ope16 世界征服は二の次。
数日後。
オークの村は、妙な緊張に包まれていた。
空が暗い。
風も止まっている。
オークたちがざわめく。
「……なんだ?」
「嫌な感じがする」
その時──村の入口に、黒い影が現れた。
長い黒いローブ。
赤い瞳。
圧倒的な威圧感。
オークたちは一瞬で理解した。
「……まさか」
「魔族……」
その影は、ゆっくりとクリニックの前まで歩いてきた。
そして扉をノックする。
コンコン。
中から野高が顔を出す。
「はい?」
影は静かに言った。
「医者はいるか」
須高が奥から出てくる。
腕を組んで相手を見る。
そして一言。
「……患者か?」
影はフードを外した。
そこに現れたのは──魔王だった。
オークたちが悲鳴を上げる。
「魔王!!」
「終わった!!」
「村が滅ぶ!!」
しかし魔王は、少し困った顔をしていた。
須高はまったく動じない。
「……どうした」
魔王は少しだけ恥ずかしそうに言った。
「実は……」
言いにくそうに続ける。
「幹部のドラキュラが、ここを勧めてきた」
須高は頷いた。
「……あいつか」
魔王はため息をついた。
「最近、鏡を見て思った。俺の顔は……」
少し間を置く。
「丸い」
クリニックが静まり返る。
野高が聞き返す。
「丸い……?」
魔王は頬を触った。
「魔王として威厳が必要だ。だがこの顔では少し……」
言いづらそうに言う。
「可愛いと言われる」
オークたちが小声でざわめく。
「魔王かわいいのか……」
須高は腕を組んだ。
そして魔王の顔をじっと観察する。
顎のライン。
頬。
骨格。
しばらくして言った。
「……原因は脂肪だ」
魔王が目を見開く。
「脂肪!?」
須高は頷いた。
「頬の脂肪が多い」
「それで顔が丸く見える」
野高が言う。
「小顔整形ですね」
魔王が聞く。
「治るのか?」
須高は即答した。
「治る」
そして続ける。
「頬の脂肪を取る。
顎のラインを整える。
威厳のある顔になる」
魔王は少し考えた。
そして真剣な顔で言った。
「頼む」
須高は椅子に座った。
「……だが」
魔王が聞く。
「なんだ?」
須高は言った。
「魔王だからといって特別扱いはしない。患者は患者だ」
魔王は少し驚いた。
そして──笑った。
「面白い人間だ!気に入った!」
須高は立ち上がる。
「……野高くん」
「はい」
「…….手術準備だ」
オークたちはまだ混乱していた。
「魔王が整形!?」
「この村すごすぎる!」
魔王は手術台に座る。
そして小さく呟いた。
「……もし成功したら」
須高を見る。
「魔王城に支店を作らないか?」
野高が驚く。
「魔王城にクリニック!?」
須高は鼻で笑った。
「……考えておこう」
こうして
異世界美容整形クリニックは、ついに魔王本人の患者を迎えることになった。
患者第十号。
魔王(小顔整形)




