第8話 新たな協力者
「え?」
結界を張ったのでは?と市香は思わず宏志をみた。
足音と共に現れたのは、市香もよく知る人だった。
「林田先生…」
現れた林田は市香と宏志のクラス担当。
最近市香は失敗した一次試験の結果でにらめっこした。
「えっと、これは、あの、違うんです…!」
勉強していないのがばれた。
林田には五行大学のことは言ってないので、林田からみればただのサボりだ。
「大丈夫ですよ、不二崎さん」
「そうそう。この結界は“みえない”人にはみえないけど、“みえる”人にはみえる」
市香は驚いた表情のまま林田をもう一度みる。
にこにこと笑っていた。怒っている気配はない。
「私は宏志様の部下ですよ、不二崎さん。彼と同じ陰陽師、とはいえ、どちらかというと“みえる”人を探す、というのが役割ですが」
「よく言うぜ。不二崎のこと気付いていなかったくせに」
「それはあなたもでしょう。そもそも、阿辺家の陰陽師が分からないものを私が分かるとお思いで?」
どこか林田は宏志に気を遣っているように見える。
「あんな普通に溶け込んで、大学受験も受ける予定のやつが“みえる”なんて思うかぁ!」
「…と、名家の阿辺様が言われるのであれば、私のような底辺陰陽師ではねぇ」
「そ、そんなに阿辺くんってすごいんですか?」
「そりゃあもう」
林田は嬉しそうに宏志の肩に肘を置いた。
「阿辺家の陰陽師ですから」
「へぇ…」
「で?」
宏志は気にする風もなく、林田を見上げた。
「準備できそうか?」
「任せてください」
林田が姿勢を正して市香を見た。
「私の仕事は対象者の保護ですから。もし不二崎さんが自分の意志でこちらにいくということであれば、お手伝いしますよ」
「あ…」
先ほどの宏志との会話で自分の意志を確認された。
林田はそれを待っていたのだと気付いた。
「母に…何をするんですか?」
「話をします」
林田はウインクして、微笑む。
「それが私の仕事ですから。あなたが出来ない話を大人としてします。基本的にはあなたの親御さんのように信じないことが多いので、そこは、こう、術でね」
人差し指をくるくると回している林田。
今までみたことのない一面を見た気がした。
「どうしますか?」
昨日の地獄のような時間を思い出した。
あの時間から逃げれるのであれば。
市香は静かに頷いた。




