月夜の下、子供のように色を問う
十月はひょいと世界のうらっかわ
黒い薄手のワンピースで夜の散歩
きんもくせいのレース透かして景色を見るの
街灯に虹の輪ができるのとそうでないのとがあるのはなぜ
桜の幹
刈った稲穂の茎や細い葉
月光を浴びた雲のはしっこ
透明の風車ごしの空気
この色の名前なんていうの
なにかに出会う
だれかに出会う
星明かりと飛行機とはすぐに見分けられるけれど
いったいなにがちがうのかしら
朝の木立と夜の木立は
おなじ「緑」と呼んでもいいの
あのトラクターが赤くみえるのは
明るいうちにそうと知ったからかしら
夜よりふかい赤だからかしら
どこまできたの
どうやってきたの
さみしさはチョコレートといっしょに舌にとかして
わらうろうそくをたどればいい
ほら
燈色を胸にもどってきた世界のおもてがわ
もう空気ににじみだしてる
人恋しさのきれいな結晶