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異世界美容整形クリニック  作者: ルーツ


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24/26

ope24 美容は終わりがない。

それから数週間後。


異世界美容整形クリニックは、以前にも増して忙しくなっていた。


エルフ、オーク、ゴブリン、そして──人間。


野高がカルテを見ながら言う。


「完全に広まりましたね……」


須高は淡々と答える。


「……患者が増えただけだ」


その時だった。


入口が、静かに開いた。


ギィ……


騒がしい院内に、すっと冷たい空気が流れ込む。


オークたちが振り向く。


そして──ざわついた。


「……あの人」


「前に来た……」


そこに立っていたのは


王国調査官セリスだった。


だが前とは違う。


整えられた目元。


洗練された雰囲気。


以前よりも、明らかに美しい。


野高が少し嬉しそうに言う。


「セリスさん」


セリスは軽く頷いた。


「……来たぞ」


須高は椅子に座ったまま言う。


「……患者か」


セリスは少しだけ間を置いた。


そして言った。


「そうだ」


オークたちがざわつく。


「また来たぞ!」


「王国の偉い人なのに!」


セリスは椅子に座る。


そして──珍しく、少しだけ言いにくそうに言った。


「……あの手術の後」


須高は黙って聞く。


「周囲の反応が変わった」


野高が微笑む。


「ですよね」


セリスは続けた。


「警戒はされる。だが……話しかけられることが増えた」


一瞬、言葉を選ぶ。


「……悪くない」


須高は短く答える。


「……そうだろう」


セリスは須高を見る。


「だが」


須高が聞く。


「……何だ」


セリスは、自分の目元に触れた。


「左右で、わずかに違和感がある」


野高が少し驚く。


「えっ……?」


須高は立ち上がった。


そしてセリスの顔をゆっくりと覗き込む。


数秒。


沈黙。


そして言った。


「……0.5ミリだ」


野高が思わず吹き出しそうになる。


「またミリ単位……」


セリスの目がわずかに見開く。


「やはりか」


須高は言った。


「……左がわずかに高い。誤差だ。……だが気になるなら──」


一言。


「……直す」


セリスは迷わなかった。


「頼む」


───────────


その日。


再び手術台に横たわるセリス。


オークたちがひそひそ話す。


「王国の人、また顔いじってる……」


「金持ちはすげえな……」


野高が準備する。


「今回は微調整ですね」


須高は言う。


「……最も難しい。完璧に近いものを、さらに整える」


セリスが小さく言う。


「任せる」


「……野高くん、麻酔」


「はい」


そして、極小の処置が始まる。


ほんのわずか。


だが、確実に。


左右差を消す。


ラインを揃える。


“違和感”をゼロにする。


数十分後。


須高は言った。


「……終わりだ」


野高は鏡を差し出す。


セリスがゆっくり見る。


そして──固まった。


静かに息を吐く。


「……完璧だ」


野高が笑う。


「やっぱり分かるんですね」


セリスは小さく頷く。


「違和感がない……自然だ」


須高は腕を組む。


「……当然だ」


セリスは立ち上がる。


そして須高を見る。


少しだけ間を置く。


「……不思議だな」


須高は無言。


セリスは続ける。


「顔が変わっただけで、世界の見え方が変わる」


野高が静かに聞いている。


セリスは言った。


「……だが」


ほんの少しだけ、口元が緩む。


「悪くない」


須高は短く答える。


「……そういう医療だ」


──帰り際。


セリスは扉の前で立ち止まる。


そして、振り返らずに言った。


「……また来る」


野高が笑う。


「いつでもどうぞ」


須高は椅子に座りながら言う。


「……次はどこだ」


セリスは少しだけ考えた。


そして言った。


「……足の太さが気になる」


扉が閉まる。


静寂。


オークたちが一斉に騒ぐ。


「常連じゃねえか!」


「王国の人がリピーター!」


野高が笑う。


「すごいですね……」


須高はカルテに書く。


患者番号──王国調査官セリス

(二重微調整・左右差修正)


そして一言。


「……次」


─────────


こうして


異世界美容整形クリニックにはついに“王国の常連患者”が誕生したのだった。

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