伯爵は、決行する日を決める
帝都に着いて、帝都を馬車でゆるりと走り抜け、王城へ。
王城へ着くと、正面ではなく、東門へと移動する。
東門は、主に物資運搬用に使われる城門を、ランページの家紋のついた馬車は堂々と入場していく予定だった。
「マリニャン、大変だったねー」
にもかかわらず、門番さんに引き止められちゃって。
ちょっと優秀な門番なのかもなんて思って我がランページに勧誘してみようかなんて欲を出しちゃったら、融通と世間を知らない門番としてなのか人としてなのか悩みどころな大丈夫さ加減の門番さんとぶち当たってしまってたみたいで、時間がかかってしまったことによる労いの言葉をマオからもらう。
そんなマオは、私をその場に置いて――といったら語弊はあるけども、私が話し合いをしている間、大騒ぎにならないよう動き回ってくれていたんだけども、少しは手伝ってくれてもよかったんじゃないかなぁ、なんて、思ったりもしている。
「まお~、搬入終わったよぅ」
「みさおー、ありがとうー」
ドッペルゲンガーを王城に連れ込むことに成功し、後は特殊部隊配属だった二人――パティとシャナンにお任せする。念のため、マオとミサオにはドッペルゲンガーを隔離している馬車を警備してもらい、私は一人城内へ。
前回フィンと歩いた正門からではなく、今回は東門からなので、別ルートを歩いていく。
各門から続くルートにはそれぞれ別の部屋が繋がっていて、東門の場合は王城勤めの兵士や騎士の詰め所を経由する形となる。内部で書類仕事をしている騎士達を見ながら歩いていくと、じろじろと見られたりする視線に気づく。
そりゃそうよね。略式とはいえ、王家に会うためのドレスを着てるし。詰め所をこんなドレス着て歩く女性なんて滅多にないんじゃないかしら。でも、見学とかはあると思うし、なんだったら意中の騎士に会いにどこぞの令嬢が来た、なんて思ってくれてばいいのだけども。
……行き遅れの令嬢だと思われてたら、ちょっと凹むけども。
詰め所を抜けるとき、帝国第一騎士団の団長さんと会った。
ここを通るまでの視線と同じく、驚きの視線を向けられたけど、それは私が珍しくドレスを着ているからとかなのかと聞いてみたら、慌てて綺麗な礼と共に、途中までエスコートしてくれることになり、軽く会話をしながら王女の元へと向かう。
「私の身分ではここまでとなります。久しぶりにランページ伯爵にお会いできたこと、心嬉しく思います。またランページ伯爵をエスコートする権利をお渡し頂けることを願っております」
「こちらこそ。また騎士様にお会いできること楽しみにしております」
最後に、騎士として最上級の礼――左手を右胸に当て、深く礼をする――をされ、私からもカーテシーで返し、お別れ。
互いに慣れないことをしたものだから、ぶふっと吹き出してしまったのだけど、今度はそうならないように気を付けないとね。
他愛無い会話の中にも、いくつか情報を仕入れることができた。
どちらかというと、第一騎士団長からの警戒するように、というお達しでもある。第一騎士団長、エルト君派閥の人だからね。
カシムール殿下とフィンは会議中で、一緒に出ていること。
エスフィ王女は、数日前から部屋に籠りきりで姿を現さないこと。そのため、勇者は席を外してどこかへ行っていること。
エルト君が王女様の部屋に今いること。
フィンが王女様のところにいないことを除けば、ちょうどいいタイミングなのかもしれない。
エルト君には王女様の事とは別に、養子縁組の書類を今すぐにでも処理してもらう必要もある。
フィンには……エルト君から話をしてもらうことにしよう。
そう思うと、少し胸がずきりと痛んだ気もした。
フィンに謝らなきゃという思いが起こした痛みだろう。次に会うときにはしっかり謝ることを決め、ノックの後、扉を開ける。
「失礼します、エスフィ王女」
王女様の部屋に入って、ソファでじっとしている王女様に声をかける。その目は、以前とは違い、諦めの宿った目ではなく、はっきりと意思を通そうとする力強い目に見えた。
「来たわねマリニャン。私は、どう動けばいい?」
王女様もやる気である。
そりゃそうよね。添い遂げたい相手と添い遂げられるのだから。
――きっと、私とは違って。
「やあ、マリ姉。エスフィ姉さんから簡単に話は聞いたよ」
「エルト君……ここにいるってことは、協力してもらえると考えていいのかしら?」
「協力もなにも。もう連れてきちゃってるんでしょ? だったらもうやるしかないじゃないか。それに、姉さんが不幸になる様を見るくらいならそうしてくれたほうがいい」
エルト君は協力してくれるようだ。助かったと思い、お礼を言おうと言葉を紡ごうとすると、手を前に出されて待ったがかかる。
「フィン兄さんが佳境に入っていることもあって、その手伝いをしているんだ。その合間合間になるから、そこまで手伝えるというわけでもないから期待しないで。それに、王家に連なる身としては、流石に姉さんだけの問題じゃないってことも理解しているし、だからこそ王家として許してはならない事案だとも思ってる」
「そうよね……だけど――」
「――だけど、知らんぷりするくらいはいくらでもできるから、そのお礼は姉さんが無事キュア王子の元に辿り着いた後に欲しいかな。お礼についてはそうだなぁ……。僕の愛しのラケシアとマリ姉で前に教えてくれた場所を一緒に回ってもらう、かな」
「エルト君……」
知らないふりをしてくれるというだけでもありがたい。
エルト君が味方になってくれるのは本当に心強いと思う。敵に回ったら、そりゃもう怖いんだけどね。
何より怖いのは。ラケシアちゃんと私が帝都回ったとしたら、私のつたない帝都知識でラケシアちゃんをしっかり案内できるか、なんだけども。
「で、僕は何かすることはあるかい?」
「ああ、うん。それはね――」
――エルト君に概要を話すと、ほんの少し諮詢をした後に、
「なるほど。つまり姉さんは、マリ姉の妹になって、エフィになるってことか。継承権はないから、エフィ・ランペルジ、ねぇ。なんかいい名前じゃないか」
「そう。で、書類がこれ」
「頂くよ」
エルト君に養子縁組の書類を渡す。箱から取り出してしゅるりと書類を広げ見て、何度か頷くと、
「わかった。今すぐにでも。……ああ、念のために、数年前に縁組していたって改ざんもしておいた方がいいね」
「そんなことできるの?」
「そこはほら、知り合いに頼んでささっと」
「……職権乱用ね?」
「失礼な。バレなきゃいいんだよ?」
その発言を王家に連なる身の人が言うと、洒落にならないわね。
「決行はいつにするのかな?」
「カシムール殿下にドッペルゲンガーを見せることができたら、すぐに決行したいわね。すぐに入れ替えたいわ」
「そこは僕も手伝うよ。そうだなぁ……会議が終わったらすぐにカシム兄とドッペルゲンガーを面通しさせるね」
「助かるわ」
エルト君が仲間に加わったことで、話しはよりスムーズに進んでいく。
「エスフィ王女。よろしいですね?」
「あんな勇者とくっつくくらいなら、死を選ぶわ」
「……その結果が選ばれないよう、成功させましょうね」
「明日から私はエフィ・ランペルジ。よろしくね、マリニャンお姉さま。さ、私を呼んでみて」
「え、エフィ……。……言いづらいし聞きなれないです」
「私は意外といけるわよ」
決行は、明日。
間髪入れずに、ドッペルゲンガーを王女様に変化させ、部屋に監禁して。その間に王女様はレンジスタ王国へと向かう。
時間は残り少ないけど、それでももうここまで来たのだから、やるしかない。
門番さんとのいざこざについては、本編に書こうと思いましたがやめておきました。
長引きそうだったので^^;
なお、本作品の本編とも言える
■シトさまのいうことにゃ ~今日もキツネさんはのんびりまったり勇者育ててます~
https://kakuyomu.jp/works/1177354055038372664
※カクヨム様に飛びます
で、素晴らしい偉業をなしとげ(?)た人が出てくるお話になります。
※なのでこちらに書かなかった、のもあるんですけども……。
よかったら上記作品もよろしくお願いいたします!




