ope4.美しい故の悩み。
オークの村は、まだ騒ぎの最中だった。
「族長がイケメンになった!」
「顔が左右対称だ!」
「人間の医者すげえ!!」
村中が大騒ぎで、お祭り騒ぎのようだった。
そんな中──
村の入口に、一人の女性が立っていた。
長い金髪。
透き通るような白い肌。
そして特徴的な──
長い耳。
須高は腕を組んだ。
「……次はエルフか」
オークたちがざわめく。
「エルフだ!」
「なんでこんな所に!?」
エルフは少し緊張した様子で歩いてくる。
そして須高の前で立ち止まった。
「あなたが……族長の顔を治した医者ですか?」
「……そうだ」
須高は短く答える。
エルフは少し恥ずかしそうに言った。
「お願いがあります」
「……聞こう」
彼女は指で自分の鼻を触った。
「この鼻を……」
少し間を置く。
「もう少し高くできますか?」
さっきまで騒いでいた村が──
一瞬で静まり返った。
オークたちがざわつく。
「……は?」
「今なんて言った?」
「鼻を高く?」
須高は、エルフの顔をじっと観察した。
整いすぎているほど整った顔立ち。
人間なら、誰もが振り向く美貌だ。
野高も思わず小声で言う。
「先生……この人……十分綺麗じゃ……」
須高は腕を組み、ゆっくり言った。
「……確かに美人だ」
エルフの表情が少し明るくなる。
だが、須高は続けた。
「だが」
ピッと人差し指を上げる。
そして、エルフの鼻を指差した。
「鼻が一ミリ低い」
エルフの目が大きく輝いた。
「わ、わかるんですか!?」
オークたちは完全に理解できない顔だ。
「え?」
「どこが低い?」
「俺には同じに見えるぞ」
須高は指でエルフの鼻筋をなぞる。
「……ここだ」
「あと一ミリ高ければ、完璧なバランスになる」
エルフは感動したように言った。
「エルフの里でも誰も気づかなかったのに……!」
野高が小声で言う。
「先生……一ミリって……」
須高は首を横に振った。
「……美容とは、そういう世界だ」
エルフは嬉しそうに両手を合わせた。
「本当に可能なのですか!?」
須高は即答する。
「……この世に無理なことなどない」
その言葉にオークたちがざわめく。
「族長みたいに骨を折るのか!?」
「死ぬぞ!」
須高は首を振った。
「……違う」
そして力強く言った。
「これは美容整形だ」
エルフは首を傾げる。
「びよう……?」
須高は胸を張る。
「もっと美しくする医療だ」
エルフはしばらく考え──
そして真剣な顔で言った。
「お願いします!!」
須高は小さく笑った。
「ふっ……いいだろう」
「お前の希望、叶えてやろう」
そして野高を見る。
「次の手術だ」
オークたちがまた騒ぎ出す。
「また顔をいじるのか!?」
「人間の医者怖すぎる!」
「でも族長イケメンになった!」
須高はエルフを見た。
「……名前は?」
「リリア……です」
須高は頷く。
「リリア」
そして一言。
「君は──
世界一美しいエルフになる」
リリアの頬が、少し赤くなった。
そしてこの日。
異世界美容整形クリニックの二人目の患者が決まった。
患者第二号
エルフ リリア(鼻筋+1ミリ希望)




