ope.10 "続"髭は威厳の象徴。
更にそれから──二ヶ月後。
異世界美容整形クリニックの前に、大きな影が現れた。
ドシン。
ドシン。
重い足音。
オークが振り向く。
「……ドワーフだ」
そこにいたのは──
ドワーフのガルドだった。
しかし、以前とはどこか違う。
野高が気づく。
「先生……あの方……」
須高は腕を組みながら言った。
「……来たか」
ガルドはゆっくりとクリニックの中に入った。
そして須高の前に立つ。
「医者」
低い声。
「約束の三ヶ月だ」
須高は椅子に座ったまま言う。
「……鏡を見ろ」
野高が鏡を渡した。
ガルドは自分の顔を見た。
そして──固まった。
「……こ、これは」
鏡に映る自分の顔。
そこには──見事に生えそろったヒゲ。
しかも以前より、太くて濃い。
中央の薄かった部分も、完全に埋まっていた。
ガルドの手が震える。
「俺の……ヒゲが……」
オークたちも覗き込む。
「おお!!」
「すげえ!!」
「ヒゲ増えてる!!」
ガルドはヒゲを撫でた。
ふっさふさだ。
そして次の瞬間──ドンッ!!
ガルドが机に拳を置いた。
オークたちがびくっとする。
だが、ガルドは叫んだ。
「パーフェクトだ!!」
クリニックに声が響く。
「俺のヒゲは……ドワーフ王国でも一番だ!!」
須高は腕を組んだ。
「……当然だ。俺がやった」
ガルドは須高をじっと見た。
そして深く頭を下げた。
「ドワーフにとってヒゲは誇りだ。それを取り戻してくれた」
須高は軽く手を振った。
「気にするな」
その時だった。
ガルドが言った。
「実はな……この話、王国に伝えた」
須高の眉が少し動く。
「……王国?」
ガルドは頷く。
「ドワーフ王国だ」
オークたちがざわつく。
「王国!?」
「そんなでかい国があるのか!?」
ガルドは続けた。
「王国の鍛冶王がな、お前に会いたがっている」
野高が驚く。
「鍛冶王!?」
ガルドはヒゲを撫でながら笑った。
「どうやら──王もヒゲで悩んでいるらしい」
クリニックの中が一瞬静まる。
そして須高は言った。
「……いいだろう、連れてこい」
ガルドは笑った。
「あはは!そう言うと思ったぞ!」
須高は椅子にもたれた。
そして小さく呟く。
「……次は王族の患者か」
こうして──
異世界美容整形クリニックにはついに、王国レベルの患者が訪れようとしていた。
患者第四号。
ドワーフ ガルド(ヒゲ植毛)
そして──
次の患者。
ドワーフ王国 鍛冶王(ヒゲ相談)




