プロローグ
「はぁー!もう、なんで俺が先生の代わりに、荷物取りに行かなきゃいけねえんだよ!マジふざけんなよあのクソ教師!死ね!」
俺が通う高校には空き教室が何個かあり、俺は今日が日直のため、そのうちのひとつの空き教室に荷物を取りに行かされている。
「ったく、自分の荷物くらい自分で持ってけっての。」
そう言い荷物が置いてある空き教室の扉をガラガラッと開ける。
扉の重さから長年使われていない教室だと分かる。教室は薄暗く、ホコリがまっていた。
「うわぁ、なんか気味悪。はよ荷物持って出よ。」
そう言い荷物を手に取ると
「……絵?なんでこんな所に絵が…。」
荷物の近くにあった一枚の絵に目を見開いてしまった。
俺の目に映る絵は、茶色い髪の色をした長髪の女と、少し赤みがかかった黒色の髪の毛の男がお互いに顔を見合って涙を流している絵だった。
「なんだ、これ…、夫婦か…?」
一見、暗いように見える絵だが、色使いで明るく見えるようになっている。
「すげぇ…。」
この絵からは夫婦がなぜ泣いているのかを想像させるよう、作者の意図が組み込まれているように見えた。
子供がいなくなり泣いているのか、はたまた、夫婦内で喧嘩でもしたのか。
そんなことを連想させる絵で見ていて面白かった。
その絵を夢中で見ていると
「それ、僕が描いたんだ。」後ろから聞こえた声にビクッとなってしまう。
後ろを振り向くとそこには筆をサッサッと動かし、絵を描いている少年が座っていた。
「その絵、気に入ってくれたんだね。」とその少年は嬉しそうに微笑んでいた。
俺は出会ってしまった。
夕焼けの斜陽がさす教室で、一人の少年と。