先勝
それは、突然の電話だった。
「はい、もしもし…」
「起きたかー!」
耳がキーンとする大声で、俺は寝ぼけていた頭が叩き起こされた。
「あー、なんだ、お前か」
街路を挟んだ向かいに住んでいる幼馴染が、電話の主だ。
いつもは、インターホンでやってくるが、今日は電話だ。
「なんだじゃない!ちょっと用事があるのよ」
「用事って、なんだよ」
「あたしの友達の姉が結婚することになったそうなのよ」
「そりゃおめでとうだな」
「そうなんだけど、何せ、明日するっていうことでね、どんなプレゼントをするかって言うことで悩んでるのよ」
「お前でも悩みなんてあるんだな」
「うるさい。何かいい案ってない?」
「そうだなぁ…」
カレンダーを見て、今日は先勝だったことを思い出す。
「ま、善は急げって言うし。結婚式はいつなんだ」
「明日」
「明日って、こらまた急だな」
「明日は友引だからね。そんなことよりも、なにかいい案ない」
「新婚なんだから、新婚旅行送るとかってどうだろう。それでいいんじゃないかな」
「分かった、ありがと」
電話は、かかってきたと同じように、唐突に切れた。
俺はすっかりと目が覚めてしまい、頭をかきながら朝ごはんを食べることにした。
彼女ならきっと大丈夫と言い続けながら。