ope.9 "続"ゴブリンも歯が命。
それから──三週間後。
異世界美容整形クリニックの前に、また小さな影が現れた。
「先生ー!!」
ぴょこぴょこと走ってくる。
ゴブリンのグギだ。
須高は椅子に座ったまま腕を組んでいた。
「……来たか」
グギは嬉しそうに言った。
「先生!歯が変なんです!」
オークたちがざわつく。
「壊れたのか?」
「抜けたのか?」
須高は言った。
「口を開けろ」
グギは大きく口を開ける。
そして須高は、じっと歯並びを見た。
──沈黙。
そして小さく頷く。
「……動いているな」
野高が覗き込む。
「先生、本当ですね」
最初はバラバラだった歯が、少しずつ並び始めている。
オークたちも覗き込む。
「おお……」
「歯が揃ってきてる!」
グギは興奮していた。
「昨日、肉が噛めたんです!前より噛みやすい!」
須高は装置を少し調整する。
カチッ。
金属線を締める音。
グギが少し顔をしかめる。
「いっ……」
須高は言った。
「痛むか?」
「少し……でも大丈夫です!」
須高は頷く。
「……正常だ。それこそ歯が動いている証拠」
オークたちは驚いている。
「歯って本当に動くんだな……」
「人間の医者すげえ……」
須高はグギに言った。
「……あと二ヶ月だ」
グギの目が輝く。
「本当ですか!?」
「……そうだ、あと二ヶ月で歯並びは完璧になる」
グギは深く頭を下げた。
「ありがとうございます先生!!」
そして、少し恥ずかしそうに言った。
「実は……村のゴブリンたちも来たいって……」
須高は腕を組む。
「……ほう」
その瞬間。
クリニックの入口から──
ぞろぞろと小さな影が現れた。
十人以上のゴブリン。
全員、歯がガタガタだ。
オークたちが笑う。
「お前ら歯ボロボロじゃねえか!」
「肉ちゃんと噛めてたのか?」
ゴブリンたちは恥ずかしそうに言った。
「噛めない……」
「歯痛い……」
須高はゆっくり立ち上がった。
そして言った。
「……いいだろう。全員診てやる」
野高が驚く。
「先生!?」
須高は静かに言った。
「口の健康は、全身の健康だ」
そして少し笑う。
「ふっ……この世界には歯医者はいないらしい」
オークたちがざわつく。
「歯医者……?」
須高は腕を組んだ。
「……今日からここは」
一言。
「異世界歯科医院でもある」
オークたちが歓声を上げた。
「すげええ!!」
「人間の医者すげえ!!」
こうして──
異世界美容整形クリニックは
歯科医療でも有名になり始めたのだった。




