ope22 騎士団来襲。
ドラゴン来院から数日後。
オークの村には──連日、行列。
だが、妙な静けさがあった。
野高が窓の外を見ながら言う。
「最近……視線を感じませんか?」
須高はカルテを書きながら答える。
「……気のせいだ」
その時だった。
村の入口から、硬い声が響いた。
「王国騎士団だ!!」
オークたちが一斉に振り向く。
「騎士団!?」
「なんでこんな所に!?」
現れたのは──白銀の鎧を纏った兵士たち。
そしてその中央に、一人の女性が立っていた。
長い金髪。
鋭い目つき。
鍛えて上げられた身体。
無駄のない動き。
野高が小声で言う。
「……只者じゃないですね」
女性は名乗った。
「私は王国調査官、セリス」
オークたちがざわつく。
「調査官!?」
「やばい人来たぞ!」
セリスは周囲を見渡し、言った。
「ここに“奇妙な医者”がいると聞いた」
須高は椅子から立ち上がる。
「……俺だ」
騎士たちが一斉に警戒する。
「人間だと……?」
セリスは須高を見つめた。
数秒。
沈黙。
そして言った。
「……お前がか?ドラゴンを治したという医者は」
野高が小さく息を呑む。
須高は答えた。
「……そうだ」
オークたちがざわつく。
「言った!」
「正直すぎる!」
セリスは一歩前に出る。
「報告では信じがたい内容だった。
オーク、エルフ、魔族……それに勇者御一行。
さらにはドラゴンまで。
本当に治療しているのか」
須高は腕を組んだ。
「……見ればわかる」
セリスは言った。
「では確認させてもらう」
その瞬間。一人の騎士が前に出た。
兜を外す。
そこには──大きく歪んだ顔。
古い傷跡。
左右非対称の顎。
野高が小さく言う。
「これは……」
騎士が言った。
「戦でやられた、治るなら、治してみろ」
空気が張り詰める。
オークたちも息を呑む。
セリスが言う。
「これが調査だ」
須高は迷わなかった。
「……いいだろう」
そして一言。
「座れ」
─────────
手術が始まった。
騎士団が見守る中。須高はいつも通りだった。
傷の状態を確認する。
骨格のズレを把握する。
野高が言う。
「麻酔、いきます」
騎士たちがざわつく。
「何だそれは」
数秒後。
騎士が言う。
「……痛みがない?」
セリスの目がわずかに揺れる。
須高はメスを入れる。
慎重に。
確実に。
歪んだ骨を整える。
ズレを戻す。
皮膚を調整する。
時間が流れる。
そして──須高は言った。
「……終わりだ」
野高は鏡が差し出す。
騎士がゆっくりと見る。
そして──固まる。
「……俺の顔が」
そこにあったのは
戦傷の面影を残しながらも整った顔。
誇りを感じさせる顔立ち。
騎士は震える声で言った。
「戻っている……」
周囲がざわめく。
「本当だ……」
「別人だ……」
セリスが一歩前に出る。
騎士の顔をじっと見る。
そして──静かに言った。
「……完璧だ」
そんなセリスを須高は少しだけ目を細める。
セリスは須高を見る。
その目には、疑いはなかった。
「理解した、あなたは本物だ」
騎士たちがざわめく。
「認めた……」
セリスは続けた。
「王国はあなたを危険視している」
野高が緊張する。
しかしセリスは言った。
「だが同時に必要としている」
須高は聞く。
「……何の話だ」
セリスは一歩近づく。
「王都に来てほしい。王族の治療だ」
オークたちが騒ぐ。
「王族!?」
「やばいぞ!」
須高は即答しなかった。
しばらく沈黙。
そして──言った。
「……断る」
騎士たちが一斉にざわつく。
「なっ!?」
セリスの目が細くなる。
「理由は」
須高は言った。
「ここが病院だ。来たいなら来い」
数秒後。
セリスは、ふっと笑った。
「……なるほど、噂通りだ」
そして振り返る。
「撤収するぞ」
騎士たちが驚く。
「いいのですか!?」
セリスは言った。
「無理に連れてくる医者ではない」
去り際。
セリスは一度だけ振り返る。
「いずれまた来る」
その時、須高は一言。
「……待て」




