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第1話 一次試験に失敗しました

暗くて狭いアパートの一室。

台所兼居間に置かれたテーブルに座る市香いちか亜弥子あやこ

目の前に置かれたのは市香の一次試験の結果。

市香はおずおずと母親の表情をうかがった。

予想通り、期待が全てすべり落ちた顔には、絶望があった。


「これは…市香、あなたどういうつもりなの…」

「ごめんなさい、お母さん」


先日行われた大学の一次試験。

公式の解答はでないものの、各所から集められた予想解答をもって自己採点した結果。

市香の結果は全体の正答率一割にとどまった。


「あなた…九割をとれる実力を持っていた…はずでしょう」

「…」

難関なんかん国公立に行くって…そう言ってたでしょう?」

「…はい」


実力が出せなかった。

その一言に尽きるのだが、市香自身も認めたくはなかった。

何度も受けてきた模擬試験は好成績で、高校の中でも上位にいたはずだった。

しかし、目の前に広げられた結果には、全国でも下位に自分の位置を示す黒ダイヤが記されている。


「こんな成績じゃ…行ける大学なんて…」

「明日から…行けるところを探そうと思います…」

「行けるところって…」


亜弥子が言わんとしているところは、市香にもなんとなくわかっていた。

こんな成績では、二次試験で取り返すことは困難だ。

どれだけ二次試験で相性がよかったとしても、この一次試験は不利すぎる。

少しのミスも許されない。

それに。

市香はテーブルの角に視線を逃がす。

自分の母 亜弥子は学歴主義者だ。


「私立とか浪人とか…そんなところに出せるお金はないのよ…お母さんは市香が国公立に行ってくれるっていうから、応援していたのに……」


亜弥子は昔から市香に国公立大学に行くように期待を込めていた。

進学校である公立高校を勧めたのも亜弥子だった。

そんな母を落胆させてしまった。


「明日…面談してくる…」

「…少し、考えさせて……」


女手一つで育ててくれ、好成績で喜んでいた母に、底なしの申し訳ない気持ちで市香は、広げていた結果をまとめた。


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