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未来のお嫁さん4

リンティナが母に連れられて、その古い院を訪れたのは何十年も前のことだ。

人の目から隠れるように屋敷を出たあと、ひっそりと限られた護衛と侍女と母と出かけた冒険は

同時のリンティナにはよくわからなかったが、とても面白かった記憶がある。


屋敷で着ていたレースやリボンで飾られたや黄色や桃色のドレスではなく、

装飾品は髪をまとめるリボンのみの、茶色や薄灰色のワンピースといった簡素な服装。


屋敷で食べていた銀食器を使った、何品も出てくる晩餐ではなく、

パンにお肉や野菜を挟んだ簡素な食事。


たまに夜空を見ながら皆で横になったり、湖の水で髪を洗ったり

前に読んだ冒険記の主人公のような生活に、泣いたり笑ったり驚いたり怒ったり忙しかった。


王都や近辺地域では豊穣の神や、商業の神を崇めているのに、

ここは昔からの地域に根付いた清らかな水を、清純の証でもある水の女神を崇めている珍しい女子修道院だった。

神をより身近に感じ、心穏やかに生涯を過ごすには素敵な場所だと修道女達は言った。


花が開くように、春の日差しのように、爽やかな風のように皆笑っていた。

鈴のような綺麗な笑い声が院の周りにはあふれていた。


煤けて何度も繕い洗い着古した服と、手入れが難しい為切ってしまう短い髪。

沢山の日差しや水に苛まれた指や足。

そこに住まう修道女は皆同じような生活をしながら心穏やかに過ごす。

過去に何があっても、どのような事をしていても、ここに住まうものは皆、心穏やかに神に尽くすのみなのだ。


世捨て人として名を変えたリィリィ改め、修道女リリと母達と修道女と隠れ里の修道院で

長いような短いような期間過ごしていると、母のもう一人の友人がリンティナ達を迎えに来た。


院まで護衛してくれた後、院に入ることが出来ないため、森で生活し森を巡回してくれていた

リンティナとも顔も知りの護衛達を連れ、母のもう一人の友人である大国の太陽と呼ばれる王妃・ローザンヌ様。

母とリリ様と固く抱き合い、難しい顔で話合っていると思っていたら、あれよあれよと大国移動しており、年頃になった頃には、自分の氏が大国のものとなり、大国のお姫様の友人となっていた。


大国の離宮に隠れ住んでいた修道女リリに、淑女教育とあわせてもっと高度な教育もみてもらう。

大国の貴族の娘として、時期女王陛下と王配殿下の友人として。だけではなく

いつ、王妃・王太子妃になっても問題がないように。

時期女王である友人とともに、大国一の勉学者やマナー講師に教えてを請い、リリからも実践的なノウハウを教えてもらう日々が何年も続いた。


自分がこんなに過酷で濃密な時間を過ごしている理由は聞いている。

ある程度は納得している。母やリリの母国である、かの国の未来の王様が出来の悪い王様となった場合、王妃として国を支えるために。

何とも曖昧な計画だと思うし、国のためにリンティナの気持ちを考えてくれていないと思う。

リンティナの将来は、見ず知らずの他人次第。


リンティナがどんな素晴らしくとも、その他人が人望があり才覚もある王となり、相応しい妃をめとった場合はリンティナのこの数年は無駄となり、実力を発揮できずに貴族の娘として、この国の貴族や他国へと嫁ぐだろう。

王様がダメダメな場合は、リンティナが王妃として支える。

貴族として政略結婚も理解しているか、好きな人じゃなきゃ嫌だなんてこと言うわけないし、思う事もない。

知らなかった人が今日から家族。なんてこと日常茶飯事だと言ってもいい。


だけど、理解していてもリンティナはまだ大人と子供の間。

未来に夢も希望も不安も迷いも沢山感じているまだ子供なのだ。



勉強は好き。知らないことを知るのは好き。楽しくて面白くてやる気があふれてくる。

しかし、その先の未来が今のままでは、向上心を持ち続けるのは不可能だ。

だから、リンティナは母や女王陛下に訴えた。大人達に訴えた。大人達の作戦に強力する変わりに、

自分での気持ちの整理をつけるための情報が欲しいと。

自分の未来を考えるためのダメな夫とやらについて、教えて欲しいと。

どんな顔で、どんな性格で、何が嫌いで、何がダメなのか。


友人はすでにダメ男の他人と知り合っていたから、子供目線からの出来事を沢山教えてくれた。

小さな頃はいかにもなダメで馬鹿な王子様で、我がままで傲慢でやる気が無くて、負けず嫌いなのに努力が嫌いだったのに、来る日も来る日も負け続けたかいあってか、とても努力家で優しくて、丸い性格になった。

周りに強気な女性ばかりの影響か、もともとの性格の問題なにか、それとも国でのあの事件が原因か、たぶん全てのせいで自分に少し自信がないヘタレで、女性に強くは言えない残念な王子様になってしまったらしい。

その後も色んな人が色んな立場からの事を、絵や報告書や、雑談でリンティナに教えてくれた。


渾身の出来のはずの暗号ゲームを、友人がすぐに解いてしまった事を悔しいと叫びながら雑学を学んでいるらしい。

歴史のクイズで勝てなかったから、歴史を一から学び直したらしい。

絵画を思うように描けなかったから、別の大陸の絵師に弟子入りしようとして止められたらしい。

慰問にいった孤児院の女児にかっこいいと言われて喜んでいたら、次の日にはやきもちをやいた男児に泥団子で勝負していたらしい。

頼りないと言われたから、こっそり筋力トレーニングしていたのに、筋肉痛で周りに知られてしまったらしい。

相手のご令嬢の顔を見ることができず、目線を下げていたら胸を見ていると怒られたらしい。

次のお見合いでは、なるべく顔を見つづけていたら、睨まれるていると泣かれてしまったらしい。

正面にいるのが良くないと、少し後ろに下がって庭を散策していたら、エスコートをしらないのかと呆れられたらしい。

悉く失敗しては、何が良くないんだと凹んで、友人カップルに泣きながら愚痴をこぼしているらしい。


なんと情けない男性だろう。

でも真面目で、素直で、とても可愛らしい人ように思える。

自分よりは年下だけど、男性に可愛いなんて、おかしいかもしれないがリンティナはそう感じてしまう。

気持ちを落ち着かせるために嫌な事を把握しておきたかったのに、普通の人。


ダメな人じゃないけど、残念な人。

これが愛なのか恋なのかわからないけど、会ってみたいと思っていたら、その日がきた。

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