#014 人?を見かけで判断してはいけません
目的の豆をバッグにしまい駅に向かった。
駅前に着くとバイクに乗った30人程の少女の大群に囲まれた。
皆、同じ物を羽織っている、特効服というやつだ。
どうやら絶滅危惧種の暴走族とエンカウトしたらしい。
脳内情報で検索を掛けるがヒットなし、知り合いではないようだ。
あとこっちの世界だと普通にいるそうだ。
自分を少女達が“へー”とか“どこの美少年だこいつ〜”などと言いヘラヘラ笑いながら見ている。
『わぁ〜ゾッキーかぁー。久しぶりに見たなぁ〜。』
ん?怖くないのか?いや、全然。
何で?と問われれば、昔話になるが、12の頃に訪ねてきた親父の知り合いに“ほう、これはいい素材だ”と言われ、その客人が親父に断りを入れて俺は弟子にされたのだが、そこから地獄の始まりだった…。
色々仕込まれてからサバンナや密林で一月生き延びろとか、銃撃戦を学ばせる為に密輸グループ相手にさせられたし、15の時は最悪だった。
その師匠に連れられて中南米に行っんだが、夜中に連れ出され燃える畑を背に“ふははっ、良く燃えとるわい。風下には立つなよ。”と笑いながら写真を撮られた。
後で直ぐに解ることになったが、俺の後ろで燃えてた畑、ケシ畑(麻薬の原料)。
そんで、その写真を師匠が管理元の麻薬カルテルに送りつけ。
カルテルには当然だが、それを資金源にしていた軍事集団にも命を狙われた。
ジジイ(師匠)に良い笑顔で“駆逐しないとお家に帰えれんなぁ〜(笑)”と言われたのは今でも印象に残っている。
組織の人達どうなったのか?聞くな、世の中知らない方がいいこともある。
まあ、そんなのを相手にしてた事に比べれば族に囲まれているなんてたいしたことではない。
それに族は師匠に言われて散々(さんざん)、捕まえて色々な練習台になっていい人材だった。
絶滅危惧になったのはお前のせいじゃないか?失礼な、ちゃんとキャッチ&リリースしてました。
まあ、ヤバい状況というなら駅を降りて直ぐにすれ違った17〜18くらいの少年は本当にヤバかった。
相手、俺にわざと分かるようにやってたんだろうけど、自分の経験上での危険察知が過去最大級でガンガン警鐘を鳴らしていた。
以前の自分を含めてもどうやっても勝てるどころか逃げれる気がしなかった。
多分、本人は軽くやってるつもりなんだろうがヤバい殺気だったし、“うん、これは死んだなぁ〜”と思った。
だけどすれ違い際に“なんだ…本当におちてないんだ。”と残念そう言い、去って行った。
彼が言ったおちると言う言葉が“どのおちる”の言葉の意味だったか不明だけどもう会わないことを願いたい。
………あれ、おかしい?少年の顔を覚えていない。
*
あれ?何で少年の顔を思い出せないんだ?と不思議に思っていたら、少女達の中から1人の少女が掻き分けて出てきて指を差された。
「あーっ!!こいつです。あたいらをやったのは!」
一瞬、“はて?このモブさん誰だっけ?”と思ったが記憶を辿ると該当があった。
ナンパしてきて路上に沈めた3人組の内の1人だ。
仲間内から“お前らこんなのにやられたのか(笑)”などと言われて少女は必死に弁明している。
『おや!?三半規管を振らしてあげたのに復活早いなぁ〜1時間くらいしか経ってないのに。もうちょいハードな攻撃でも良かったか。』
俺は少女達のやり取りを余所に“どれくらいまで耐えられるんだろう?”とこの世界の人達の身体強度が気になっていた。
そんなことを考えていると少女達の中の1人が“お前ら静かにしやがれ”と叫び静まり帰った。
部隊長だろうか?
バイクから降りて来ると俺の前に立ち言い放った。
「舐めた真似されたままじゃ示しがつかないから悪いが付き合って貰うぞ!!逃げようなんて思うなよ。」
「ええ、分かりました。それで自分は誰の後ろに乗ればいいんですか?」
「…随分物分かりがいいじゃないか。…まぁいい、俺の後ろに乗れ。」
そう言い彼女は自分のバイクを指差した。
周りの少女達から一斉にブーイングが出たが彼女が一喝すると直ぐに収まった。
少女はきっと後悔することになるだろう。
自分がこれから後ろに乗せる相手がとんでもなく質の悪い………だったということを彼女は知らなかった。
少女に幸あれ。




