ope19 世界平和は二の次。
魔王が帰ってから数日後。
オークの村は、いつも通り平和だった。
オークたちは畑を耕し、ゴブリンはクリニックの掃除をしている。
野高はカルテを整理していた。
「最近すごい患者ばかりですね」
須高は椅子に座りながら言う。
「……患者は患者だ」
その時だった。
村の入口から、騒ぎ声が聞こえた。
「止まれ!」
「ここはオークの村だぞ!」
オークたちが慌てている。
次の瞬間──四人の人影が村に入ってきた。
輝く鎧。
巨大な剣。
白いローブ。
そして長い杖。
オークたちがざわめく。
「人間の戦士だ……」
「強そうだぞ……」
野高が外を見る。そして目を丸くした。
「先生……勇者パーティーです」
先頭にいた青年が言った。
「ここに医者がいると聞いた」
須高は腕を組んだ。
「……私だ」
勇者が須高を見る。
「あなたが?」
「……そうだ」
勇者は少し驚いた顔をした。
「もっと年寄りだと思っていた」
須高は答えない。
「……それで何かあるのか?」
勇者パーティーが少しざわつく。
戦士が言う。
「勇者に対して失礼だろ!?」
しかし勇者は真剣だった。
「相談がある」
須高は椅子を指した。
「……座れ」
勇者は座り、言った。
「魔王と戦う準備をしている」
オークたちがざわめく。
「魔王!?」
「でも、ついこの前来てたぞ……」
しかし勇者は続けた。
「だが最近、問題がある」
須高は聞く。
「……何だ」
勇者は少し言いづらそうに言った。
「俺の顔が……」
一瞬沈黙。
「地味だ」
クリニックが静まり返る。
野高が聞き返す。
「地味?」
勇者は真剣だった。
「勇者なのに威厳がない。そう村人に言われたんだ」
少し悔しそうに言う。
「『普通の人みたい』と」
後ろの僧侶が小声で言う。
「実際ちょっと普通ですよね……」
勇者が振り返る。
「お前は黙れ!」
須高は勇者の顔を観察した。
しばらく見てから言った。
「……確かに地味だ」
勇者が固まる。
「……普通だ」
戦士が笑いそうになる。
「ぷっ」
勇者は少しショックを受けていた。
「やっぱりか……」
須高は腕を組む。
「……だが」
勇者が顔を上げる。
「……治せる」
勇者が身を乗り出す。
「本当か!?」
須高は言った。
「顎を少し整える」
「目元を強くする」
「鼻筋を通す」
「フルコースすればお前は英雄の顔になる」
勇者の目が輝いた。
「頼む!」
野高が準備を始める。
その時だった。
後ろにいた魔法使いが言った。
「……ついでに私も」
全員が振り向く。
魔法使いは頬を触った。
「頬骨が少し気になってて……」
僧侶も言う。
「私は鼻を少し高く……」
戦士が言う。
「俺は腹筋をもっと割りたい」
野高が苦笑する。
「先生……」
須高はため息をついた。
「……全員患者か」
勇者が笑う。
「勇者パーティー、全員だ」
須高は立ち上がった。
「……順番だ」
そして言った。
「……最初の患者は」
勇者を見る。
「……勇者、お前だ」
こうして──異世界美容整形クリニックにはついに勇者パーティーまで訪れるようになったのだった




