ope21 空の王者は規格外。
勇者パーティーは笑顔で去った。
その時だった。
──ドン……
地面が揺れた。
オークたちが顔を上げる。
「……今の何だ?」
──ドン……ドン……
重い振動。空気が震える。
野高が外を見る。
そして、固まった。
「先生……」
須高は椅子に座ったまま言う。
「……どうした野高くん」
野高は震えた声で言った。
「……来てます」
「……何がだ」
野高はゆっくり振り向く。
「……ドラゴンです」
次の瞬間。
影が落ちた。
巨大な翼。
圧倒的な存在感。
空からゆっくりと降りてくる──ドラゴン。
オークたちがパニックになる。
「逃げろ!!」
「焼かれるぞ!!」
「村が終わる!!」
しかしドラゴンが暴れる事はなかった。
静かに着地する。
ズンッ。
土煙が舞う。
そして低い声で言った。
「……医者はいるか」
須高は立ち上がり、外へ出る。
オークたちが止める。
「先生やめろ!」
「死ぬぞ!」
だが須高は無視した。
ドラゴンの前に立つ。
見上げる。
「……俺だ」
ドラゴンの巨大な目が須高を見下ろす。
数秒の沈黙。
そして──ドラゴンは言った。
「顔を治してほしい」
オークたちが固まる。
「え?」
須高は聞く。
「……症状は」
ドラゴンは少し苛立ったように言う。
「炎を吐いた時に失敗した」
野高が小声で言う。
「事故ってますね……」
ドラゴンの顔の一部が歪んでいた。
鱗が崩れ、片側だけ膨らんでいる。
須高はじっと観察した。
そして言った。
「骨格の歪み」
「鱗の損傷」
「軟部組織の損傷」
ドラゴンが目を細める。
「治せるか」
須高は即答した。
「治せる」
オークたちがざわつく。
「ドラゴン相手に言ったぞ……」
野高が小声で言う。
「先生……サイズが……」
須高は言った。
「……問題ない」
そして振り返る。
「……手術台を拡張する」
ドワーフたちが叫ぶ。
「任せろ!!」
その日。クリニックの裏庭に、巨大手術台が作られた。
────────
数時間後。
ドラゴンが横たわる。まるで山のようだった。
野高が言う。
「先生、麻酔いきます」
須高が頷く。
「スライム麻酔、増量」
巨大な注射をドラゴンに打ち込む。
数秒後。
ドラゴンの目がゆっくり閉じた。
「……効いた」
オークたちが歓声を上げる。
「ドラゴンが寝た!」
「すげえ!!」
須高はメスを持つ。
「……始める」
手術が始まった。
鱗を丁寧に剥がす。
損傷した部分を整える。
歪んだ骨格を修正する。
ゴキッ。
ズレを戻す。
野高が言う。
「位置、正常です」
須高は頷く。
「……よし」
さらに鱗を整え、再配置する。
左右のバランスを調整。
完璧なラインへ。
数時間後。
須高は言った。
「……終わりだ」
ドラゴンの目が開くき、ゆっくりと起き上がる。
周囲が静まり返る。
ドラゴンは自分の顔を水面に映した。
そして──ドラゴンの目が見開いた。
沈黙。
数秒後。
低く呟く。
「……美しい」
オークたちがざわめく。
「ドラゴンが美って言った!」
ドラゴンは遠くを見た。
「炎」
口を開く。
ゴオオオオッ!!
美しく一直線に伸びる炎。
先ほどまでの不安定さは感じられない。
完璧な放射。
野高が言う。
「機能も戻ってます!」
須高は腕を組んだ。
「……当然だ」
そして一言。
「パーフェクトだ」
ドラゴンは満足そうに頷いた。
「礼を言う」
そして翼を広げる。
「この借りは必ず返す」
飛び立つ直前。ドラゴンは言った。
「我の名はヴァルグリム」
「覚えておけ」
バサァッ!!
巨大な風と共に、空へと消えていった。
静寂。
そして次の瞬間。
オーク達は大歓声。
「ドラゴン治した!!」
「世界最強の患者だろ!!」
「この病院やばすぎる!!」
野高は笑った。
「先生……ついにドラゴンまで」
須高は椅子に座りながら言う。
「……患者の種類は関係ない」
そしてカルテに書いた。
患者第十五号
ドラゴン・ヴァルグリム
(顔面損傷修復+審美調整)
その時だった。
空から、何かが落ちてきた。
ドサッ。
巨大な宝石の山。
オークたちが叫ぶ。
「報酬だ!!」
野高が笑う。
「桁が違いますね……」
須高は一瞥だけした。
「……次の患者は?」




