前へ目次 次へ 45/62 赤い魚と青い海 赤い小魚の群れが 人工の光の中を泳いでいる 水族館にやって来た人々は 宝石を見るような目で眺める きれいに磨き上げられた水槽 お腹を減らすことのない日々 夢を見続けていれば しあわせでいられた けれども しあわせの向こうが ときどき透けて見えた ここではないのかもしれない そう思ったとき 小さな赤い魚は 広い海のただ中にいた 無限に立ち上る波に 恐れおののいたのは 最初だけ やがて高波に身を委ね 細かい泡を吐きながら 未知の世界へと 潜ってゆく 空に別れを告げて 赤い背びれがキラリと光り 海の青に溶けていった それを見守っていたのは 昇ったばかりの 銀色の太陽だった