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ミュートのリズム

掲載日:2025/12/13

初投稿です。一話完結の短編です。よろしくお願いします。

昼休みの教室はにぎやかだ。

笑い声、椅子の音、誰かの名前。

それらが渦になって、空気を揺らす。

私は窓側の席で弁当を開く。


箸を進める速さを、少しだけ遅くする。

卵焼きが甘い。

思わず、口元がゆるむ。


背中のほうで声が弾む。

「誘ってあげるー?」

「えー」

名前は出ない。善意と、少しの茶化し。

わたしは、思わず右側に顔を傾け、耳に手を当てる。

微かに揺れる声をかわすように。

しっかり味わった卵焼きを飲み込む。


窓の外を見ると、空には羊雲が出ていた。

羊が一匹、羊が二匹…羊がたくさん。

眺めていると、ちょっとだけ気分がほぐれてくる。

外はきっと、気持ちいいのだろう。


放課後、制服のまま駅へ向かう。

歩く速さは、気分のまま。

イヤホンは左側だけ。好きなところだけリピートして聴く。

「雨はいつかやむさ」――この一節が、何度も頭の中で回る。


駅前のコンビニに入った。

選ぶ飲み物は、いつものやつ。

お気に入りは、つい繰り返してしまう。


帰宅したわたしは、自分の部屋で深く息を吐き、右耳の耳栓をそっと外した。

耳を澄ます。

トントン、トントン……

規則正しい音。

イヤホンでリピートしていたメロディと、完全に重なる拍子。

壁の向こうは、外壁のはずなのに。


耳に残る曲と、壁のリズムを重ねる。

わたしは、毎日この曲を聴き続けてきた。

この音をミュートするために。

この音が止まらない限り、明日も、明後日も、同じ曲を聴き続けなければならない。

お気に入りの曲として。

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