前へ目次 次へ 38/62 私からの伝言 中学校からの帰り道 どこかの家の垣根に 初夏の小さな花々が こぼれるように咲いていた 花びらのひとつひとつに 光が宿って輝いていた なぜか幸せな気分になって この光景を覚えておこうと思った そして冬の最中(さなか)の今 十分大人になった私は その光景を不意に思い出している あの時の幸せな気分もまた 思春期の梅雨っぽい心を ひととき忘れて 微笑んだ少女 そんな自分を思い浮かべて 同じように微笑んでいる 未来が長過ぎて 先が見えなかった あの頃の不安を 今ここで受け止めている 過去の自分と 今の自分が 繫がった瞬間に