前へ目次 次へ 52/62 消失点の手 ぢっと手を見ていたのは 啄木だ 自分の手を眺めてみる ふくよかさがなくなって ちょっと筋張っている手 毎日あれこれ働いてきた手 不意に あの人の手を思い出した 何となく子どもっぽい手だった 私の手がもっと白く きめ細やかだったころに 少し心許(こころもと)なく思えた手だった 子どもっぽい手と白い手は 指先が触れるか触れないか といった短い日々の後 いつの間にか 思い出になった あれから長い年月を経た今 少しは逞しく大人っぽい手に なったのだろうか じっと手を見る 記憶の消失点を 探しながら