の低い盗賊こそ、一流の盗賊である。
超一流の盗賊になりたいならそれに加えて、依頼人の情報を漏らさない覚悟が必要だぞ。