#003 人生にはあちこち地雷が落ちている
人の行動とは何処かで誰かが視ているものだとは良く言ったものである。
俺は今、廊下で黒髪の女性に後ろから抱き締められている。
意味がわかんない?すまんが俺もだ。
妹と話し終えた直後にいきなり抱き着かれたものだから、反射的に危うく相手の手を捻り(ひねり)そうになったのを何とか回避して、今現在に至るのだが今は、背中にグリグリ当たる胸の感触を堪能している。
『これは…デカイな。大物だぁー。今晩はご馳走だな♪』
おいおい…お前、妹の前で不様にだらしない顔を晒していないか?問題ない!!ポーカーフェイス様、絶賛稼働中である。
だが、このままと云うわけにはいかないので、名残惜しいがそろそろ行動に移そうと思う。
なんか放置するとお互い延々とこのまま今日1日が終わりそうな気がする。
「あの〜そろそろ離して貰えませんか。」
「…郷耶ごめんなさい。」
そう言って解放し…………………あれっ?と思い
「久姉?」
今度は呼称で呼び掛けると名残惜しそうに解放してくれた。
解放されて相手に向き直すと視界に黒髪美人が立っていた。
『おぉー!もの凄い美少女だ。』
俺が見て思った彼女の容姿を含んだ紹介になるが名前は、篠宮 久永【しのみや ひさな】、17歳、高2、身長167㎝、B93W57H87、髪は艶のある黒、腰まであるロングなのだか、髪の一部をワンサイドに縛った髪型になっている。
顔立ちは均等がとれており目尻が下がった美少女である。
服装は上は薄紫のカットソーに下は紺色のパギンス(パンツレギンス)、スキニーパンツにみえるスリムなパンツのを履いて…ん?ちょっと待て!やけに詳しい身長やスリーサイズを語るじゃないか?妹のときは“くらい”と言っていたじゃないか……ちっ、気づきやがったか。
……あー。それは妹と会話している時にメッセージが流れてきて何かいろいろ取得しました。
取得したのはこんなので、[艦長の魂][索的][高速思考][演技 レベル1][目測 レベル1]
まだ内容は見ていない…というかこのステータス詳細見る為に必要なことがある。
今はその件については省くが、何で取得したのか不明な“艦長の魂”意外は効果含めて予想がつく。
そんで、取得してから演技と目測はMAXにしており、目測での結果があれになるわけなのだが。
しおたんの詳細?妹の詳細よこせ?…ペッ!断る!!共有などするつもりはない諦めな(笑)。
*
本筋から逸れたので強引に戻すが、この姉、世間では文武両道でおしとやかで品行方正だということなのだが…。
「久永お姉ちゃんおはよ〜。」
「久姉、おはよう。」
「詩音、郷耶、おはよう。」
妹に出遅れ挨拶を交す。
それに答えて久姉は笑顔で返してきた。
『さてと、本題を切り出すことにしますか。』
「それで久姉は何でいきなり抱きついてきたの?」
「…だって…詩音が抱きついていたから。」
『いや、答えになってな…。』
「え〜と久姉、もしかして詩音とのやり取り視ていた?」
「…うん。だから私も郷耶と仲良くしたくて…。」
どの辺りから視ていたかは判らないが“家族なんだし気にしなくていいよ。寧ろ、これからは仲良くなっていけたら…”という話を最低でも聴いていたのだろう。
「そうだね家族だし。久姉、改めてよろしく。これから仲良くしていこうね。」
俺としても家族と変に溝を作るよりも仲良くやっていくほうが“今後の為”にも望むところだったから、そう笑顔で答えたと同時に再び抱き締められた。
まあこの世界の男性は基本、女性を嫌悪しているところがあるから、俺がこの世界にくる前の[郷耶]の設定でも類に漏れず女性嫌いだったし、家族すら避けていた。
だから仲良くやっていけることが嬉しくて感極まって抱き締めたのだろう。
妹も仲良くしたいと言ったら喜んでいたし。
「郷耶これからは仲良くしていきましょうね。」
そう耳元で囁かれた。
ただ抱き締められた状態に問題があった。
俺の顔、久姉の胸の中。
なんて羨ましい状況なんだ?あぁ…俺も“何これ♪いいにおいがする”などとそう思ったバカな時期があったよ。
始めはここが“マグ・メル(喜びの野)”と思ったがそれも束の間、ガッチリ押さえつけられて固定、呼吸ができない。
久姉の背中を気付いてほしくてタップするが喜んでいると勘違いしてか抱き締めが強化された。
俺は何とか抜け出そうともがくが、それで姉が艶っぽい声を出しはじめて、ここで遊んでいると勘違いしたのか妹がカードを切って追加効果を発動。
「しおもー。」
今度は妹に背中に抱き着かれて姉妹にサンドイッチにされた。
自分の背中にグリグリ頭を擦り付けて甘えてきて俺の肺の酸素タンクのゲージをガンガン消費させてくる。
なので前後で圧迫され酸欠状態に陥りかけていた。
まぁその後なんとか顔を胸から外せて現在、波紋(呼吸)を整えている。
危うく二回目の人生が始まった初日に終わりを告げるところだった。
あれからしばらく経つが………………………………………………………いや、もう離してくれてもいいと思うのだが、まだ2人に抱き締め抱きつかれている。
『えーと。これなんていうギャルゲー?』
などと思っているといつ居たのか、金髪に蒼い目、制服姿に右手にバックを持った少女がいた。
「こんなとこで何やってんだ?郷耶、女嫌いだろ。また前みたいにこいつヒスルぞ!!」
「凜ちゃんあのねぇ〜、仲直りしたの。ほら、こんなに抱きついたりしてるのに怒らないでしょ。」
少女は歩いてきて近づいて来るなり姉妹に言い放っのを久姉が抱きついた状態を見せながら言い返す。
次の瞬間、彼女に俺は“え"っマジか?”という目で見られたので頷くと頭を掻き「あー」とか「だからか…」とか1人で何か納得していた。
「郷耶に対して猫被るの辞めたんだ。」
「うん♪もう必要なくなったから。」
「あー、郷耶。この女、お前命の重度のブラコンだから気をつけろよ。」
『…はぃ?…………え"っ!!』
だが次の瞬間、爆弾が投下された俺は一瞬何を言われたのかわからなかった。
そんな俺を余所に彼女はスタスタ通路を歩き曲がり角に消えた。
それを目で追っていた俺の目前に再び彼女が上半身だけぴょこっと角から出てきて口パクで“が.ん.ば.れ”と言っていなくなったのだった。
『いやいや金髪、助けろよ!クソッ!!姉のブラコン設定なんて無かったじゃねぇか!!しかも重度!?そんな転生オプションなんて要らね――――――――――――――――!!』
そう心の中で叫びながらどうやって今現状を抜け出そうか思案するのだった。