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恋する魔女は星の精霊と暮らしながら悪魔を待つ  作者: 山本いちじく
悪魔ディエゴ
4/12

4

 翌朝、ディエゴが去ろうとすると、しょうこが彼の服の裾を掴んで、呼び止めた。


「ディエゴ、あなた、何処へ行くつもり?」


「言っただろう。俺には、仕事がある。今から、この先の町の堕落した人間に恐怖と絶望を与えてくる」


 しょうこは、微笑みながらディエゴの腕を掴む。


「あなたに花冠を作らせることにします。そうすれば、昨日の乱暴を許してあげましょう」


 ディエゴは、彼の話を一切無視するしょうこに驚いた。


「何だと?誰がお前のために花冠など作るのだ?そもそも、花冠など作り方も知らないぞ」


 しょうこは、ディエゴの反抗をさらに無視し、リオに向かって指示を出した。


「リオ、ディエゴに香りがいい花で花冠を作る方法を教えてあげて。そうね、60%の出来栄えなら許してあげます。私は、とても寛大なのよ」


 ディエゴは、不満を述べながら、しょうこを見つめ返す。

 リオは、嫉妬からディエゴをからかった。


「おい、深爪。悪魔のくせに、無知だな。立派なのは角だけか。花冠一つ作れないなんて、情けない」


 ディエゴは、リオの嘲笑に激怒し、彼の首を掴んだ。しょうこは、慌ててディエゴを制止した。


「ディエゴ、止めて!いけない!いけないわ!あぁっ!漏れてしまう!」


 太陽より明るい閃光と爆発と共にディエゴの両腕は、焼失してしまった。リオの破壊力を目の当たりにしたディエゴは、絶句した。


「申し訳ありません。しょうこ様。わずかに力を漏らしてしまいました」


「リオ、あなた、また星を壊す気なの?何のためにここで修行しているのですか。わずかでも我慢できずに漏らすなど、恥ずかしいことです」


 ディエゴは、自分の腕を一瞬にして焼き尽くしたリオの力の強大さに驚いたが、平静を保つふりをして、腕を再生しながら、やっとのことで一言言った。


「俺でなければ、、、死んでいたぞ」


「生きていて良かった、ディエゴ。リオ、ディエゴに謝って」


 しょうこは、ディエゴの黒い角を優しく撫でた。しょうこの温かい手から優しさが流れ込んできて、邪気が削がれていく。ディエゴの気持ちが穏やかに温まると、黒い角は一際艶やかな甘い匂いを放った。ディエゴは、落ち着きを取り戻して、リオを見た。


「リオ、せいぜい昨日のローストチキンに感謝するんだな。あの美味さに免じて許してやる。そして、俺に花冠とやらの作り方を教えるがいい」


 ディエゴは、リオから花冠の作り方を教わった。その後、しょうこの厳しい指導の下、ディエゴは何度も花冠を作り直した。


 ディエゴが作った最後の花冠に対し、しょうこは、評価を下した。


「これなら69点ね」


「よし。これで合格だろう。戯言に付き合うのも、もうお終いだ」


 しかし、しょうこは、にっこり笑いながら、ゆっくりと首を横に振った。


「1000点満点中69点。不合格です」


 そして、しょうこは、ディエゴの花冠を呆然とする彼の手から丁寧に没収した。


「仕事が終わったら、また来てくださいね」


「いいだろう。だが、俺の仕事に終わりなどない」


 しょうこは、ディエゴが振り向きもせずに飛び去っていく後ろ姿を、遠く遠く見えなくなるまで、ずっと見つめていた。

 リオがしょうこを気遣って、そっと尋ねる。


「本当に、これでいいんですか?もう来ないかもしれませんよ」


 しょうこは、微笑みながらリオに答えた。


「彼は、また戻ってくるでしょう。それまで待つことにします」


リオは、しょうこの言葉を聞き、すこし呆れながら言った。


「…分かりました。でも、僕は、待ちませんよ。たかだか悪魔によって、しょうこ様が穢されるとは、思いませんが」


しょうこは、リオがそばにいなければ、泣き濡れて、凛としていられなかったかもしれないと思った。


「ありがとう、リオ。あなたがいてくれて、心強いわ」

お読みいただき、ありがとうございます。

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明日、続編を更新いたします。

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