ope7.髭は威厳の象徴
ゴブリンの歯科治療が始まってから数日後。
異世界美容整形クリニックは、ますます忙しくなっていた。
オーク。
エルフ。
ゴブリン。
様々な種族が列を作っている。
「次の患者どうぞー」
野高が声をかける。
その時だった。
ドシン……ドシン……
重い足音が近づいてくる。
オークたちが振り向いた。
「……なんだ?」
「誰だ?」
そこに立っていたのは──背の低い男。
だが、体は岩のようにがっしりしている。
腰まで伸びた長いヒゲ。
そして大きなハンマー。
オークが驚いた。
「ドワーフだ!」
男はゆっくり歩いてきた。
そして須高の前で止まる。
「……お前が噂の医者か」
低く太い声。
須高は腕を組んだ。
「……そうだ」
ドワーフは椅子に座る。
「相談がある」
「言ってみろ」
ドワーフは自分のヒゲを掴んだ。
そして言った。
「ヒゲを増やしてほしい」
オークたちが一斉に吹き出した。
「ぶっ!!」
「ヒゲ!?」
「そんな相談あるのか!?」
ドワーフは真剣だった。
「ドワーフにとってヒゲは誇りだ」
「だが俺のヒゲは……」
須高は観察した。
確かに。
ヒゲは立派だが──中央が少し薄い。
ドワーフは悔しそうに言った。
「若い頃、火竜の炎を浴びてな。ここだけ焼けた」
オークたちが笑う。
「火竜ってお前……」
「よく生きてたな!」
須高はヒゲを触りながら言った。
「……なるほど」
「部分的な脱毛か」
ドワーフが身を乗り出す。
「治るのか!?」
須高は即答した。
「治る」
ドワーフの目が見開かれる。
「本当か!?」
須高は腕を組んだ。
「毛は移植できる」
野高が言う。
「先生……それって……」
須高は頷く。
「植毛だ」
オークたちはまた困惑する。
「しょくもう?」
須高は言った。
「後頭部の毛を移植する」
ドワーフはヒゲを撫でながら言った。
「ヒゲが……増えるのか……」
須高は小さく笑った。
「……三ヶ月後。
お前のヒゲは今より二倍になる」
ドワーフは立ち上がった。
そして──
深く頭を下げた。
「頼む!!」
オークたちがざわめく。
「また新しい医療だ!」
「人間の医者すげえ!」
須高は静かに言った。
「野高くん」
「はい先生」
「次の手術だ」
こうして──
異世界美容整形クリニックは
ついに植毛医療まで始めたのだった。
患者第四号。
ドワーフ ガルド(ヒゲ植毛)




