第2話 店の入り口
-side ユノ-
「ここが俺のお店かー。お店というよりもはや屋敷だな」
翌日、商業ギルドのアレックスさんに紹介してもらった物件を見にきている。
全財産をオールインして買った物件だからな、流石に一晩寝てからの今日なので大分頭が冷えて、買った物件がやばかったらどうしようかとビビり散らかしていたが、立派なお店だし、よかったー。
なお、一括で買える金があるなら、絶対借金して買った方がいいという正論は受け付けていない。
それにしても、アレックスさんは幽霊が出るとか渋っていたが全然大丈夫そうだ。そもそも、俺は幽霊なんて信じていないし、仮に出てたとしても幽霊ぐらいなんとかなると思う。知らんけど。
もう引き返せないところまできてしまっているのだ。腹を括るしかないだろう。なお、引き返せなくなるの早すぎだろという正論パンチももちろん受け付けていない。
それにしても、外観を見る限り、幽霊が出そうな物件ではないな。窓も綺麗で清潔感もあるし、いい感じ。
「いや、油断は禁物か」
こういう平穏な場所でも、何があるか分からないということは冒険者見習い時代に嫌というほどが学習させられた。
とはいえ、相手は所詮いるかもしれない幽霊。まあ大丈夫だろう。
俺は意を決して中へ入ってみる。
ーーガンッ!ガタタタタタ……!
中に入った瞬間、突然建物が揺れて目の前にあったテーブルとか、皿とかが浮き始めた。
ちょっとそれは聞いてない。
「ひええええええええええ!無理無理無理無理無理!」
--バタン!!
え?嘘だよね?
ポルターガイスト現象とかいうやつ?
これってもう、そーいう事ですか!?
--シーーン……
「あれ?扉を閉めたら、めっちゃ静か」
ほな、気のせいかー。
「--って、騙されるかあ!」
知ってるんだからな!そうやって油断させる作戦なの!
--シーン……
だが、建物を睨んでも何も反応が返ってこない。ぐぬぬぬぬ……どうしたものか?
いや、冒険者たるもの、未知のものを恐れてはいけないと、俺が憧れてるSランクの人も言っていた。
まあ、さっきは初めてだったから驚いただけで、2回目は大丈夫だろう。
そう考えた俺はもう一回、意を決して中へ入る。
--ガタガタガタ!!
「ひえええええ!やっぱ無理無理無理!」
--バタン!
再び、扉を閉じる。
デジャブじゃねえか!
というか、これホラーゲームかよ!
ツッコミが追いつかねえ!
「え?やばくない?」
正直、幽霊さんを舐めてた。
仮にいたとしても、普通に低ランクのアンデッド系のモンスターとかと同じノリで倒せると思っていた。
え?建物が揺れている?それってもはや、ヴァンパイアロードとかそういう次元のモンスターが関わっているとかいう話?
--シーーン……
ぐぬう……相変わらず、建物を閉じたら、何も音がない。
--ん?待てよ?それって、おかしくないか?
仮にヴァンパイアロードなどの高ランクの魔物だったとしたら、建物を閉じた瞬間に動きが止まるという事はないだろう。
彼らは居場所がバレたら全力でこちらを倒しにくるはずだ。
そもそも、仮にそうだとしたら冒険者ギルドと商業ギルドが放置するはずがない。
「だとすると、家付精霊とか?いや、それもないか」
商業ギルドのアレックスさんは複数の高位冒険者パーティにこの建物を調査してもらったが、幽霊がなんなのかはわからないと言っていた。
仮にもしも家付精霊だとしたら、その中に一人はいるであろう高位神官や魔法使いが気づかないはずがない。
「つまり、わからないってことか」
ふーむ。
偉い人が考えてわからないのだったら仕方がない。仕方ないものは仕方ない。
だったら、分かっている事だけで対応していくしかないだろう。
「分かってる事としたら、こちら側が中へ入ろうとすると、全力で阻止されるということ」
つまり、なんらかの防御システムが自分が中へ入るのを拒んでいるのだろう。
そして、おそらくだがそれは攻撃性のある魔物や幽霊なんかではなく、このお店にデフォルトで備わっているシステムな気がする。
つまり、このお店自体が巨大な魔道具の可能性……いや、流石にそれは考えすぎか。
このお店全体が魔道具だとしたら、一体、どれだけの価値になるか?というか、これだけ大きい魔道具となると、もはやアーティファクトを疑った方がいいだろう。
そして、流石にそれはない。アーティファクトなんて王家が所持している可能性のあると言われる伝説上の物だからだ。
「ふむー。じゃあ、考え方を変えよう。仮にお店の防御システムが作動している場合、正面突破は多分無理だ。となると……どこかの入れる入り口とかがあるはず」
俺は、お店を一周して、入れる扉があるか探す。
「うむーないか」
しかし、何周かしたが、見つからなかった。
「もうこんな時間か。仕方ない。お昼ご飯を食べてちょっと休憩するか」
俺はその場に座ると、先ほど鍵を貰う際に商業ギルドの食堂で買ったサンドイッチを鞄から取り出す。
バゲットに生ハムとチーズとレタスが挟まったシンプルなサンドイッチだ。
「うーん!うまっ!」
流石はあらゆる良いものが集まると言われる商業ギルドの食堂。
新鮮なシャキシャキレタスと適度に塩っ辛い生ハム、若干クセのあるチーズが最高にマッチしてて美味しい。
「さて、元気も出てきたところで、再開すっか!」
気を取り直して立ち上がる。
--キラーン!
「--ん?」
今何かが光ったような?
俺は導かれるようにさっき光ったように見えた場所へ行く。
「これかな?」
見ると、指輪があった。
うーむ?誰かが落とした指輪だろうか?
『適合者を見つけました。指輪を装着してください』
え?突然頭の中に声が響いてきた。
『装着してください』
「は、はい!」
俺は言われるがままに指輪を装着する。
『確認できました。お名前は?』
「ユノだ」
『ユノ様。ようこそ我が屋敷へ。歓迎いたします』
--ゴゴゴゴゴゴゴ……!
頭の中にそう聞こえたと思った瞬間、突然お店の裏口に地下へと続く階段が出現したのだった。
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