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海という宇宙
楽園リゾートの海でさえ
面と向かうと恐怖を感じるものだ
海面の下は未知なる宇宙であり
海神の気配を感じるからなのだろうか
とはいえビーチは燦燦と明るく
寄せる波は繊細なレースのようだ
浅瀬に一歩足を踏み入れると
太陽に温められた海水が身体にまとわりつき
ほどよい浮力が心地よい
光が戯れる砂地の明るみを経て
クマノミが遊ぶサンゴ礁を抜け
さらに深い青の方へと誘われる
海の断崖は青の階調で
深くなるほど黒に近づく
その薄闇から唐突に現れるのは
巨大なナポレオンフィッシュ
窪みの暗がりには
いぶし銀のサメが並んでいたりもする
こちらが観客なのか
あちらが観客なのか
底知れないドロップオフの中空の
アンダーウォーター劇場
息継ぎで海面に浮上するまでの
束の間の観劇は
恐怖を畏怖へと変容させてゆく




