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異世界美容整形クリニック  作者: ルーツ


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25/26

ope25 毒は毒で制す。

ある日の夜。


異世界美容整形クリニックは、本日の診察を終えていた。


オークたちの姿もなく、院内は静まり返っている。


野高が棚を拭きながら言った。


「先生、今日は珍しく平和でしたね」


須高は椅子に深く腰掛けたまま、短く答える。


「……嵐の前触れだ」


その直後だった。


──コン、コン。


夜の静寂を裂く、控えめなノック音。


野高が振り返る。


「え、こんな時間に……?」


扉を開ける。


そこに立っていたのは──黒いローブに身を包んだ一団。


そして、その中央。


見覚えのある顔。


「……セリスさん?」


ローブが外される。


現れたのは、王国調査官セリス。


だがその目は、いつもよりわずかに緊張している。


「……入れてくれ」


野高はすぐに道を開けた。


須高は視線だけを向ける。


「……患者か」


セリスは首を横に振る。


「今日は違う」


そして、静かに一歩下がる。


「この方だ」


奥から、一人の少女が前へ出る。


フードが外れる。


長い銀髪が揺れた。


整った顔立ち。


だが──どこか影がある。


野高が息を呑む。


「……まさか」


セリスが告げる。


「王女殿下だ」


空気が張り詰めた。


音が消える。


須高は変わらない。


ただ一言。


「……座れ」


王女はゆっくりと椅子に腰を下ろす。


指先が震えている。


須高は観察する。


顔。


姿勢。


そして──脚。


わずかな沈黙のあと。


「……悩みは」


王女は目を伏せた。


迷い。


だがやがて、口を開く。


「……足です」


野高が小さく驚く。


「足……ですか?」


王女は続ける。


「舞踏会で……お声をかけていただくのですが」


「ドレスになると……脚が」


言葉が詰まる。


セリスが補足する。


「王宮は広い。歩く距離も多い」


王女は小さく頷いた。


「……太く見えるのです」


「見られるのが……怖い」


静寂。


須高の視線が、王女の脚を正確に捉える。


そして結論。


「……脂肪ではない」


野高が反応する。


「え?」


須高は言い切る。


「……筋肉だ」


王女が顔を上げる。


「……筋肉?」


須高は頷く。


「……使い方が硬い。張っている。だから太く見える」


セリスが腕を組む。


「……治るのか?」


須高は一言。


「……可能だ」


そして振り返る。


「……野高くん」


「はい」


須高は告げる。


「……痩身エステ」


一拍置いて──


「……そしてボトックス注射だ」


─────────


第一段階:痩身エステ


裏庭。


夜風の中、訓練が始まる。


「いち!に!さん!」


野高の声が響く。


王女が必死に脚を動かす。


「はあ……はあ……!」


動きはぎこちない。だが確実に変わっていく。


須高が遠くから見ている。


「……力みすぎだ」


野高が優しく言う。


「力を抜いて、流す感じです」


何度も繰り返す。


脚の使い方。


重心。


歩き方。


そして──数日後。


第二段階:変化


王女が鏡の前に立つ。


脚のラインが変わっていた。


張りが取れ、滑らかな曲線。


野高が微笑む。


「すごく綺麗です」


王女が驚く。


「……軽いです、歩きやすい……」


須高は頷く。


「……準備はできた」


第三段階:ボトックス注射


手術室。


静かな緊張。


王女が横になる。


「少しだけ、チクッとします」


野高が言う。


王女は目を閉じた。


「……大丈夫です」


須高が確認する。


筋肉の位置。


量。


深さ。


そして──注射。


最小限。


的確に。


数分で終わる。


「……終わりだ」


王女が目を開ける。


「もう……ですか?」


須高は短く言う。


「……明日だ」


──────────


翌日、王女が再び訪れる。


歩き方が変わっていた。


軽く。


しなやかに。


鏡の前に立つ。


そして──固まる。


「……細い」


脚はすっきりとし、無駄な張りが消えていた。


自然で、美しいライン。


セリスが目を見開く。


「……ここまで変わるのか」


野高が笑う。


「努力と技術です」


王女はそっと脚に触れる。


「……これが」


小さく呟く。


「私の脚……?」


須高は腕を組む。


そして一言。


「……パーフェクトだ」


帰り際。


王女は深く頭を下げる。


「ありがとうございました」


その表情には、もう影はなかった。


セリスが静かに言う。


「この件は極秘だ」


野高が頷く。


「もちろんです」


王女は振り返る。


そして、自然に笑った。


「……舞踏会、楽しみです」


須高はカルテを書く。


患者──王女

(痩身エステ・ボトックス)


そして一言。


「……次」


こうして


異世界美容整形クリニックはついに、“王女の美すら完成させる場所”となったのだった。

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