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偶然その道を通っただけですわ

作者: とと
掲載日:2026/02/25

読んでいただきありがとうございます。


「そうですか、急な体調不良では仕方がありませんね。風邪に良い煎じ茶がありますから、持って行っていただけるかしら、準備するから少し待っていて」


「畏まりました」


今日は、婚約者であるマテオ様と、お買い物デートに出かけるはずだったのですが、マテオ様が急な熱と咳で、お出かけはキャンセルになりました。


「ねえ ララ。マテオ様とのお出かけは無しになったけど、私ね買いたいものがあるの、一緒に出掛けてもらってもいいかしら」


「はい。お嬢様、旦那様のお誕生日プレゼントですか?」


「ええ。マテオ様が、婿に入る自分も選びたいと言うので、今日のお買い物まで買わずにいたのだけど……。お父様の誕生日は明後日ですもの」


「さっそく出かける、準備をしますね」


ララと馬車に乗り、商店街に向かう道を進んでいると、牛が街道の真ん中に居座り、隣に立つおじさんが困り果てていた。


「やーすみません。牛が言うこと聞かなくなっちまって、びくともしないんで、当分動いてくれそうにないんです」


おじさんが、申し訳なさそうに頭を下げる。


「ララ。少し回り道だけど、右の道に進みましょう」


「はい。お嬢様」


右の道に入り少し進むと、今度は豪華な馬車が、路肩に脱輪して斜めになっている。


「お嬢様、あれはクロセル侯爵家の馬車ですね。バラと剣の家紋です」


「まあ。お困りでしょうね、声をかけましょう」


馬車を下り侯爵家の馬車に近づくと、馬車の陰からアメリア様が顔をのぞかせた。


お話しした事は無いけれど、アメリア様の美しさは、学院内で有名だ。


第三王子殿下との婚約が、もうすぐ発表されるのではないかと言われている。


私はドレスを少し持ち上げ礼を取る。


「下位の者から、突然にお声掛けしてすみません。クロセル侯爵令嬢様とお見受けいたします。私、アルバン伯爵家の娘、ルイーズと申します。お困りでしたら、私でないかお役に立てることはありますでしょうか?」


「まあ。声をかけてくれてありがとう。ルイーズ様の事は、学院でお見掛けしたことがあり、知っていますわ♪商店街にお買い物に行こうと思ったら、こんなところで脱輪してしまって困っていたの」


「私もちょうど商店街に向かうところです、伯爵家の馬車で手狭ではありますが、よろしければ一緒に行きませんか?」


「わあ嬉しい。母へのプレゼントを選ぶのに、相談に乗ってくれる人が欲しかったの、一緒に選んでいただけると嬉しいわ」


馬車の対応は御者に任せ、アメリア様とお付きの侍女を乗せ、商店街へと向う。


「私も父の誕生日プレゼントを、選ぼうと思ってきたんです。侯爵夫人へはどのような贈り物ですか?」


「まあ私も母の誕生日プレゼントよ、明後日が誕生日なの」


「まあ父と一緒です」


「あら素敵、これも何かのご縁ね、今まで学年も違って、話したことが無かったけれど、仲良くしてもらえると嬉しいわ。私のことはアメリアと呼んで、私もルイーズとお呼びしてもいいかしら」


「もちろん私のことは、ルイーズとお呼びください。私などが、お名前をお呼びしても、本当にいいのでしょうか?」


「もちろんいいわ」


「では、よろしくお願いします、アメリア様」


馬車の中は会話が弾み、アメリア様のいろんなお話を聞くことが出来た。


商店街でも、父と公爵夫人への誕生日プレゼントを相談しながら選び、自分達のドレスや、アクセサリーも選んで、いろいろなお店をめぐり、兄しかいない私は、姉ができたようでとても楽しかった。


いっぱいお買い物をして疲れた私たちは、カフェでお茶をして帰ることになり、川が見渡せるテラス席に座り一息ついた。


「アメリア様。思わぬ事故で大変でしたが、こうしてお買い物を一緒にしていただき、私はとても楽しかったです。よかったら今日の記念に、これを受け取っていただけますか?安いもので恥ずかしいのですが、きれいな石だったので私と色違いに……。」


私は、アメリア様に小さな包みを差し出した。


「わあ。うれしい、開けてもいいかしら?」


「はい」


アメリア様は包みを開けて、ブレスレットを光にかざした。


「綺麗な青ね~。キラキラして綺麗。ありがとう」


「喜んでいただけて良かったです。見つけた時に、アメリア様の瞳の色みたいだと思って」


「私の瞳、こんなに綺麗かしら~。そういえは色違いって言ってたわね、ルイーズは何色にしたの?」


「私はこれを」


隣に並んでいた同じデザインで、私の瞳と同じ、ライトグリーンの石が付いたブレスレットだ。


「まあきれいなライトグリーン。まるでルイーズの瞳みたいね。ねえねえ。交換して、お互いの瞳の色を持たない。私、グリーンが好きなの」


「それにっしてもルイーズは、遠くから見ていた時も、きれいな令嬢だと思っていたけど、近くで見れば見るほどきれいでだわ~。そのつやのあるチャラメルブラウンの髪、若葉色の瞳。侯爵家はみんな黒髪じゃない、プラチナブロンドは奇麗だけど、なんだっか軽い感じがするし。だから少し明るめの、ルイーズのブラウンの髪にあこがれるわ~。なにより、あまりのかわいらしいお顔に同性の私も、食べちゃいたいくらいだもの」


「アメリア様のように美しい方に比べたら、私など足元にも及びません。今日は一緒にお買い物していただき、姉ができたような気持になり、嬉しくてついお揃いの物を買ってしまいました。良いのであれば、交換して、アメリア様の色を持たせてください」


「まあうれしい。本当に姉妹になって欲しいわ、私には、もうすでに結婚して、侯爵家を継いでいる兄のほかに、もう一人騎士団に兄がいるの~。20歳にもなるのに、いまだに婚約者も居なくて!ルイーズは婚約者が居るんだったわよね、残念だわ~」


「はい。今日も、本当はその婚約者と出かける予定でしたが、急に体調を崩したと使いの者が来て、一人で出かける事になりました。でもそのおかげで、アメリア様と、楽しい時間を過すことができました」


「あなたの婚約者は、ライド伯爵令息だったわよね、ルイーズ」


「はい」


急に声のトーンが落ち、なぜかアメリア様は、私を通り越してさらに遠くに視線を向けている。


振り返ると川のほとりに、小柄なかわいらしい令嬢を連れた、マテオ様が居た。


「マ マテオ様」


驚いて固まる私とは反対に、アメリア様は顔を真っ赤にして怒り出す。


「ライド伯爵令息!体調が悪くなったのではなくて!」


アメリア様の声は、そんなに大きな声では無いのに、遠くまで良く響き、カフェの中も外の通りを歩く人も、皆が私達を振り返る。


「な!ルイーズどうしてここに」


「体調の悪いライド伯爵令息こそなぜここに?隣の方は、アクト子爵家のご令嬢かしら? 婚約者との約束をキャンセルし、お二人で逢瀬を楽しんでいらっしゃるのかしら?」


アメリア様が、マテオ様を問い詰める。


「いやこれは、たまたま商店街で一緒になっただけだ、違うんだルイーズ」


「ライド伯爵令息様、今朝、我が家から送った煎じ茶を、受け取っていただけましたでしょうか?熱と咳によく効くお茶です」


「いやルイーズ、誤解しないでくれ……これは」


カフェのテラスに駆け寄り、弁明するマテオ様の裏切りに、めまいがしてよろめく。


アメリア様は、ふらつく私を支えながら、一歩前に出る。


「ライド伯爵令息、わたしのかわいいルイーズを悲しませたこと、クロルセ侯爵家が、全力で後悔させて差し上げますわ!さあ。ルイーズ、頭がお花畑と一緒にいると、バカが感染するから帰りましょう。そしてそのままアルバン伯爵に報告よ」


「待ってくれクロセル侯爵令嬢、いや誤解だ ルイーズ!ルイーズ!」


どこから現れたのか、アメリア様の護衛の方に、マテオ様は取り押さえられ、私の名前を連呼するマテオ様を残し、メリア様と伯爵家に戻った。


そのあとは嵐のような勢いで、アメリア様が父に詰め寄り、婚約はマテオ様の有責で破棄された。


高額な慰謝料を払うため、マテオ様ライド伯爵に鉱山に売られ、逢瀬のお相手だったアクト子爵令嬢も、修道院に入れられたらしい。


ライド伯爵も、アクト子爵も子供達を犠牲にしたが、あのカフェでの出来事は、アメリア様の宣言と共にすぐに社交界に広がり、クロセル侯爵を敵に回した家門として、肩身が狭い思いをしている。


そして私はと言うと、婚約破棄から数日後、アメリア様が二番目のお兄様である、レオン様を伴い伯爵家にやってきた。


「ルイーズ。元気にしてる?今日は、レオン兄様から発表があってまいりました」


レオン様は、グレーの正装に身を包み、大きなバラの花束を抱えている。


初めてお会いするが、アメリア様が、男性になったみたいに綺麗な顔立ちで、騎士様と聞いていたがすらっと細身で背が高く、黒い長髪を後ろでひとつに結んでいる。


あまりに美しい兄妹に、眼を奪われていると、レオン様が私の前で膝をついた。


「ルイーズ嬢。 私は10歳の時に参加した、王宮の茶会であなたに一目ぼれした。それいらいずっとお慕いしていました。どうか私とこれからの人生を、共に歩んでいただけないでしょうか」


直球な婚姻の申し込みに、心臓が高鳴る。


レオン様の真剣なまなざしに、耐えかねて周りを見回すと、アメリア様は両手の拳を握りしめて、前のめりに早く返事をしなさい!と言わんばかりのまなざし、アメリア様の後ろに控える、ララとアメリア様の侍女達も同じポーズ。


「ああの 突然の事で、何とお答えしていいか…………。まずはお互いを、知るところから始めさせていただいてもいいでしょうか?よろしくお願いします」


私も、レオン様と同じ目線の位置に腰を落とす。


数えきれないバラ花の向こうで、レオン様がにっこり笑った。


「こちれこそ よろしくおねがいします」


美丈夫とバラの攻撃!


「あーもう。ルイーズったら、そこは はい!結婚しますでしょ~。でも用心深いところも、さすが私の妹だわ。レオン兄様!後はお兄様の頑張り次第よ!」


アメリア様が、レオン様の肩をバチンと叩く。


「ああ。全力で頑張るよ」


「ひとまず作戦成功ね~! ルイーズが、本物の姉妹になる日も近いわ~」




✿ ✿ ✿



それから毎日レオン様は私に会いに来て、いっぱいお話をした。


私が10歳で婚約してしまい。


レオン様は、悲しみのどん底に落ちたこと、それでも私のことを思ってくれていて、婚約者を作らなかったこと、などなど。


正直に話してくれる、誠実なレオン様に、私の気持ちはあっという間に掴まれた。


ほどなく、正式にレオン様と私の婚約は結ばれた。


「ルイーズの隣に立つことが出来るなんて、アメリアには頭が上がらないよ」


そういって、レオン様は私の髪にキスを落とした。


あの日 偶然あの道を通って私は幸運でした。


偶然が重なり、新しい道が、こんな形で、開けていくのですわね♪


レオン様と、これから先の未来を描けくことが出来て、今はとても幸せです。



~ 終わり ~




アメリア様はどこから作戦をたてていたのでしょう。

( *´艸`)

皆さんどう思われますか?

初めから? 馬車の事故から? マテオの不貞を見つけてから?



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馬車でのお出かけを浮気者がキャンセルするであろうところろから馬車での立往生、一緒の買い物、丁度いい時間に丁度いいカフェで休むところまでお嬢様の掌コロコロコロリンですわね、きっと。 そりゃあ愛するお兄様…
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