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イジメと呪いと…

作者: 神名代洸
掲載日:2016/10/06

僕は悪いことは何にもしていない。なのに皆で仲間はずれにする。学校なんていいところじゃない。先生も頼りにならない。

ないないづくめで嫌気がさした僕は、パソコンであるものを探していた。

それは…死に場所を探していたのだ。


そんな時小耳に挟んだのがパソコンであるものを探して差し出すと呪う事ができるというオカルトちっくなものだった。


そんなサイトが実際にあるわけないと諦め気味に探していたら、なんとヒットしたではないか。

ビンゴだ。


死ぬ気でいた僕はそれでも胸がドキドキして止まらなかった。僕にも運が向いてきたか?

サイトは誰でも閲覧できるというふうになってはいたが、普通こんな怪しげなサイト閲覧禁止になるだろうに…と考えてしまった。が、それよりも興味の方が勝り、僕はサイト内へと足を踏み入れた。

画面はおどろおどろしくなっているかと思ったら以外と綺麗にレイアウトされていて拍子抜けしてしまったほどだ。


【呪いたい相手の名前と生年月日を入力してください。】そう書かれていた。

名前は書けるが生年月日はわからない。

なのでこれは人づてで聞くしかない。そう思った。


学校では相変わらずいじめられている僕は憎しみがどんどん強くなっていった。

そんなある日、たまたま喋ったクラスメイトからようやく生年月日を聞くことができた。もうウキウキ気分だ。

家に帰ってから直ぐにパソコンの前に立つと例のサイトを開いた。

注意書きがされていたがそんなこと気にもならない。

流すようにページを変える。


そして名前と生年月日を入力した。


ただそれだけで終わるなんて大したことないなと思っていた。そう、その時が来るまでは…。

それはある日突然だった。

虐めていたリーダー格の男の子が酔っ払いの車にひかれて亡くなったのだ。

そう、みんなが見ている目の前で。

突然のことで誰も予想だにしなかった。

運転手はアルコール度数が強い酒を飲んでいたようだ。

意識もはっきりしない。

ただ、男の子に向かって突っ込んでいったのだけは覚えているらしい。何故彼だったのかと聞かれたがそれはわからないとしか答えなかったそうだ。それもそうだ。面識などもなかったのだから。


「なんか…怖くね?もしかしたら俺らだったかもしれないし。」「もしかして誰かの呪いだったりして。」「まさか〜、そんなの迷信迷信。偶然だって…。」


僕だけは分かっていた。


それは呪いのせいだって…。

それでも信じない奴がいるんだ。言わせとけばいい。そう思った。

内心では有頂天になっていたが、顔には出さないようにしていた。それが元でイジメがひどくなったらたまったものではないからだ。

他にも数人の生年月日は手に入れてある。あとは入力するだけだ。

だからしばらくは何もせずただ我慢した。

立て続けでは僕が疑われかねないからだ。でも呪いとまでは行き着くかどうか…。


その日の夜、通夜が営まれた。

友達だった奴ら、クラスメイトは皆泣きながら焼香をしていた。一応僕も参加したほうが良いらしく内心嫌々ながら参加した。

通夜の最中も刑事が聞き込みをしていた。

リーダー格の男の子に恨みを持つ奴、事故を起こした男と面識がある奴を探しているようだった。

恨みを持つ奴ですぐに僕の名前が挙がったらしい。そりゃそうだ。いじめてたんだからな。

でもクラスメイトは遊びだったと言っているらしい。

当然僕の所にも刑事が2人やってきた。あれこれと聞かれた僕は彼らが僕にしてきたことを話して聞かせた。

「それを言うと君が疑わしくなるのにどうして正直に話してくれたんだい?」「僕は運転されてた方を知らないからです。知ってたらどうかしたと思いますよ。」

笑いたくなる気持ちをぐっと抑えそれでも笑みがこぼれた。

刑事達は何か言いたそうにしていたが、イジメが関わってくると課が変わる事になる。

慎重な捜査を進める事になった。


それからはイジメがなくなった…気がする。

まだまだこれからなのにと僕は思っていた。しかし、次のターゲットをパソコンに入力していた時、一瞬だが頭が痛くなった気がした。?気のせいか?そう思うようにしていた。

そう言えば入力していた時、注意書きが書かれていた気がしたが…。

画面を元に戻しながら注意書きの画面を出す。

するとそこに書かれていたのは。


【この呪いには対価が必要となり、あなたの大切なものが徐々になくなっていきます。よく考えて入力して下さい。】


「えっ?そんなの知らない…。対価って何?僕の何が対価になったの?」


考えても全く分からなかった。

大切なものなどないからだ。

いや、あった。一つだけ。


僕の『命』だ。

ヤバイ。あいつが死んだから僕の対価を取りに来たのか?誰が?

周りを見ても何も変わっていない。

僕は自分の体を見て回った。両腕、両足、腹、背中、何も変わってない。あっ、そう言えばさっき頭が痛かったような…。

鏡を使い、まだ見える部分は捜したが特に何も変わっていなかった。じゃあ、さっきの痛みは一体?

もしかして目に見えない部分が?

分からない。そんなの分からないじゃないか。

僕はそのまま固まってしまった。

一瞬だが誰かに見られている気がしたのだ。ほんの一瞬…。


翌日、またクラス内が騒ついた。

授業開始時間を過ぎても先生が来ないからだ。

どうやら昨夜、クラスメイトが1人亡くなったらしい。

ドアノブに紐を引っ掛けて首を吊った状態で発見されたのだ。発見したのは母親。

起きる時間が来ても全然出て来ない子を起こしに子供部屋に行こうとしたが、肝心のドアが開かないことでおかしいと感じたらしい。直ぐに救急車を手配したが、ドアが開かないのでレスキューが呼ばれた。


ベランダからよじ登り、二階の子供部屋に着いた時にはだらしなく寝ているような格好で子供は息絶えていた。直ぐに蘇生処置が施されたが、無駄だったようだ。

ただちに警察が呼ばれ司法解剖が行なわれることになった。死因はやはり首を吊ったことによる窒息死。

だが、吉川線がなかったので、抵抗もしていないようだ。

抵抗すれば首に跡が残るからだ。

それが吉川線。


その時間は朝が早い為、クラスメイトみんなのアリバイは家族がみんなで証言するしかなく、第三者と関係するものはいなかった。つまり全員にアリバイはないことになる。

僕はあえてその時間を狙ったわけではない。

たまたまだ。

時間なぞ指定できないのだ。

そんなことはパソコン状無理だった。そんな項目は一つもなかった。

でもそんなこと全然気にもならなかった。

死ねばそれまでだからだ。


たかが十何年、その十何年の為だけにひどい目にあわされるのはごめんだった。

しかし、おかしなことが起こり出したのはこの頃からだろうか?

誰もいやしないのに誰かにじっと見られているという感覚。

片足を掴まれる恐怖。

足首には確かに人の手形が付いていた。

それも僕と同じくらいに小さな手が…。

恐怖を感じたが、もう始めてしまったものは戻らない。続けるしかなかった。

でも、恐怖が僕に付いて回った。

ある時は鏡に亡くなった男の子が写っていたり、暗い部屋を移動する時、人の姿を見たりと怖くて仕方がない。

それでも虐めていた奴らを野放しにはしたくなかった。懲らしめてやらないと。

でも、それは僕が間違っていたのだ。

初めは頭が痛いだけだったのに、胸まで痛くなり出した。

歩いてて突然苦しくなるのだ。

真っ青な顔をして歩いている僕を見ていた、たまたま通りがかった男の人が声をかけて来た時、目の前が真っ白になり倒れてしまい、救急車を呼んでくれた時もあった。

怖くなり、もう辞めようとパソコンの画面を消したが、何度消しても立ち上げると問題の画面に切り替わった。

この恐怖からはもう逃げられないのか?

泣きそうになりながらもなんとかしようとパソコンの主電源を切ってみたりするが、一旦は良くなるがまた元どうりになるという繰り返しだった。

怖かったが、何度も同じことを繰り返した。

そしてパソコンを見る事もやめてしまった。

もう学校での些細ないじめは気にならなくなっていた。それよりも問題なのはパソコンの画面。

いっそのことパソコンが壊れたから買ってと両親に相談しようとさえ思ったほどだ。

でもそうなるとあのサイトを見てしまうことになりやしないかと心配になった。


だがそれは問題ないようだ。現に今、両親がパソコンの画面を見ている。でも、なんの変哲も無いただのパソコンになっていた。

学校でのことを色々と聞かれたが、僕は何にも無いよとだけ言い、パソコンを買ってもらえるように交渉をしっかりとした。

今まで以上に勉強を頑張ること、友達と仲良くすることなどが条件だ。

1つ目はそのつもりだったから問題ないが、2つ目は守れそうにない為、適当に相槌を打ってごまかした。

そうして僕は新しいパソコンをゲットすることができわけだ。


僕専用の。


そうして新しいパソコンの画面を設定し始めると、一瞬だけ頭の隅に例の画面のことがよぎったが、絶対に開けたくないという気持ちが勝り、開けることはしなかった。また画面上に表示したら怖いからだ。

当たり障りのないホームページを開いて僕は楽しんだ。

けれどもそのささやかな幸せは長くは続かなかった。酷いいじめが始まったからだ。

リーダー格が死んで次のリーダーが名乗りを上げた。そして僕が殺させたんだとあらぬ疑いをかけ、いじめが始まった。ものを投げつけるは、机には死ねという言葉が埋め尽くされるはものは隠されるは仲間外れにするはキリがない。

そいつの生年月日もわかっている。

あとはパソコンに入力するだけだ。

悩んだ。

またあの恐怖が始まるのかと…。

なので、前使っていたパソコンを箱から出して立ち上げた。

すると簡単にあの画面へと切り替わる。

スラスラと名前と生年月日も入力し、エンターキーを押す。これでそいつも死ぬことになる。

僕は嬉しくて思わず笑い出してしまった。


次々と名前と生年月日も入力していく。知っている全員全てだ。

そして全てを入力し終えると電源を切って箱にしまった。そして何重にも紐で縛り、ほどきにくくした。

その間体の震えは止まらない。

よほど緊張していたのだろう…。

それもようやく解放されるとホッとしていたら、つけていたはずの部屋の電球が突然切れた。何故?


分からない…。


思い出したのは呪いに必要な対価が僕の命だったという事。僕はまだ十代。払ってもお釣りがくるくらいはあるはずだと思っていた。でも実際は?足りなかったのか?

部屋の電球はついたり消えたりを繰り返しやがて完全に消えた。


額からは汗が伝い落ちる。

怖い、怖い、怖い。

いじめから逃げるためとはいえ、この恐怖の呪いはやるべきではなかったのかもしれない。でも、もう遅い。

やってしまっているから。

じゃあ、あとはどうしたらいい?

分からない。

パソコンは厳重に紐で縛って今は玄関に置いてある。

なぜ玄関て?

回収業者に回収してもらうためだ。

両親にはまだ言っていない。

そうこうしているうちに業者が来たが、僕はそれを持てずにいた。

1つは両親が捨てると言ったら怒るだろうことがわかるから。もう1つはこのパソコン…だけらしいが、ふとした瞬間にそれ以上はどうでもよくなった。

結局パソコンは押入れの奥にしまった。

その前には重いものを置いて、出し入れしにくくなる様にした。

明日が怖い。

書いた奴らは皆でてくるのか?

それとも僕が死んじゃうのか?

その日は早く布団に入ることにした。もし、何かあっても良い様に遺書もきちんと用意しておいた。

そしてグッスリと眠りについた。2度と起きないかの様にきちんと布団をかぶって。




翌朝、目が覚めた僕は憂鬱になりながら学校へ向かった。


誰もいない…。


人一人も…。先生でさえいなかった。

僕はどうしたら良いのだろう?

すると何処からか声が聞こえた気がした。

僕はその声のする方へと歩いていく。


しかし、見えない何かに邪魔されるかの様にある場所から先には行けなかった。

声はだんだん小さくなっていく…。



そして。




目が覚めたら病室のベットに寝ていた。


「よく頑張ったね〜。もう大丈夫だ。」

「先生、ありがとうございます。」そう言って先生に深くお辞儀する母が小さく見えた気がした。

何がなんだかわからなかった僕は、母からいろいろなことを聞いた。

いつもの時間になってもお前がいつまでたっても部屋から出てこない。

声をかけても返事をしない息子が亡くなったクラスメイトとかぶり一瞬頭が混乱したが、慌ててドアを開け、すぐに救急車を呼んだそう。

顔も冷たかったのでもうダメかと思った時、机の上に置かれていた遺書を見つけたんだそう。

そこに書かれていたのは壮絶ないじめにあっていて苦しい胸の内を綴っていた息子。死ぬかもしれないと思い、必死になって息子の体をさすって温めた。


問題のいじめっ子たちも別の病院に入院していると聞かされたのは入院して2日だったからだろうか…。


5人とも大したことはないということだが、刑事が事情を聞いているそう。遺書の内容を確認するためだ。

内容があまりに酷い為、事件性があるかどうかを調べているそうだ。

僕はようやく肩の荷が降りた気がした。

そう言えば、前のパソコンはどうなったのだろう…。

聞くまでもなかった。

警察が押収していたのだ。

例のサイトを調べているが、誰が立ち上げたのか全く分からないそう。そればかりか、サイト自体も一度だけ立ち上がりはしたが、2度と立ち上がることはなかったそうだ。

もう使う必要はない。というか使わない。

僕は学校を転校することになった。いじめていた子達も全員別々の学校へ転校だ。

学校はてんやわんやの大騒ぎ。

一度にこれだけの人数が別々の学校へ転校など普通ないからだ。


僕の人生はこれからだ。

きっとこれからは穏やかな生活が待っている。僕はそう思いたい。



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