#5 約束と襲来
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リラと別れてから、それぞれの「帰る場所」へと足を進める(勿論、この別れ際にも一悶着あった。リラが私をすっと帰らせてくれるわけないし。言ってて頭が痛くなってくるけど)。
そうこうしている内に結構な時間になってしまったし、帰ったらすぐに夕飯の支度しなきゃ。
ああでも、場合によっては明日も帰るのは遅くなるかもしれないよね。だったら、明日の分の作り置きもしておかないと。
そんなわけで、手早く作れる(そして、私が失敗せずに作れる)献立を考えながら歩みを進める。
さっきまでずっと誰かといたから、一人で歩く道がやけに静かに感じる。
一人きりでの帰宅なんて珍しくもないし、感傷的になることでもないのにね。
紅から黒に変わった世界の色と、冷たい春の風に舞う花弁が、そう思わせるのかもしれない。もうみんな自分の寮に帰ってしまったのか、道にはもう私の他には誰もいないし。
──今日は、クロといっぱい遊ぼうかな。
憚る相手もいないけれど、なんとなく心の中だけで呟く。
我ながら恐ろしい考えだ。今日どうして図書館に行ったのか、忘れてしまったのだろうか、なんて。
でもきっと、無性に感じてしまう、胸に穴が空いたような寂しさを紛らわすには良い方法だろう。
一緒に夕飯を食べて、一緒に遊んで。
一緒に笑って、一緒に楽しみたい。
一緒にお風呂とか一緒に寝るとかは、何されるか分かんないから断るけどね。
冷たい風をくぐり抜けて、とうとう自分の寮まで辿り着く。
今朝振りなのに、やけに懐かしいや。
「おかえりー、テル。遅かったねー」
寮の門の横で、クロが出迎えてくれた。普段は外に出ること自体が少ないのに、珍しい。
「ただいま」
「遅かったからー、ちょっと心配したよー。寒くないー? 大丈夫ー? コートあるけど着る?」
「ありがと。嬉しいけど、ここからはもう室内だし大丈夫かな」
ありがたいし嬉しい。それは事実なんだけど、正直に言ってなんだか中途半端な気遣いだった。
クロなりに心配してくれたのは本当だろうから、絶対に口には出さないけどね。
「えー、このコートを脱いだらあたしが裸になるのにー?」
「コート貰わなくて良かった」
気遣いじゃないじゃん、ただの変態じゃん。
自分が着てるコートを渡すのかよとか、コートの下は裸なのかよとか、絶対にクロの方が寒いだろとか、裸見せたいだけじゃんとか、外で裸になるなとか、突っ込みどころが多過ぎる。
その小ネタの為に、わざわざ外で待ってたの?
──と、私たちが部屋に向かったタイミングで、ひゅん、と風を切る微かな音が耳朶を打った。
何の音かと考えるより先に、門扉に刺さった矢が視界に入る。先端はただの吸盤だから、正確には刺さっているわけじゃないけれど。
矢に手紙を括り付けて飛ばした、いわゆる矢文というやつだ。
「お姉ちゃんへ」と書いてあるのが見えるから、差出人はフェアリラ・イドだと一目で分かる。
早速開けて読んでみると(マナーは悪いが、部屋に歩きながらだ。寒いし)、『セリュアの件は、明日の夕方、噴水広場で』とのことだった。
リラが実際に送ってきた文章はこんな淡白ではなかったし、本当はもっと色々と記されていたのだけれど、ここでは必要ないので省略する。
さっきのは、要点だけを端的に纏めたものだ。
言っておくが、他の部分は本当に必要のないものだった。
これだけの連絡のために、原稿用紙で十枚分くらいの文章が必要な訳がない。
このタイミングで送ったのは、クロと二人きりの状況を邪魔したかったからだと思うけど……いや、こんな長い文章を書く時間がどこにあったんだろう。
ただ、それでも「何か理由があるのかも」とか思ってちゃんと目を通す辺り、私も律儀だよね。
結果的に時間を無駄にしただけな感は否めないけど。
読み終わる頃には部屋に着いていたどころか、手を洗って制服を着替えて、食材を冷蔵庫から出していた。クロも「寒かった」とか言ってモコモコの服を着ていた(自業自得だ)。
ちなみに例のお相手、セリュア・ターナイトという子はリラのルームメイトだったらしい。
だから待ち合わせの計画がさっと決められたのか。
でも、そういうことは早く言っておいてほしかったなあ。必要ないと思ったのかもしれないけど。
今後も長らく付き合っていくことになるルームメイトからの頼みを早速断るのが、人間関係的に難しいってことくらいは私にも分かるよ。
まともな人間関係を築けていない私でも、そのくらいは分かるのだよ。ちゃんと。
でも、リラと同室ってことは女の子なんだね。
……いや、別に何も期待してなんかなかったよ?
ターナイトちゃんじゃなくて、もしもターナイト君だったら、私に会いたいってつまり……とか、そんな夢見がちな乙女みたいなことは、全然全くこれっぽっちも考えてなかったから。
……まあそもそも、よく考えたら、あのリラが私に男を紹介するわけないし。
*
「……うーん」
あれからまた一夜が明けて、翌日。
特別なことは何も起きないまま日常が過ぎて、あっという間に放課後が訪れた。
リラと、まだ見ぬターナイトさんとの約束の時間までは、もう少し時間が残っている。
私が噴水広場に到着してから、およそ十分が経ったけれど、二人はまだ現れそうにない。
もっとも、二人が遅いのではなく、私が早過ぎたのだ。
待ち合わせの時刻よりも前に着いておくのは礼儀だけれど、かと言って早過ぎるのも困りもの。
ましてや、今日の私は「呼ばれた側」なのに。
「呼ばれた側」が集合場所に先に到着していると、大抵の場合は「呼んだ側」が、申し訳無さから少し肩身の狭い想いをする。ターナイトさんがどう感じるかは分かんないけど。
それは私としても本意じゃないんだけど……でも仕方ないじゃん?
他に用事も無かったし、講義が終わってから直接ここに向かったら、想定外に早く着いちゃったんだもの。
──だけど、それは、私が今こうして困っている理由じゃない。憂鬱に溜息を溢した理由じゃない。
いや、それもあるにはあるんだけどね。
周囲を見渡すように、視線を全方位にぐるっと一周させてみる。
その様子は、傍目には待ち合わせの相手を待っているようにしか見えない、と思う。たぶん。
あながち間違いでもないけどね、それも。
取り敢えず、不自然には見えてないはずだ。怪しまれないくらいに自然に見えていたら良い。
──少なくとも五人、多くて十人。
自分を隠れて狙っている相手の数なんて、正確に数えられるわけもないけれど(まず、その判断が何より難しいし)、まあそんなところだと思う。
──なんでこんなことになってるのかねえ。
心の中でひとりごちてみるも、当然ながら誰からも返事は無い。あった方が怖い。
実際問題として、こうして狙われる理由に心当たりが全く無いというわけでもないのだ。
昨晩の尾行の一件で(あれはリラが犯人だったけど)姉様が言っていたように「知らない相手から狙われていると面倒なことになる」。まあそれは当たり前なんだけど、だけど狙われてもおかしくはない立場だからこその意見でもあった。
狙われる理由が無きゃ、警戒もしないもん。
だから「なんでこんなことに」への答えは、思い付かなくもないのだ。それが合っているかはさておくとして、不条理というほどではない。
──だけど、マズったかもなあ。
手元に武器の一つでもあれば応戦もできるだろうけど、今は剣なんて持って無いし……って、昨日も同じようなこと言ってたっけ。
なんだろ、今後は持ち歩いた方が良いのかな。
でも魔法剣を携行する女子なんて、どうしたところで、悪い意味で人目を引きすぎる。
──デュエッティング・オルターにおいて、二人組の男女で、剣と銃をそれぞれどちらが用いるかについての指定は、ルール上はない。
『二つ──一方は剣を、他方は銃を用いること』。
男が銃を使い女が剣を使うのも、或いは男が剣を使い女が銃を使うのも、ルールに照らせば何の問題も起こらないはずなのだ。
だが、規則とは異なる「慣例」が、見えない壁として高く存在している。
「男が剣を、女が銃を、それぞれ扱う」。
その起源には諸説あるけれど、元々は一定の合理性があって生まれた慣例だという。
体格や基礎体力だったり体内の魔力構造だったりの関係で、男女間で武器の扱いやすさが異なるのだから、聞いてみれば納得できる類の理由だった。
その名残で、現在でも「男が剣、女が銃」の二人組を組む人が多い。幼少期から剣だけを振り続けてきたので銃は使えない、という男子や、その逆も多いのだとか。
あまりにも自然に馴染んだその「慣例」に、もはや大衆は疑問符すら浮かべない。
「それはそういうものだから」という、ある種の思考放棄とも取れる考えが人々の胸中を占めているのだ。
──だが、それはある種の鎖となった。
男は剣士に、女は銃士に向いている──これが暴論のように聞こえる方もいるだろうが、しかし現実として大半の人間には当てはまる真理だった。
だからこそ、これまで人々の中に深く根付くことができたのだとも言えるし。
そう──大半の人間には。
いわゆる「個人差があります」だ。
剣を使えない男、銃を使えない女。
全体的に見れば、確かにごくごく少数派だ。だがしかし、確かに存在している。
私のように。
この「慣例」は、そんな連中を制限する斬れない鎖になってしまったのだ。
例えば、昨年の冬季大会。魔法銃の使えない私は代わりに剣を携えて出場し、そして優勝した。
当然、大会の優勝者は、観衆から送られる万雷の拍手によって称賛される。
──そのときに聴いた拍手の乾いた響きが、今でも頭から離れてくれない。
勝者を称える心は、あの場にいた誰の胸にもあったのだと思う。妬み嫉む気持ちも少しはあったかもしれないが、私に敗北した面々さえも、戦士としての誇りを持って勝者を言祝いでくれていたのだと。
だけど、惜しみない拍手を私に向けてくれていたみんなが、称賛と同じくらい、胸の奥深くで感じていたのだ。
──剣を振るう私に対しての、名状しがたい違和感を。
それは決して、敵意や害意なんかではなかった。
そんなネガティブなものでも強いものでもなく、ささやかで些細な違和感。
不自然なものを見たような気分。
目の前の光景を、受け入れがたい気持ち。
──それを、多くの人間が共有していた。
恐らく、彼らに自覚はない。
けれどその事実こそが、慣例という形で張り巡らされた根の深さを感じさせる。
だから私は、魔法剣を持ち歩く勇気は出せず──
──なんて言ってみたところで。
もし仮に手元に剣があったとしても、こんな場所で応戦したら大変なことになっちゃうんだけど。
噴水広場は学院生の中では定番の待ち合わせスポットだから、人通りも多いし。
逆に考えれば、これだけ人目につく場所にいる間は、相手も何も仕掛けてこれないんじゃない?
いや、それはちょっと楽観的すぎるかな?
例えば今この瞬間にでも、彼らが襲い掛かって来る可能性はゼロじゃないわけで……そうなれば、どうしたところで周辺被害は出ちゃうし、無関係の人を巻き込むことにもなっちゃう。
それは良くない。
というか普通に悪い。
それに、彼らがこのまま何も仕掛けて来なかったとしても、ただ見張られ続けてるってだけでも嫌なものは嫌だし、あんまり良い気分じゃないよね。
「……うーん」
今日この場に来てから、この台詞はもう二回目となるのか。
悩ましげに溜息が溢れて、さてどうしたものか、と考える。
結論は、最初から出てたのかもしれないけれど。
──リラとターナイトさんには悪いけど、もうこれは仕方ないかな。
──なるべく早く片付ければ良いか。
結論が出たなら、躊躇わずその通りに動くだけ。
私は大きく息を吸い込んで。
鞄を手に提げたまま、予備動作なしに、全力の七割くらいの速度で走り出した。
物陰から見ていた複数の影が、一瞬だけ驚いたように硬直する。しかし、素早く思考を切り替え、すぐに気を取り直して私を追いかけ始めた。
ただし、彼らの速度は大して速くはない。私の姿を見失わない、ギリギリの速度を保っている。
──読みが当たった。
だけど、あんまり喜ばしくはないよね……むしろ気が滅入りそうなくらいだ。
彼らが本気で追いかければ、周囲のエキストラ諸君から奇異の目を向けられるだろう。一人の少女を走って付け狙う集団なんて、目を引かないはずがない。
そうなれば通報されるなりなんなりして、彼らの仕事は果たせなくなってしまう可能性が高い。
彼らはそのことをしっかりと理解した上で、そうならないために気を配っているわけだ。
そのことが、私に一つの確信を抱かせる。ささやかな予感が強い確信へと変わった。
──彼らは尾行や追跡のプロフェッショナルだ。恐らくは誰かに雇われた。
……にしても、嫌なプロだ。
もしも自分にその道の才能があったとしても、あんまり目指したいプロフェッショナルじゃない。
取り敢えずは、とにかくこの場から離れることが最重要だ。
場所を移して、できるだけ人気の無い場所を目指す。無関係の人を巻き込んでしまないように、という意味で。
わざわざ注釈するまでもないことだけど、普通に考えたら、こんな緊迫した鬼ごっこで「人気の無い場所に向かう」なんてのは馬鹿のすることだよ。鬼に良識があるなら尚更ね。
人の多い場所の方が人混みに紛れやすいし、相手が仕掛けてきづらくなるんだから。
こちらも身動きが取れなくなるし、そもそも根本的な解決にはならないって難点はあるけどさ。
だけど、今はそうも言ってられない。
ってほど緊迫してるわけでもないんだけど……。
そしてその逃避行(?)の途中で、武器を調達することも忘れてはいけない。
せっかく場所を移しても、徒手空拳の私にできることなんてほとんど何も無いから。
とは言え、自分の剣を取りに寮まで戻っている余裕なんてあるはずがない。
──となれば。
「──ごめんね」
一言だけ謝罪を口にして、たまたま道を歩いていた、通りすがりの男子学院生から腰に携えていた魔法剣を引ったくる。
良い子は真似しちゃ駄目なやつだ。犯罪だし。
緊急事態だからと言い訳。後でちゃんと謝る。
「は? ──はあ!?」
天下の往来で白昼堂々と行われた窃盗行為で、流れるように自分の愛剣を奪われた彼が、怒りよりも先に驚きの声を上げた(そりゃそうだ)。
だが、なんと彼は一瞬で状況を察してくれたらしい。私を追う複数の影に、瞬時に気付いたっぽい。
ひょっとしたら、彼も相当の手練なのかもねえ。
このままモブとして終わるには惜しいくらいの。案外、面白い子かもよ?
短い茶髪に、茶色の瞳。平均的な身長と体格。ネクタイは一年生のカラー。
特に何の個性もない、人混みがあれば簡単に埋もれて見失ってしまいそうな少年だけど、平凡なのは見た目だけかも。
でもまあ、私が剣を借りた(「奪った」なんて人聞きの悪いことは言っちゃ駄目。「借りた」だよ。ここ重要……犯罪者の物言いだ)理由は分かっても、「なんで女子が剣を」とか「なんで追われてるの」とかの疑問は生まれるよねえ。
見ず知らずの一年男子にちょっと同情。
お前が言うなって?
反論の余地もないね。
ちなみに、他ならぬ彼から剣を「借りた」理由は単純で、彼の武器が私と同じく細剣だったから。
面白い武器だと思うんだけど、使ってる人ってなかなか珍しいんだよねえ。
みんな片手直剣だったり両手大剣だったり、東洋由来の「カタナ」だったりを使いたがるから……まあ彼の剣は、私のに比べると少し太かったんだけど、贅沢は言ってられない。
じゃあ返せよって言われちゃうじゃん。
──なんて思いながら走ってたら、健気にも一年生君も走って追い掛けてきちゃってるんですけど。
いやあ、でも、私から剣を返してもらうにしても事情を聞くにしても、結局そうなるかあ。
あの場所で待つって選択肢は、普通に無いよね。
巻き込んじゃったことはちょっと悪いと思ってるんだけど、こうなったらいっそ、ね。
なんとなく、この子のこと気に入っちゃったし。
だから私は、すぐ後ろを走る彼に問いを投げる。
「──君、名前は?」
「この状況で名前訊いてきますかあ!?」
返事(突っ込み?)は、存外早く返ってきた。
「こうなったら一蓮托生、運命共同体じゃん? そんな相手の名前を知っておくのは普通でしょ」
「勝手に巻き込んでおいて抜け抜けと!?」
リアクションも普通な感じで悪くないね。一年生らしい初々しさを感じるよ。
或いは今のこの感情は、良い玩具を買ってもらったときの気持ちに似ている。
「まあまあ、私も君のこと、なんか気に入っちゃったし、諦めてよ」
「あなたに気に入られるのが、この世界でも指折りの災難だってことは俺にも分かりますよ!?」
全く、失礼な少年だこと。
「──よし、着いた」
取り敢えずは、人気のない場所へ移動完了。
「人気のない場所」って考えて、校舎裏しか思い付かなかったけど。
まあ掃除当番の生徒くらいしか来ないし、誰の視線もないのは事実だから大丈夫。
しかもその割には広くて、アクションシーンにもうってつけ。そんな使われ方を念頭に置かれてはないだろうけど。
と言うか、校舎裏の正しい使い方って何? 要はただのデッドスペースじゃないの?
「何の説明もされないまま、とうとうここまで来てしまったんですが……先輩、一体何で追われてるんですか? 何かやらかしたんですか?」
出会ってすぐの先輩に対して、この信用の無さは何なのだろう。
ともあれ……さあね、私が知りたいよ。相手を捕まえて聞き出すのが一番早いかもね。
いや、はぐらかしてるとかじゃないから。
「それは何となく分かりますが……」
「いやはや、入学早々こんなことに巻き込まれるなんて、君も運がないねえ」
「あなたが言いますか、それを。俺から運を奪ったのは他ならぬあなたでしょうが」
「都合の悪いことが起こったときに責任の所在を他人に求めるのはつまらない人間って、昔の偉い人も言ってたよ。人生の先輩として忠告しておくけど、その態度はいただけないかなあ」
「たかだか一年しか年が変わらないのに、やたらと上からですね。そして、どう考えてもあなたのせいなんだから、あなたに責任の所在を求めますよ」
そんなこと言いながら、私と一緒に戦ってくれるんでしよ? 照れ屋なんだから。
「呆れを通り越して、もう何だかよく分からない気分になってきましたが……いや、俺は戦いませんよ」
なんと。女の子一人に戦わせようっての?
「俺から武器を奪ったのは誰でしたっけ。今の俺は完全に手ぶらですよ」
ちぇっ。可愛くないくらい可愛い後輩だこと。
──なんて漫談を繰り広げている間に、連中も距離を詰めてきていた。
思っていたよりも早い、が、それは人気の無い場所に移って、身を隠したり速度を調節したりする必要が無くなったからだろう。
ここから正面に見えるのは、七人の男。全員が、その手に魔法剣を携えている。
魔法剣とか魔法銃って、実は誘拐とかにすっごく便利なんだよねえ。命を奪う心配もなく、簡単に気絶させられるんだから。
まあ、それはこちらも同じだ。
たとえやり過ぎても、「やり過ぎる」心配はないのだから。
少年に視線を送って、物陰に隠れているように訴える。理解してくれたらしい。内実はともかく、連携は取れてるね。
──私も剣に魔法力を込めて、そっと構えた。
──白の光が瞬き、刹那の内に全てが終結した。
今回も新キャラが一人出てきました……って一人?
あれ、もう一人くらい出すつもりだったんだけど……
しかも少年君、名前出てないし……逆にセリュアは名前しか出てないし……
次回出てくるかなあ。分かんない。
そして次回で第1幕を完結させたいんだけど、今のところどうなるか分かんない。テルミラがふざけ倒さなければ、ちゃんと収まるはずなんだけど……ってことは収まらないんだね。