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異世界冒険記 勇者になんてなりたくなかった  作者: リョウ
第2章 国立キャルメット学院の悲劇
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気づいたリゼッタ


「コータ!!」


 振り上げられた剣が振り下ろされそうになったその時。

 危機迫るような声音が、コータの名を呼んだ。


「マタ人間カ」


 声に反応した男オーガは、剣先がコータの脳天に直撃する寸前で剣を止めた。

 その隙を逃すことなく、コータは体に鞭を打ちその場から動く。


「豪水の鞭"ザ・スネイク"」


 張り詰めた言葉と共に、声を上げたリゼッタの周囲に光が収束する。

 大気、地中、あらゆる場所に存在する水分を吸収し、自身の周りに集結させる。そしてそれらは液化を始め、水を生成する。

 生まれた水は、リゼッタの周囲にとぐろを巻くかのようにうねる。


「グァァァ」


 瞬間、とぐろを巻いた水が咆哮を上げた。水の体を持つその姿は、蛇のごとし。


「いけ!」


 リゼッタは水の蛇に指示を出す。瞬間、水の蛇は地面を這うようにして男オーガへと向かっていく。


「小癪ナ」


 短く吐き捨てるや、男オーガは剣で水の蛇を一刀両断する。

 水の蛇は綺麗に半分に斬られ、周囲に水飛沫が飛び散る。


「ッ!?」


 無惨に濡れた地面に視線を落としたリゼッタは、驚きを隠せなかった。自身の魔力をありったけ込めた一撃。それが、たった一振りで。

 たった一振りで、無へと還ったのだ。


「コノ程度カ」


 男オーガはリゼッタとの距離を詰め、脚を上げる。丸太の如く脚は、リゼッタの腹部を右肩を捉える。

 リゼッタは鈍い音が体内から聞こえたような気がした。ジンジンと痛む右肩は、恐らく脱臼をしている。

 苦悶にまみれた顔で、リゼッタは男オーガを見た。その瞬間、男オーガの中に人の姿が見えた。


「ど、どういう……」


 魔物の中に人がいるなど聞いたことが無い。リゼッタは何度か瞬きをする。だが、何度瞬いても同じ。


「人が……魔物に?」


 驚きが口をついたと同時に、リゼッタの背後から声が上がる。


「お待たせ!」


 力を込めた声を上げたのはマレアだ。両手を掲げ、その先には蠢く魔力が溜まっている。

 収束された魔力の周りを雷が走り、スパークが迸っている。


「怒号の落雷"サンダーブラスト"」


 手のひらを男オーガに向ける。同時に溜められていた魔力が移動し、激しい電気を纏って男に向かう。

 大地を這うようにして進む攻撃。だが、それに対しても男オーガは戸惑う様子はない。

 襲い来る魔法に剣を向け、腰を落とす。


「危ナイ」


 そんな時だ。女性らしさが感じられるオーガが、姿を見せた。そして、そのまま魔法障壁を展開させた。

 怒号の落雷は、女オーガが展開した魔法障壁に衝突する。大気が震える程の衝撃波が広がる。

 数分間の衝突の後、怒号の落雷はきれいさっぱり消え去った。


「う、うそ……」


 全く効果が見られない。それを見たマレアは、呆気にとられたかのように、力の無い言葉を洩らした。


「コレデモ喰ラエ」


 男オーガが剣を振り上げ、マレアに詰める。


「水圧の盾"ウォーターシールド"」


 呆気に取られ、動きが鈍くなったマレアを守るように、リゼッタが盾を展開する。盾に触れた剣は、水圧に圧されるように弾かれる。


「邪魔シナイデ」


 女オーガは短く吐き捨て、魔法を展開していたリゼッタの顔面に蹴りを入れる。

 リゼッタは蹴りの威力に逆らうことが出来ず、体ごと吹っ飛ぶ。それと同時に盾は消え、男オーガの剣はマレアの肩に突き刺さる。


 マレアの肩からは血飛沫が上がり、悲痛の声が上がる。


「はぁ……、はぁ……」


 吹っ飛んだ際に、あちらこちらを打ったリゼッタは肩で息をしながら女オーガを見る。


「この中にも……」


 そして気づく。男オーガの中だけでなく、女オーガの中にも人の姿があることに。


「まさか、本当に魔物化しているって言うの?」


「グルル」


 リゼッタの独り言に呼応するように、男オーガが呻き声を上げる。そして次の瞬間、剣がリゼッタの腹部を貫いた。


「ぐはっ……」


 傷口からと、口内からは夥しい量の血が吹き出した。

 そしてそのまま、意識が刈り取られた。


 * * * *


 その遥か後ろから見ていたモモリッタ。


「どうすれば……」


 頭に鳴り響く謎の声。


 ――思ウガママニ暴レ、蹂躙セヨ


 留まることない破壊衝動。それを抑えるので精一杯のモモリッタは、殺られていく仲間たちの姿を見ていることしかできない。

 なぜこんな衝動に襲われるかは分からない。


 ただ、ここで見ているだけというのは辛すぎる。


 モモリッタは、どうにか脚を動かす。

 どうにか、どうにかこの状況を先生たちに伝えるために――

 森の脱出を試みる。


「私が……、みんナを……」

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