第3回 治療師
治療師 あるいは治癒師、いわゆるヒーラーについて
治療師の存在は、勇者と言われる人々にとっては非常に稀有な存在だ。
そして敵にとっては非常に厄介な存在でもある。だから、治療師というのはゲームなどでも(勇者や戦士が盾にならない限りは)真っ先に狙われることになる。
治療師は、回復呪文を多く備えたパーティの生命線だ。だいたいは聖女などの異世界存在が兼業している場合が多いが、召喚された勇者パーティの中に治療師がいる場合も多い。
治療師になりたい人は、まず治療に必要な薬草や呪文を覚えるところから始めよう。
ただ単純に【回復魔法を使えばそれでいい】わけではない。
勘違いされやすいのだが、一般的な治療師の使う回復魔法というのは『対象者の生命力を魔法で強制的に引き上げることによって回復を促すもの』なのだ。それはつまり、魔法に耐えきれるほどの体力のない者(老人や乳幼児など)は、それによって命を落とす危険がある事を意味する。
もっとも、勇者が使う回復魔法は例外である。一般的な治療師の回復魔法は神聖魔法の類に入るが、勇者のそれは光魔法に分類されることが多いからだ。ということは、治療師のような危険が無い魔法であるとも言えるが、ある意味ではそれは勇者の特権である。
話を戻そう。
薬草の知識があれば、治療師は自身の魔法を使える最低限の段階まで、患者の体力を引き上げられる。
そうなれば後は治癒の奇跡(魔法)で終わりである。
治療師が使う回復魔法は、患者の傷の具合によってMPが増えるタイプの呪文と、患者の傷や病気の進行に関係なく常に一定の効果をもたらす呪文の2種類があり、多くは後者である。
問題は前者の魔法を有する治療師になりたい場合だ。
後者の魔法を有する治療師になりたい場合は、薬草の知識なんかを覚える暇があったら魔法を少しでも多く学んでもらえばそれでいい。
しかし前者の魔法を有する治療師は、薬草の知識に加え人体の構造や医学的・外科的知識を持っていなければならない。それは何故かと言えば、薬草や医学的知識によって多少なりとも患者の体力を回復させなければ、そもそも魔法を使ったとしても完治しない可能性が極めて高いからに他ならない。
治療師はパーティの生命線だが、同時に自らの身を護る最低限の知識や技術があると心強い。
オススメは短剣や杖を用いた近接戦である。
特に杖は魔法を使う際の媒体になるうえ、木製で堅ければ鈍器としても使える優秀な武器である。
木製の杖が無ければ、ミスリルなどの魔法を通しやすい金属の杖を使うといい。どちらにしても鈍器として使えるし、棒術のような武術を習得していればさらに活躍の場が上がるだろう。
戦って良し・回復して良しの治療師は味方に好まれ易いし、ガラの悪いオッサンやオバサンが寄ってこなくなるので自衛にも向く。
優秀な治療師は回復に特化した場合だとよく思われがちだが、実はある程度自分の身を護れる方が優秀な治療師である。
回復に特化した場合は自衛戦闘に疎いため、必ずパーティの誰かが一緒にいて守ってあげなければならない。結果として前衛に負担がかかり、さらに必然的に後衛の魔法師が治療師の応援に回るために、パーティ全体の火力が下がるのである。
一方、ある程度の自衛戦闘ができる治療師は、パーティの誰かが守ってあげる必要がなくなるため、必然的にパーティ全体の火力が上がる。前衛の負担も軽くなるので一石二鳥であるし、魔法使いがいるなら魔法使いの負担も減るので一石三鳥である。