ラブレター
「学校」「キノコ」「裏山」「梨」「スイカ」
で五題噺
ピッ。
とスイカを改札機に押し当てて、そのまま昼時のあまり人のいない小さな駅を出る。
(うん、まだ残ってるな。面影)
昔は地方都市の、そのまた衛星都市だった故郷は、最近は新しい路面電車の開通の影響で再開発が進んでいるらしい。
しかし、元々寂れた駅の駅前はまだあまり変わっておらず、古くからある定食屋もまだ汚い暖簾を下げていた。
それをぼんやりと眺めていると、横合いからクラクションが鳴らされた。
見れば、1台の軽トラ。そこに顔なじみの姿があった。
「よっす、梨花」
近寄って声をかければ、ほどよく日に焼けた顔に笑顔が咲く。
山本梨花とは、幼稚園から始まった古い仲だ。高校卒業後、実家の果樹園で働いている。
「おっす、久しぶり。垢抜けたねぇ。最初気づかなかったよ」
対して、俺は卒業後に地元を離れ他県で暮らしていた。
梨花と一通り再会の挨拶をして、軽トラの助手席に乗る。
今日帰ってきたのは、小学校の同窓会兼タイムカプセルを開けるためだった。
※
二人でそのまま学校に向かい、校庭に入る。するとそこには、男女6人の同級生が待っていた。
この6人と俺と梨花、計8人が同じ年代の卒業生『全員』である。
母校はとっくに廃校になっている。単純に生徒数の減少だ。
俺達が卒業した時は全校生徒が30人を下回っていて、一つのクラスに二学年が同時に授業を受けているような状態だった。
校舎を見れば、廃校から10年も経ってないのに随分色あせたように見える。
8人で再会の挨拶を交わしつつ、校庭から学校の裏山へと歩く。
あの先生が好きだった嫌いだったとか、あそことあそこに秘密基地を作ったとか、毒キノコが見つかって騒ぎなったとか、冗談でブタクサを思いっきり吸い込んでひどい花粉症になったとか、そんな思い出話に花を咲かせる。
小学生でも問題なく越えられる裏山を越えて、その先のため池との中間。そこから少し外れた所に、タイムカプセルを埋めた場所に着く。
梨花の軽トラの荷台から持ってきたスコップで男女分け隔てなく地面を掘る。
途中、深く埋めすぎだろ! や、小学生の体力半端なかったんだね! って笑い合い、とうとう金属の箱が姿を現した。
汚れてはいるが、壊れた箇所はない。
蓋を開ければ、そこには宝物があった。
歓声とともに中身を物色して、懐かしんだり、恥ずかしがったり、泣いたり、色んな感情が溢れてきた。
そんなこんなで、夜に居酒屋集合の約束をして一時解散する。
俺は梨花の軽トラで実家に送ってもらう道中、誰にも中身を見せなかったタイムカプセルに入った手紙をそっと渡すことにした。
嫌そうではなかったことに、心底ホッとした。




