#006 装備は用途にあったものを使いましょう
絶望の縁から体制を立て直せた俺は玄関に向かいながら、1階層全部が自分家なんだなぁと情報と照らし合わせを行っていた。
『まぁ、家の中が広い広いとは思っていたが…一階層ぶち抜き仕様か。しかし35歳で億ション買って俺ら養っている母親は何者なんだろう?情報によれば会社の重役とあったけど何の会社かわからないし、重役程度で普通にやってたら買えるはずがないんだけどな。たぶんこの家2億以上だし、数千万ならまだしも億になると維持費と固定資産税が羽上がる。年間最低でも100以上〜300万くらいかかる。此処、立地条件関係でどう見積もっても400以上取られているはずなのだが。しかも、この人18には子供産んでるし…マジで謎だ。』
ここに自分の事を棚上げして母親を謎生物呼ばわりしているアホがいた。
玄関に着くと久姉と詩音が靴を履いて待っていた。
詩音の格好はオレンジに黒のラインが入ったパーカーにたぶん下はオーバーオールかな、あと赤いラインの入った黒のスニーカー、久姉は上が薄い紺色にサイドに長いスリットが入っていてスリットから淡い緑の生地が見えるカラー組みのレイヤードワンピースを着ており足元は黒のロングブーツ、髪を後ろで留めて大人っぽい感じがでている。
『うん。妹よ可愛いぞ。そして姉よ、完全武装しているが合コンにでも行くのか?食材買いに行くだけなのに気合い入れすぎだろう。気合いの入れどころ間違ってないか?』
「お兄ちゃん似合う〜。」
「2人共似合ってるよ。」
などと思っていると妹が笑顔で聞いてきて、久姉がこっちをチラチラ見てるので笑顔で答えておいた。
じゃ行こうかと2人が玄関のドアを出る時に気がついた……いや正確に云うと詩音にだ。
彼女のパーカーの背中に“ニート道 働いたら負け”の文字がペイントされていて危うく吹きそうになった。
だから玄関を出てすぐに俺は聞いた。
「ねぇ詩音そのパーカー何処で買ったの?」
「ん?わかんない。お母さんが買ってきてくれたの。」
「へーそうなんだ。」
『…母よ…貴女は我が妹をどの次元に導こうとしているのだ…。』
妹が答えてくれて久姉が苦笑いをしているのに対しておいおいジョーク商品としてはあるといえばあるが…本人が買ったのならいざ知らず、年端もいかない子供に着せる(与える)ものでもないだろうとまだ見ぬ母に一抹の不安を抱えるのだった。