殴り込み!!いざ火向井邸へ
とにかく私は走っていた。
“俺様の名前は火向井彰だ”
つまり、お父さんは私のせいでクビになったって事でしょ!?
私が絶対王制マンに目をつけられたから…。
お父さん、お母さん、ごめんなさい!
私…。
私…。
『火向井さんのお宅?それならあの丘の上にある家よ』
「ありがとうございました」
親切なおばさんにお礼を言って、私は絶対王制マンの家を見上げた。
あの傲慢な絶対王制マンに似合った無駄に大きい家だった。
丘を登り、いよいよもうすぐ絶対王制マンの家だ。
「よし」
ゆっくりとチャイムを押した。
心臓の音がうるさい。
『はい、どちら様ですか?』
可愛らしい女の人の声が聞こえた。
「あのう、えっと、私、栗栖って言います。あ、彰くんに会いたいんですけど…」
彰くん、なんて奴を呼ぶのはこれが最後だ。
そう思いながら私はごくりと唾を飲んだ。
『彰様のご学友の方ですね。彰様から伺っております。お入りください』
その声と同時に門が開いた。
今更不安になってきた。
でも、ここで引き下がるわけにはいかない。
意を決して私は一歩前へと踏み出した。
『いらっしゃいませ』
数人のメイドさんが律儀にも玄関前で私を迎え入れてくれた。
「こ、こんにちは…」
緊張しながら挨拶をすると、一人のメイドさんが一歩前へ出た。
『こちらです』
そういいながら私が家の中に入るように促す。
メイドさんにお辞儀をして中へと足を踏み入れた。
「うわぁ」
絶対王制マンの家は、とても広く綺麗だった。
玄関の上にある明かりとりの窓は綺麗なステンドグラスだった。
日が差し込んで広いホールの床に色とりどりの色がうつっている。
『栗栖様、こちらです』
メイドさんに声をかけられてやっと我にかえった。
慌ててメイドさんの後についていった。
『こちらへ』
そういって招き入れられた部屋は白を基調とした明るくて、暖かい雰囲気の部屋だった。
掛けるように促され、二脚あるうちの一脚に腰掛けた。
すぐ目の前にあるテーブルに、おいしそうな紅茶とお茶菓子が置かれた。
『もうしばらくで彰様がいらっしゃいます』
そう言い残してメイドさんは部屋から出ていった。