#005 世界の中心で神に美少年に聖剣なんか装備させてんじゃねー!!と叫びたい
人という生き物は大小色々あるが基本、他者と比較したがる性質である。
俺は今、ベースキャンプ(自分の部屋)に帰投している。
なぜ部屋に戻って居るのかは、簡単に言えば外出する為であり、詳細で述べるなら自分が作った食事が美味しかったから妹に今晩は何にするのかを遠周りにおねだりされたので買い物に出掛ける為に部屋に着替えに来たのである。
ん?日常系のレベル上がるんじゃないのか?ああ、それなら問題はない。
とんでもない特殊調理法とか、見たこともない食材でも調理しまくらないと上がらないだろうし、そもそもそんなものが簡単にカンストするなら世界は大変な事になっている。
おっと、話を戻すけどちゃんと目的はある。
まず前世で自分の食事は自分で作るように習慣化していたので自分で行い少しでも以前の生活リズムが欲しいがゆえの行動だ。
だから作るのが多少増えようが全く問題ないし冷凍食品が多かったから元々手を出すつもりだった。
成長盛りの子に冷凍食品ばかり食事させるのも味気ないし、味覚というのは子供の頃で形成されるからね。
それに妹の好感度は特に上げておきたいからという理由がある。
このロリコンが?いやいや俺は愛でるのが好きなだけだよ。
確かに妹はど真ん中のストライクではあるが、俺の持つ情報によるとこの家で唯一のゲーマーなのだ。
是非とも仲良くなって情報提供やあわよくば部屋に入れて貰ってゲームをさせて欲しい。
なので、この世界でのゲーム事情を知らない俺には多数のやっているだけかもの見知らぬプレイヤーの掲示板などの評価よりも身近な類友(玄人)なのだから当然の選択である。
だから本来、連休になるから遭遇率は下がる筈である妹に廊下でばったりエンカウントしたのだからたたみかけるしかないだろ。
えっ、ロリコンだったからじゃないの?じゃねーよ!おい!お前ら人をロリコン認定したことで俺が廃人ゲーマーだということを忘れてただろう!!
まあいい…後、もう1つ目的があって外に出るのを慣らしていくことである。
何で?って俺、今は学生で3日後には学校、その上12〜13年の引きこもりの大ベテラン、この世界女性多くは男性との出会い!?…を求めていて…俺……男!!……あれ?死亡フラグ!?
別に家に引きこもっていれば、いいじゃんか?まあ、この世界の男性はそういう輩が多いいが、他人任せの生活などどっかで綻び(ほころび)が生じたら瓦解するだけだし、絶対に国の世話になるのだけは避けたい。
裏の事情を知っている身としては、目をつけられて罠に嵌められ囲われましたなんて冗談じゃない。
それに最終目標の以前の生活ステータスと何事にも対応できるコネクションを作っておく為、外に出ることは必須なのだ。
ああ、そういえば恒例のスキルを確認忘れてた。
取得したのは、[世話]と[2P]である。
世話 レベル 1
[レベルに応じて面倒をみることに長けたスキル]
『また取得が謎なのが出てきたなぁー。“2P”って“3P”とか“4P”とかの“P”じゃ、ねーだろうな。』
そう思いながら表示し確認する事にした。
2P
[任意。「コントローラ」と呼ぶことで手元に出現。コントローラマイクに向かって「ド〇えも〜ん」と大きな声で叫ぼう、すると声の大きさによって2〜100倍全能力値UP。効果時間10分、リキャスト時間3分、他のスキルと強化スキルと重複可。]
『……おい!ファミコンのド〇えもん裏技じゃねかぁー!!!そもそもどんな羞恥プレイだ。で、最大で100倍…そんな強化受けたら負荷かかり過ぎて死ぬんじゃない?……こいつも封印だな。』
そっと封印してステータスを閉じたのだった。
*
「さて、そろそろ着替えますか。しかし、服が多いと選ぶのめんどいなぁ〜。どんだけ着飾るのが好きな設定だったのか。」
この男、服装には無頓着であった。
俺は何でもいいかと出掛けるので適当に白地にペイントがついたパーカーとグリーンのチノパンを取り出しベッドの上に置くと自分の着ている服に手をかけて着替え始めたのだが短パンを脱いだ辺りで急に手が止まった。
「………まさか。」
おもむろにトランスを前方に引っ張り下を向いて中身を確認した。(目測スキル発動中)
『はっ?刃渡り24……えっ抜き身に成っていない状態で………………。おい!!神!ふざけんな―――――――――なんで、美少年にこんな極悪な伝説の剣を与えて装備させているんだ!!!!バランス全然とれてないだろ。しかも前世の俺よりでけーじゃねぇか!!』
『…聖剣?いや違うだろう。あれはリバースバベルだ。この塔が逆転して真のバベルの塔に変わった時、いったいどれ程になるというのだろうか。日本人の膨張率は平均3倍だというのに…いや待て、これだけの塔を建たせる為には血流がいる。』
「まさか!?………極悪絶倫は…この塔を…稼働させる為の…布石……。」
『………なぁ、嫌がらせか、嫌がらせなのかぁ―――――――。』
俺は声には出せなかったが、心の中で血の涙を流しながら声にならない声を叫んでいた。
今日1日の中で精神耐性をガリガリ突破して与えられた最大級ダメージだった。
*
*
それから暫くして、部屋をコンコンとノックされ、久姉の声が聞こえた。
「郷耶、そろそろお買い物行こうか♪」
「………………」
「郷耶?」
「……久姉もう少ししたら行くから。」
「そう、用意ができたら来てね。玄関で詩音と待っているから。」
声を絞り出しやっと返事をすると待っていると言ってドアから離れていく足音が聞こえた。
そして俺は、何とか自分を奮い起たせて出掛ける用意をするのだった。