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未来のお嫁さん5

もうやめてほしい。

頭から湯気が出ているだろうし、サラサラになっていたはずの手は汗にまみれ、

足の裏も体のいたるところから、嫌な汗が出ててる上に体温が上がって仕方ない。


恥ずかしい。

なんて恥ずかしいのだろう。カトリーヌ達の友人ということは、幼い頃の自分の不甲斐なさを

面白おかしく伝えているとは思っていたが、ずっと情報が筒抜けだったとは。

もっと良い事を伝えて欲しい。


カトリーヌとレインに完膚なきまで叩きおられた後からの自分は頑張ったと思う。

勉学も分からない所は分かるまで勉強したし、自習も予習も時間があるときはやるようにしていた。

貴族用の学園に通っていた時にも、立場的なものだったが学生代表を務めていたし、

成績も上位をキープしながら、王太子として国の行事にも関わるように頑張った。

体調を崩さないように、スタイルや身だしなみも整えるために、食事の好き嫌いも減らしたし。

嫌いな物はまだ嫌いだが…それはそのうちどうにかしようと思っているし。


何もそんなことばかりをと、いたるところに八つ当たりして歩きたい気分だが、

聞いた事を本当なのか?と聞いてくるリンティナが可愛くて、楽しそうならもういいか。なんて思っている自分もいる。

恋とは恐ろしい。脳内がお花畑で春爛漫になっているのが心地良いような、両親のようになってしまいそうで不安な気持ち。


今日が初めてなのに、このまま坩堝にはまってしまいそうな、愚かな自分に戻ってしまいそうな、恋が怖い。




◇◇



また明日。そういってリンティナと別れたあと、クーンはカトリーヌの元へ急ぐ。

話を聞いていると、リンティナも巻き込まれた側のようだった。となると子世代で一番詳しいのは

立場的にも性格的にもカトリーヌ以外にはいない。


「やぁ、カトリーヌ様は部屋にいるかな。少し話があるんだ。」

「畏まりました、少々お待ちください。」


扉前に控えている大国の護衛と侍女に声をかけてしばらく、続きの間へと通される。

自国にいるはずなのに、自分の立場が無くなったような錯覚を受けていることに自分自身で呆れている間に、

常に仲良しのカップルが目の前へと腰掛けた。


「どう?ティナは可愛いでしょう。貴方の好みだと思ったのよ。」

「可愛いかった。悔しいけど、めっちゃ可愛いかったよ。」

「そうでしょうとも。明日の『はじめまして』が楽しみだわ。」


コロコロともう数年後には即位が決まっている未来の女王陛下が楽しそうに笑う。

明日、会った時に嬉しくてソワソワしている自分を見られると思うと、少しやるせないが今更だと我慢する。

クーンはこの姉のような親友には勝てないし、勝ちたいとも思っていない。

ダメな弟で遊ぼうとしてくる姉兄に、はいはいと従っているこの気兼ねない関係が好きだということは絶対に隠し通すつもりだが。


「クーン何か聞きたいことがあったのかな?急ぎのようだけれど。」

「そうね、だいたい予想はしていてよ。」

「別に急ぎってことではないけど。リンティナ嬢はこの結婚に納得しているのか。話を聞いたけど…幼い頃に決められてるようだし、

本当は嫌とか、好きな人がいるのを無理してるかもだし…」

「呆れた…。ここまで来て何を言うのよ。ティナが嫌そうに見えて?彼女は彼女で今日を楽しみにしていたのよ。コレだから鈍い男は。」

「男ならこれから俺が幸せにしてみせる!位の気概はないのかい。」

「言えるか!」

「じゃぁ、何が気になっているのさ。今のうちに吐いた方がいいよ、君は溜め込むとすぐに泣くからね。」

「泣いてない!……その、彼女は俺のために育てられた、みたいな気がしたから…そうなら、彼女の人生や楽しみを奪ってしまって

いる気がするじゃないか…。申し訳ないじゃないか…」

「政略というのが気になっているの?そんなの、普通のことでしょう。ティナだけがつらいわけではないし、ティナよりももっと痛ましい状況の子供は沢山いるわよ。」


国のために権力者と縁を持ち、子供を作り、国や家族のために働く。

争いが減っている昨今ですら、高位貴族は国内や国外と政略結婚を強いられるし、義務とされている。

大国に庇護され、平穏な国といっても所詮小さな国。

同盟に属していない国や、同盟内での裏切りで滅びてしまうような小さな国。

クーンが治めるフィン国の周りにも同じような小国が隣り合っている。小さい物は踏みつぶされないように努める義務があるのだ。


「そうだけど、その。俺の親の不始末を、俺ではなくて関係ない人が背負うっていうのは、どうなのかなと…。」

「無関係ではないわ。彼女はもともとはこの国の貴族。それも宰相なんて立場の一人娘なの。

 政略で人生が左右されるのは、当然のことだと思うわ。あのままこの国にいても、強制的に貴方の婚約者となって、一応王妃教育はされていたと思うわよ。」


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