69/84
小さな創造主
彼女が幼かったころ
ラジオが食卓にあった
誰かが流行りの歌を唄ったり
ニュースを読んだりしていた
凹凸のタイル模様の飾り板
その小さな四角の内側が
声の主の家なのだろうか
どうすれば
こんな小さなところに
住めるのだろう
それはなかなかの難題だった
大人の答えは曖昧で
けれども
「誰も住んでいない」と
否定はしなかった
そのうち
子どもなりの空想が
ふくらんでいった
やがて
ラジオの中には
想像した町並みが
想像した世界が
広がっていった
幼い創造主は
地球に似た星を
ラジオの中に
創り上げていった
それぞれの家には
庭があって
花が咲いていた
森には泉があって
小鳥が鳴いていた
平和な世界そのものだった
本当のことに気づくまで
小さな小さな
平和な世界が
そこにあった




