ope17 魔王様も◯◯◯◯に
その日。
異世界美容整形クリニックの中は、異様な空気だった。
理由は簡単。
手術台の上にいるのが──魔王だからだ。
オークたちは入口からこっそり覗いている。
「本当にやるのか……」
「魔王の顔を切るのか……」
「失敗したら世界終わるぞ……」
しかし須高は、いつも通りだった。
腕を組み、魔王の顔を観察する。
「……頬の脂肪が多い」
魔王は少し不満そうだ。
「そんなにあるか?」
須高は即答した。
「ある」
野高が苦笑する。
「先生、相手は魔王ですよ……」
須高は言った。
「……患者だ」
魔王は小さく笑った。
「ふっ、気に入った」
そして手術台に横になる。
「好きにやれ」
野高が準備を進める。
「先生、消毒完了しました」
須高はドワーフ製のメスを手に取った。
銀色の刃が光る。
オークたちが震える。
「始まるぞ……」
須高は言った。
「小顔手術開始」
スッ──小さな切開。
頬の内側から、余分な脂肪を取り除く。
野高が言う。
「脂肪確認」
須高は頷く。
「よし」
慎重に。
左右のバランスを整える。
顎のラインも確認する。
「……ここだ」
須高は指で骨格を調整した。
ゴキッ。
小さな音。
オークたちが青ざめる。
「魔王の骨鳴った!」
しかし魔王はまったく動かない。
むしろ楽しそうだった。
「面白い医療だ」
数十分後。
須高は手袋を外した。
「……終わりだ」
野高が鏡を持ってくる。
魔王がゆっくり起き上がる。
そして自分の顔を見る。
沈黙。
クリニックの中が静まり返る。
オークたちも息を止めていた。
そして──魔王の目が見開いた。
「……これは」
以前の丸い顔ではない。
シャープな顎。
引き締まった頬。
威厳のある顔立ち。
まるで──伝説の魔王の肖像画のような顔。
魔王はゆっくり言った。
「俺の顔が……強そうだ」
野高が笑う。
「すごく似合ってます」
須高は腕を組んだ。
そしていつもの一言。
「……パーフェクトだ」
魔王は鏡を見ながら笑った。
「これはいい」
そして立ち上がる。
マントを羽織る。
その姿は──以前よりも、はるかに威圧感があった。
外で見ていたオークたちが震える。
「魔王……」
「めちゃくちゃイケメンになってる……」
魔王は須高を見た。
そして言った。
「約束だ。魔王城に来い」
須高は聞く。
「……何のためだ」
魔王は笑った。
「美容クリニック支店を作れ」
野高が驚く。
「魔王城に!?」
魔王は続けた。
「魔族も美容に悩んでいる」
「需要はあるぞ」
須高は少し考えた。
そして小さく笑った。
「……断る」
魔王の眉が少し上がる。
須高は続けた。
「俺はここにいる」
「何かあれば──ここに来い」
意外な答えに、魔王はしばらく黙った。
そして──笑った。
「ふっふっふ……」
「そうか」
「ならいい」
そして振り返る。
「気に入ったぞ、人間」
黒いマントが翻る。
魔王はそのまま、闇の中へと消えていった。
須高は腕を組んだまま呟く。
「……騒がしい患者だったな」
野高は苦笑した。
こうして──異世界美容整形クリニックはついに魔王軍にまで知られる存在となったのだった。




