前へ目次 次へ 55/62 風は時間をのせて 風が山から吹いてきた 新緑が颯々(さっさつ)と心を通過する 海から吹く風を想像してみた 微かに潮の匂いがした 遠くで波の音がした 戦場を吹く風に思いを馳せた 硝煙のニオイがした 崩落の音が響いてきた 天上から吹く風を想った あのニオイと音を吹き流し ふたたび緑の地と青い空を そんな思いを風に託す 風は時間をのせて吹き過ぎる わたしを境目にして 遥か未来から過去の彼方へと わたしは唯(ただ)ここに立ち 生きているな と思いながら 深呼吸する ~~~~~~~~~~~~~~~