第4話 大学案内
「も、申し訳ありませんでした宏志さま!」
「ほんとだな」
ある程度収まったところで市香を見送っていると、結界班が駆け寄ってくる。
宏志は眉間に皺を寄せて、睨みつける。
「まさか一般人が混じってるとは…」
「次から気をつけろ」
「はいい」
片手で携帯を取り出し、電話をかける。
「あ、せんせー?ちょっといいー?」
* * *
学校では、授業と言う名の自習時間を過ごす。
周りでは目指すべき過去問を解いたり、問題集を解いているが、市香は違う。
できるだけ一次試験の影響が少なく、二次試験の相性がいい、国公立を探していた。
失敗するかもしれない二次試験のことを心配しても仕方ない。
実現可能な残されていない中で、一発逆転を狙う。
「あれ?」
休み時間にざわつく教室。
皆の視線を追った先で、目が合う。
「阿辺くん…」
昨夜ぶりに見た顔がこちらを見ていて、しかも向かってきていた。
気まずくなって目をそらしてしまう。
ほとんど関わりのない人だったのに、感情が爆発してしまった。
今日はできれば関わりたくなかったのに。
「不二崎、ちょっといいか」
「え…」
気がつけば、市香の机の傍にたっていた。
「え、阿辺くんって受験組じゃないよね…」
「高卒が?不二崎さんに話しかけるの…?」
「もしかして、不二崎さんが一次失敗した噂って本当?」
根拠のない噂が周りで始まって、逃げたくなった。
勢いで立ち上がる。
「行きましょう」
阿辺について教室の外に出て、人の少ないところに連れて行かれる。
非常階段に入り、座るように促された。
「昨日ぶり」
「き、昨日はすいませんでした…」
誰もいなくなると、急にまた申し訳なさが再来して、萎縮してしまう。
「ん。ちょっとは落ち着いててよかった」
「周りの声は気にすんな」とか行ってくれるから、きっと優しい人なんだろう、と市香は思って見上げた。
宏志は立ち上がって、右手を組み、ぼそぼそと唱えている。
「結界を張ったから、普通の人は入ってこない」
「あ、ありがとう…」
唱え終わった宏志はそのまま市香の横に座る。
「で、志望校は決まったのか?」
「まだ…かな…」
かなりレベルを落として学部学科を選ばなければあるかもしれないと探している。
「なんというか…良いところを見つけても、お母さんが許してくれるかどうか…」
「昨日も思ったんだけど」
宏志は素直な気持ちで、悪意も期待も偏見もなく伝えてくれる。
それが市香には心地よく聞こえた。
「不二崎は、何のために大学にいくんだ?」
「え…何のために?」
「不二崎の言葉を聞くと…親のために行く大学を選んでいる気がして」
言葉に詰まってしまう。
どんな大学を見ても、母親が言っていた大学を決める基準を見てしまう。
伝統、場所、学費。
それが自分が大学を決める基準なのか、と言われると、母親の請け合いだ。
自分の中には常に母親がいて、何かを選ぼうと思うと母親がいってくる。
「って、そんなことを言いに来たんじゃない」
なんて返していいか、言葉が出てこない市香を気遣ったのか。
宏志は話題を変えて、何かを取り出した。
「これは俺の意志じゃない。そう言う決まりだから出してるんだ」




